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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第6話 割り引きは不要

 読んでくださりありがとうございます。どうやらエルヴィスはバニッシュヘルムを気に入ったようです。


「……それじゃあこの兜を買おうかな」


「……やっぱり別の兜の方が良いで……え? 買うんですか?」


「……? 何か買わない理由でもあるんです?」


 エルヴィスは既にバニッシュヘルム買うことを決めており、収納袋から何枚か硬貨を出そうとしていたくらいである。そしてエドワードは今回も買ってもらえないだろうとばかり思っておりエルヴィスの買うという言葉を思わず疑ってしまったのだ。


「いや! そんな理由欠片もございません! いやぁ、嬉しいなぁ。まさか買ってもらえるとは。……実はこの兜は私が仕入れたものなんです」


 そういえばエドワードは今ライアンがこの店にいないのは武器の調達だと言っていた。つまりここにある数々の武器はライアンやエドワードが仕入れたものという訳だ。そしてバニッシュヘルムは目の前のエドワードが仕入れたものであり、買ってもらえることを喜んでいるのだ。


「店番こそあんまりしないんですが、武器の目利きには結構自信がありまして。親父に負けじと良いものを見つけて来てはこの店に並べてみたりしているんです。……ですが親父の目には勝てず結構売れ残ってしまうんですよ。でも良かった。今回買ってくださるんですもんね」


「……ええと、それでいくらで」


「あぁ! そうでした、すみません。……ええと、そちらのバニッシュヘルムは金貨3枚をいただいているんですが、選んでもらって嬉しいんで2枚に割引きします! 金貨2枚でいかがでしょうか!」


 どうやらエドワードは割り引いてくれるつもりのようだ。金貨2枚と言うとレイモンドの持つシュバルツスピアと同じ値段である。そんなことを考えたためにレイモンドは思わず自分の手元にある黒い槍を見つめていたのだ。そしてエルヴィスは言われた代金を払うために収納袋に右手を突っ込んでいた。


「割り引いてくれるっていう気持ちだけ受け取っておきますね」


「えぇ⁉︎ いや、金貨2枚で良いんですよ?」


「元々それくらいは払うつもりだったんだ。だから割り引いてくれるっていう気持ちだけ受け取って、定価を払うよ」


 そう言ってエルヴィスはにっこりと笑った。エドワードとしては割り引くことで喜んでもらおうと思っていたために少し困惑の表情である。だがエルヴィスはそれを全く気にしていない。むしろ希望の値段でいい買い物が出来たことで嬉しささえ感じていたのだ。


 エドワードに金貨3枚を押しつけてエルヴィスは満足そうな顔で武器屋を後にしたのである。それを見て3人は3人とも笑ってその後を追って武器屋を出た。武器屋から出てすぐのところで思わずレイモンドは吹き出して笑っていた。前を行くエルヴィスが既にバニッシュヘルムを装着していたからである。どうやらかなり気に入ったようだ。


「早速装備したのか」


「もちろん。装備しない理由も無いだろう? あの店員が言っていたことを試してみたいな。……パウロの言っていた時間までまだあるよね? どこかで効果を試してみたいんだけど」


 エルヴィスはバニッシュヘルムの効果を早く試してみたいとすっかりテンションが上がっているようだ。まだ太陽は真上に来ていないので昼になるのはまだ先である。どこまで検証するつもりかは分からないが多少の確認くらいならば可能だろう。


「パウロの指定した場所は帝都の門だから、別にずっと帝都の中で時間が来るのを待つ必要も無い。夜凪海岸だったら結構効果を試せるんじゃないかな。多分今から行けばそれなりに試せると思うよ?」


「そうだ。夜凪海岸がちょうど良い。今すぐに行こう。どうせならいっぱい試したいんだ」


――

夜凪海岸

――


 マシューたちにとって3度目となる景色が目の前には広がっていた。魔法を試す場所と言えばマシューたちからすればここである。そしてエルヴィスとエレナも同じことを思っているのだろう。そういえば魔法についてエルヴィスから教えてもらったのもこの場所だった。


「さて、エルヴィス。いっぱい試したいのは良いんだけど、俺たちはこの後パウロと一緒に新興都市を目指すってのは忘れないでくれよ」


「もちろんさ。魔力の回復については問題無い。エレナがたくさん持ってるからね。つまり今日この時間は時間の許す限りこれを着けた状態でさまざまな魔法を試せるのだよ。ふふ……楽しみで仕方ないや」


 エルヴィスはすっかりテンションが上がっているようだ。普段より声のトーンが1つ……いや、2つほど高い。マシューにはよく分からないが魔力の動きが気付かれにくくなるという効果はエルヴィスにとって相当魅力的なようだ。


「エルヴィスはその効果がどんなものか分かっているのかもしれないが、あいにく俺はまったく理解出来てない。そもそも魔力の動きを気付かれたら何が起こるんだ?」


「良い質問だよ、レイモンド。魔力の動きというのは普段意識して感じ取るものではないから気付いていることに気付いていないことが多い。だが皆感覚としてそれを持っているんだ。……この兜はそれを乱すことが出来る。手だれの者ほどその効果のほどを発揮するだろうな。……まあ、言葉で言ってもさほど理解出来ないだろうから早速実践といこう」


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