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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第5話 ライアンは不在

 読んでくださりありがとうございます。どうやらライアンはいないようです。


「なんだ今いないのか。……ん? 親父?」


 ライアンがいないことに反応を示したためにマシューは目の前にいる店員がライアンの息子であることに反応が遅れたのである。確かによく見てみると目の前の店員の顔はライアンによく似ていた。


「ええ、私の名前はエドワードと言いまして、ライアンは私の親父なんです。普段はあまり店番をすることは無いんでお客さんが知らないのも仕方ないことです。……ええと、それでですね。あまり店番をすることが無いものですから常連さんのこともあまり知らないんですよ。……もしかして常連さんだったりしますか?」


 エドワードと名乗った目の前の店員は少し不安そうにマシューにそう尋ねた。確かに彼からすればあまりしない店番で時に常連の客を怒らせてしまうこともあるのだろう。それにマシューは武器屋に来て、武器を探すわけでもなくすぐにライアンの姿を探したのである。彼からすれば常連の客に違いないと思うのも無理もないだろう。


 不安そうな表情のエドワードの質問にマシューはもちろんすぐに答えようとしたのだ。答えようとして、……言葉に詰まったのである。果たして自分は常連と呼べるのだろうか。


 確かにレイモンドがライアンと仲が良く、いつも武器屋に来ればマシューとレイモンドはライアンと言葉を交わす。その点で言えば常連と呼べそうである。しかし、実際に武器屋に入った回数は2回と常連と言うには少ないのだ。迷ったマシューは後ろにいるレイモンドへ振り返った。


「なぁ、レイモンド。……俺たちって常連なのか?」


「……違うだろ。そもそも2回しかここに来てないぜ」


「だよなあ。……俺たちは別に常連ってわけじゃ」

「ちょっと待ってください!」


 常連ではないと言おうとしたマシューだったがそれを途中で遮られたのである。言葉を遮られたマシューは困惑し、なぜかエドワードは何か引っかかるような表情を浮かべていた。


「……ええと、そちらの方のお名前はレイモンドさん……と?」


「……そうだけど?」


「そうでしたらこちらの方のお名前はマシューさん……では?」


 なぜかエドワードは2人の名前を知っていたのだ。さすがにエルヴィスとエレナは知らなかったようだが、初めて会うはずの人物が自分たちの名前を知っていることにマシューはさらに困惑の表情が深くなったのである。


「……なぜ名前を?」


「あぁ、すみません。親父が出発する時にレイモンドとマシューという名前の若い男2人組が店に来たらこれをしろと伝言がありまして」


「……?」


 エドワードはそう言うと店の奥へ引っ込んでしまったのである。困難の表情を浮かべたままマシューがしばらく待っていると、再びエドワードがマシューたちのいるところまで戻って来たのである。その手元には木製の小さな槍が数本握られていた。


「どうぞ受け取ってください」


「……これはアトラトル用の槍か。確かにこれくらいの本数使って減ってはいたな。受け取ってくださいってことは代金は要らないという意味か?」


「どうせそれくらい減っているだろうからそいつを数本押しつけておけとの伝言でして」


 別にそこまで詳しく教えてくれなくても良いのだがエドワードはそう言ってにっこりと微笑んだ。レイモンドは受け取った槍をしばらく見つめてからライアンに感謝して収納袋に入れたのである。


「マシューさんには特にお渡しするものは無いようです。私にはよく分かりませんが武器は変える必要が無いからずっと持っておけとのことでした」


「……なるほど。とにかく武器を変える必要は無いと」


「はい、そうです。……ええと、確か兜を買いに来られたとか。どなたの兜を買いに来られたんですか?」


「あぁ、そうだった。……ここにいるエルヴィスに合うサイズのフルフェイスの兜を買おうと」


「それでしたらあちらにある兜がよろしいかと。持って来ますね」


 そう言うとエドワードは指差した方角へどんどん歩いていったのである。しばらく待っているとやがてにっこり笑ったエドワードが何かを持って帰ってきたのである。その手には軽そうなフルフェイスの兜があった。


「見たところエルヴィスさんは魔法を好んで使われるのではないでしょうか」


「……まあ、一応」


「良かった。それならこの兜がおすすめです。この兜は名前をバニッシュヘルムと言いまして、相手から魔力の動きを気付かれにくくなる効果があるんです」


「へぇ!」


 明らかにエルヴィスの声のトーンが一段階上がったのをマシューは感じ取った。エドワードが持っている兜は見る限りではよくあるフルフェイスの兜と違いが分からないが、もしエドワードが言うような効果があれば相当強力な装備であろう。


「あくまで気付かれにくくなるだけで気付かれないわけじゃないですよ。……それに強力な魔法を発動させるとなるとこの兜があってもすぐに気付かれてしまいます」


 エドワードは自信なさげに肩を落とした。言葉にすれば強力な効果だがどうやら高い効果を発揮するものでも無いようだ。とは言え魅力的な効果であることは間違いない。既にエルヴィスの関心はその兜だけに集中していたのだ。

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