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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第8話 新興都市へ向かう前に

 読んでくださりありがとうございます。そろそろ約束の時間です。


 マシューたち4人は太陽が真上から照りつける昼の時刻にパウロとの約束の場所に向かった。指定された場所は帝都の門であり、帝都の外から帝都に向かえば問題なくたどり着ける場所である。


 やがて帝都の門が見え始めたその時、帝都の門の近くに刺さる道標に人がもたれて立っているのが見えた。服装からしてその人物は恐らくパウロだろう。4人がゆっくりと近づくと門の方を見ていたパウロがこちらへ顔を向けた。どうやら帝都から出てくるのだと思っていたようだ。


「なんだ、てっきりそこから出てくるものかと。……何か用事でもあったのかい?」


「ちょっと試したいことがあってね」


「なるほど。……ふふ、しかし本当に来てくれるとは。実のところを言えば、君たちがここに来ないんじゃないかと思っていたのさ。なにせ結構警戒していたようだったからね」


「まさか。行く気が無いなら初めからそう言うさ。……さあ、新興都市とやらに案内してもらおうか」


「ふふ……頼もしいな。だがその前に、……君たちにこれを渡しておこう」


 そう言うとパウロはマシューたちに何かを差し出したのである。恐る恐るそれを受け取ると、どうやら何かの紙のようなもののようだ。


「……これは?」


「今回君たちを傭兵として雇うための契約書のようなものさ。その紙には傭兵として派遣される場所への地図や報酬なんかが記されている」


「へぇ……」


 なるほど確かにその紙には地図のようなものや金貨4枚という文字が見える。どうやらパウロの言っていることに間違いは無いようだ。


「……まああまり意味の無い紙だが、一応目を通しておいてくれ」


「……あまり意味の無い?」


「あぁ、意味は無い。今回は私が新興都市まで案内する関係で地図は不要。そして報酬金は先払いで今渡すから書いておく意味が無いのさ」


 そう言いながらパウロは再び右手を差し出した。今度渡してきたのは4枚の金貨である。紙に書かれていた金額と同じ枚数であり、要するにこれが報酬金という訳だろう。


「今これを渡して良いのかい?」


「私の上官はこういう書類にうるさくてね。一応受け取っておいてくれ」


「いや、それじゃあない。こっちの話だ」


 そう言ってマシューは不敵に笑みを浮かべた。その笑みが何を意味するのかを理解したパウロもまた不敵に笑みを浮かべたのである。


「……まさか金をもらって逃げてしまおうとでも?」


「……その可能性が無いわけでも無い」


「ふふ……。金が欲しいならそうしてもらっても構わないけどね。……君たちが欲しいのは《希望》の象徴。……違うかい?」


 マシューはその言葉に思わず眉をひそめた。実のところを言えば最初から不可解な話なのである。パウロはマシューたちが《七つの秘宝》を探していることを知っているのだ。なぜそれを知っているのかももちろん不気味ではあるが、それ以上に不気味なのはそれを知った上で《希望》の象徴の警護のための傭兵として4人を雇おうとしていることである。このことが理解出来ずマシューは頭を悩ませていたのだ。


「……それを知った上でなぜ聖騎士の君が僕たちを傭兵として雇おうとするんだ?」


「さぁ? 私はあくまでも上官の指示に従うだけ。そこに何一つ疑問などないね」


 渋い表情でエルヴィスが聞いたその質問にパウロはそう答えた。答えとして不十分ではあるが、エルヴィスはそれ以上聞くことはしなかった。これ以上聞いても答えは得られないだろう。そもそもパウロも理由を知らないために答えられないという可能性だってあるのだ。渋々納得したエルヴィスだったがその隣で今度はレイモンドが渋い表情をしていた。


「……前回もそんなことを言っていたな。その上官とやらは誰なんだ? 俺たちはこうして傭兵として雇われたんだ。そろそろ教えてくれてもいいだろう?」


 レイモンドはかなりじれったそうである。確かにパウロの上官が誰なのかマシューも気になっていた。そしてそれはエルヴィスもエレナも同じだろう。全員の視線がパウロへと注がれていた。


「……まあ、良いだろう。私の上官はアンガス様。神聖の騎士団ユニコーンで副隊長を務められている方だ」


「アンガスが?」


「そうだ。……聞くところによると君とアンガス様は知り合いだとか? それであの方は君たちを傭兵にと思われたのかもしれない」


 確かにマシューとレイモンドはアンガスと会ったことがある。だがそれはたった一度きりであり、あの場面でマシューたちを傭兵に雇うことを決めたとはマシューにはとても思えなかった。


 いったいなぜアンガスは自分を傭兵にと思ったのだろうか。その問いに答えることが出来ないマシューはしばらく無言で考え込んでいた。気持ちの良い風が数度マシューの首筋を撫でた。真上にいたはずの太陽は少しばかり傾いてきたようだ。


「……さて、もう昼は過ぎた。そろそろ新興都市へ向かう。案内しよう」


 そう言ってパウロは背後に広がる森の中へ入っていったのだ。どうやら新興都市へは紅玉の森を通っていくようである。


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