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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第30話 証拠は王の手の中に

 読んでくださりありがとうございます。さて、王様が持っている紙切れの正体はなんなのでしょうか。

「……この手紙は昨夜ウォルトンの部屋から見つかったものだ。大臣から出されたものであることが中を見れば分かる。……大臣、覚えはあるか?」


 最初カルヴィンは王様が何を言っているのか分からず、ただただ困惑していたのだ。だがウォルトンへ出した手紙に自分が何を書いたのか思い出したのだろう。カルヴィンの顔は次第に青くなっていったのだ。


「……こ、これは。……その」


「手紙の他にもこういうものも見つかっていてな。これは見つかった手紙の近くで見つかった土地の権利書だ。前所有者の場所には大臣の部下の名が記されている。……これに覚えはあるか?」


「…………」


 カルヴィンは何も言わずにただただ苦々しい表情で下を見つめていた。恐らくカルヴィンはアレックス側が出せる証拠は弱く押し切れるとみて先に仕掛けて来たのだろう。だが他ならぬ王様がカルヴィンの行動の証拠を持っていたのだ。


 王様はカルヴィンを見下ろしていた。下を向いているカルヴィンは気づかなかったのかもしれないがその時の王様は今まで見たこともないほどに冷たい表情をしていた。


「……そなたの望みはひとつだけ叶えてやろう」


「……!」


 王様のその言葉にカルヴィンは思わず顔を上げた。だが顔を上げた時王様は全くの無表情であり、とてもこれからカルヴィンに温情をかけるようなものには見えなかった。


「罪を被せたものには厳しい処罰を与えよ。それがそなたの望みのはずじゃ。故にその望みだけは叶えてやろう。……大臣を牢獄へ連れて行きなさい」


 王様のその言葉に呼応するかのようにどこからか鎧を着たラグドールが数匹現れた。そして彼らはうなだれるカルヴィンを取り囲み部屋の外へ連行したのである。こうしてウォルトンやカルヴィンが目論んだ計画は全て失敗に終わったのだ。


「……さて、アレックスよ。そなたは何用でここへ来たのじゃ?」


 椅子に座り直しにっこりと微笑んで王様はそう言ったのだ。アレックスはまだ先程までの景色を引きずっておりしばらく声を出すことが出来なかった。だがそれもしばらく経つと収まった。大臣が来ていることで言い出せずにいたが今アレックスがこの場所にいるのは王様に自分の覚悟を伝えるためなのである。


「……王様。私は自分の覚悟を伝えるために……この場所に来ました」


「覚悟……か。それはすなわちそなたが王になる覚悟という意味じゃな?」


「……はい」


 王様の言葉にアレックスは力強く頷いてそう答え、王様はそれを聞いて満足そうに微笑んだ。つい先程まで殺伐した雰囲気で満ちていたとは思えないほどに暖かい雰囲気が部屋には流れていた。


「ふふ、……ついに覚悟を決めたか。元より私は反対しておらぬ。反対していたのは大臣たちのみだが、それも今は反対しようがない。……だがそなたに王座を譲る前に確認したいことがある」


「……なんでしょうか」


「そなたの思う動物の矜持とは何かを教えてもらおう」


 そう問う王様の視線は鋭くアレックスを突き刺した。この質問が王様から聞かれることはアレックスには分かっていた。アレックスが以前より王様になろうと思いながら覚悟が決まらなかったのはこの質問に答えられる自信が無かったからに他ならない。


 もっとも答えが分からないから自信が無い訳ではない。アレックスが思う答えはもう既に頭の中にはっきりとあるのだ。動物はその身に宿す魔力の有無に関わらず、来るべき時のために全ての力を使って象徴を守り抜くこと。それがアレックスの思う動物の矜持である。


 だがそれは魔力を宿すことなく象徴を守り抜くことを動物の矜持とし、例え微弱でも魔力を有していれば動物では無いと断じる王様の考えとはまったく異なる考えなのである。それ故にアレックスは自分の考えを矜持として王様に伝える覚悟が中々つかなかったのだ。


「……どうした? まさかまだ考えておらん訳では無いだろう?」


「……私は動物の矜持とは……その身に宿す魔力の有無に関わらず、来るべき時のために全ての力を使って象徴を守り抜くことにある。……そう考えています」


「魔力の有無に関わらず……か。魔力を有するものはすべからくモンスターと呼ぶべき存在であることについてはどう思う?」


「確かに魔力を持つものはモンスターと呼ばれるでしょう。……ですが、例えモンスターであったとしても魔王に抗い象徴を守ろうとするものの手は取るべきだと私は思うのです」


「手は取るべき……か。確かにそうなのかもしれんな」


 そう言うと王様はどこか遠い場所へ目を向けていた。モンスターの手を取るなどあるまじきことである。そうして自分の考えが否定されるのだとばかり思っていたアレックスは思いがけず困惑した表情である。どうやら王様には自分の考えにどこか考えるところがあるようだ。


「……もし、私にもそんな考えがあれば状況は変わっていたかもしれんの」



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