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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第5章 希望を巡る謀略
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第1話 マシューは悩む

 読んでくださりありがとうございます。第5章の始まりです。


 眩しい朝日が注ぎ込んできていることを感じレイモンドは目覚めた。マシューは朝起きるとすぐに部屋のカーテンを開けるのだ。それはマシューの癖のようなもので、レイモンドは大抵それで目を覚ますのだ。


 レイモンドは目を覚まして見る光景が少し懐かしくて嬉しさを感じていた。2人は帝都に帰ってすぐに緋熊亭に向かったのだ。もちろん2人が宿泊した場所は緋熊亭のいつもの部屋である。たった数日いなかっただけなのにレイモンドは懐かしさすら感じていたのだ。


「おはようマシュー」


「……あぁ、おはようレイモンド」


「まだ悩んでいるのか? エルヴィスも言っていたけど、最終的に俺たちはお前の決定に従うんだから好きに決めたら良いんだぜ?」


「……いや、まあそうなんだけどね。エルヴィスのことを思うと中々決められない自分がいるのさ」


 そう言いながらマシューは苦々しい表情を浮かべていた。彼は悩んでいたのである。それは神聖の騎士団の一員であるパウロから持ちかけられた話をどうするかをその瞬間からずっと悩んでいたのだ。


 パウロは身分を隠した冒険者としてではなく聖騎士として、マシューたちに《希望》の象徴の警護のための傭兵に参加出来るという話を持ちかけて来たのである。短絡的に考えれば聖騎士によって警護されている《希望》の象徴に最も近づけるチャンスとなる。恐らくこれを逃せばもうチャンスは無いだろう。


 だがそれが聖騎士の1人から持ちかけられたとなると話は変わってくる。そもそも持ちかけられた話は《希望》の象徴の警護である。それはマシューたちが象徴を集めているのを知っているのであれば絶対に持ちかけられない話なのだ。それ故にエルヴィスはこの話は罠だとして無視した方が良いと主張していた。


「……正直罠だとは思う。俺たちが象徴を集めていると知った上で象徴の警護を頼むのはとてもじゃないが正気の沙汰とは思えない」


「それは俺も同感だ。だが象徴にこれ以上無いほど近づけるというのも事実だ。もしお前に象徴を全て集めるという気があるのなら、飛び込んで見るのもひとつの手だ。……それを分かっていてずっと悩んでいるんだろ?」


「……あぁ。とてもじゃないが決められそうもない」


「なるほど。それじゃあそんなマシューをもっと悩ませてやろう。俺はパウロの話には乗るべきでは無いと思っている。罠としか思えないし危険すぎる」


「……」


 レイモンドの話を聞きながらマシューはずっと険しい表情をしていた。レイモンドは自分の思いを言ったところで悩みが解消されるとは思っていない。むしろマシューがもっと悩むことを知っている。そして彼が悩みながらでも出す結論はたったひとつであることも知っているのだ。


「ま、パウロの約束の時間はまだ先。それまでなら悩めるぜ。今はとにかく朝食を食べに行こう。俺は腹が減ったよ」


 レイモンドはそう言ってベッドから降りると部屋を出る準備を始めた。マシューは既に準備が終わっており、レイモンドの準備を待ちながらずっと悩んでいた。マシューが悩む理由は他にもあるのだ。


「よし、それじゃあ食堂へ行こうぜ。今日の朝食はなんだろなぁ」


 レイモンドの準備が終わり2人は食堂へ行くために階段を降りた。食堂へ行くためには緋熊亭のロビーを絶対に通る必要がある。故にそのタイミングで緋熊亭への来客があれば必然的に2人は鉢合わせするのだ。まだ来るには時間が早いとばかり思っていただけにマシューは少し意外そうな表情である。


「お! もしかしてちょうど良いタイミングだったか?」


 エルヴィスは2人を見て嬉しそうな表情を浮かべた。もちろんその後ろにはエレナの姿もある。今後の行動をどうするか決めるためにエルヴィスとエレナには朝食を食べてから緋熊亭に来てもらうよう言っていたのだ。


「いや、早すぎるよ。まだ俺たち朝食すら食べてないってのに」


 レイモンドがそう毒づいたがエルヴィスは申し訳無い表情ではなく、ニヤリとした笑みを浮かべたのである。どうやら狙い通りだったようだ。


「なら良いタイミングだな。僕らも朝食を食べてないんだ。……ほら君たち事あるごとに緋熊亭の食事が美味しかったって言っていたから気になってね」


「あら! それはとても嬉しい言葉ですね。お食事は4人分用意すればよろしいですか?」


「是非お願いします」


「かしこまりました。それではすぐにお持ちしますので、あちらの食堂でお待ちくださいませ」


 料理を褒められたポーラは上機嫌になって厨房へと去って行った。その後ろ姿を見届けてから4人は食堂の扉を開けて中へ入ったのである。食堂の中ではバーナードが新聞を読みながら食堂の奥のテーブルに座っていた。マシューはほのかにたばこのにおいが漂っている気がして少しだけ首を傾げた。


「……あんたらはよく知ってるが、もう2人は知り合いか?」


「こっちがエルヴィスでこっちがエレナ。バーナードは知らないだろうけど、ちょっと前から4人で行動しているのさ」


「ほう? ま、あんたらの仲間ってんなら良い人に違いねぇな。俺はこの緋熊亭の店主のバーナードだ。よろしく頼むぜ」


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