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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第38話 不気味な笑みを浮かべて

 読んでくださりありがとうございます。ただの偶然なのでしょうか。


「とりあえず偶然と思うことにしよう。モンスターに遭遇しないのは安全で良いことではあるけど、だからと言って警戒もせずに移動して多数のモンスターに遭遇してしまってもいけないしね」


「それもそうだな」


 一瞬雰囲気が緩んでしまったが、マシューがそれをすぐに引き締めた。その結果4人は夜霧の森を抜ける間集中を切らすことなく歩ききることが出来たのである。そしてやはりその間マシューたちは一切のモンスターと遭遇していなかった。偶然にしては出来過ぎである。さすがのマシューも夜霧の森から嵐馬平原へと歩きながらこの事態に首を傾げてしまった。


「……おかしい。こんなにモンスターと遭遇しないことがあるのか?」


「……僕もそう思っていたよ。何かおかしなことでも起こっているんだろうか」


「……ん? みんな止まってくれ」


 先頭にいたレイモンドが急に声を上げた。何かを見つけたような声だがモンスターを見つけた訳ではないだろう。もしモンスターと遭遇していたならば最初に声を出すべきではない。それをしてしまえばモンスターに自分たちの位置を教えることになり、戦闘が難しくなるためである。


 つまり言い換えればレイモンドが発見したのはモンスターではない何かである。マシューはレイモンドに何を見つけたのか聞こうとした。だがそれは必要の無いことだったのである。


レイモンドが見つけたその人物は隠れることなくマシューたちをじっと見つめていた。その人物が何者なのかをマシューは知っていた。確か名前はパウロと言って武器屋と書庫の前で二度出会ったことのある人物であり、そしてエルヴィス曰く神聖の騎士団ユニコーンの騎士である人物である。彼はいったいなぜ嵐馬平原にいるのだろうか。


「……ようやく出てきたか。待ち侘びたよ」


「待ち侘びた? いったいあんたは俺たちに何の用事があって待っていたんだ?」


「まあ、そう身構えない。私は君たちにとっても有益な情報を持って来たのさ」


「有益な……情報?」


 目の前のパウロはニヤリと笑っている。そんな表情を浮かべているパウロは見たことが無い。何か良からぬことを考えている、そんな表情にマシューには思われた、故に少し探りを入れることにしたのである。


「つまり聖騎士のあんたが俺たちに有益な情報を持って来たと?」


「その通りさ。おっと、……聖騎士に有益な情報を教わるのは抵抗があるかい?」


 マシューはパウロが聖騎士であることがバレるのを嫌がっているのではと思っていた。それは書庫の前で会った時にエルヴィスを露骨に避けた形で去った故である。……だが目の前のパウロはニヤリと笑いながら、むしろ聖騎士であることを隠そうともしなかったのだ。探りを入れたはずが何も分からず、ただ不気味さが増した。


「……良いだろう。その情報とやらを聞いてみよう」


「マシュー。……本気か?」


「……正直言ってかなり不気味だ。だけどあくまでも話を聞くだけであって、中身を信用するという話では無い。……少なくとも俺たちにとって有益ではあると言っているんだ。話だけでも聞いてやろう」


 マシューの言葉をじっと聞いていたパウロはその間もずっとニヤリとした笑顔を浮かべ続けていた。レイモンドはこの男が不気味で仕方ないのだが、マシューが話を聞くと言っている以上無碍には出来ない。いったいこの男は今からどんな情報を言うのだろうか。レイモンドはちっとも見当がつかなかった。


「……抵抗を感じていてもなお、私の話を聞く……か。ふふ、あの方の見立てはやはり正しいようだ」


「……あの方とは?」


「それは言えないな。もっとも知ったところで何にもならないけどね」


 そう言ってパウロはやはりニヤリと笑っていた。どうやら言っても良いものと言ってはいけないものの区別はついているようだ。それが分かると余計に不気味である。聖騎士が言っても良いマシューたちにとって有益な情報とは何なのだろうか。


「君たちは《七つの秘宝》を集めているんだろう? しかもかなりの量だ。……だがこのままではそれを集めきることは出来ない。それはなぜか」


「神聖の騎士団が《希望》の象徴を持っているから。……だろう?」


 後ろから聞こえる声にマシューとレイモンドは振り返った。声の主はエルヴィスである。エルヴィスは元々神聖の騎士団の関係者であり、当然のようにその情報は知っていたのだ。


「さすがは騎士団長の元息子。追放されたとしてもその辺りの情報はやはり知っているか。……だが私の話はこれで終わりではない」


 わざとらしくパウロはひとつ咳払いを挟んだ。そして不気味な笑みを浮かべ再び口を開いた。


「《希望》の象徴は現在新興都市で神聖の騎士団によって厳重に保護されている。そして警備を強化するためこの度神聖の騎士団では新たに傭兵を雇うことに決めたのさ。私はそのうちの4枠の補充を任されている。……どうだい? 君たちにも有益な情報だろう?」


 これにて第4章が終了となり、次回より第5章が始まります。これからも楽しんでいただけると嬉しいです。

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