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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第24話 時に慎重に

 読んでくださりありがとうございます。エルヴィスは何を考え込んでいたんでしょうか。


「……宝物庫の外に転移してしまうのがちょっと惜しいところかな。転移してきたのを誰かに見られたら説明するのが難しくなる」


「……それは多分何とかなるんじゃない? 転移してきたことは分かってもどこから転移して来たのかは分からないんだ。もし見られても適当に誤魔化せると思うな」


「……なるほど、確かにそれはそうだ。……ふふ、やっぱり《知恵》の象徴を持つ人は違うね。そんなこと僕は思いもしなかったよ」


 エルヴィスはマシューの考えを聞いて納得の表情を浮かべた。その言葉にマシューは一瞬だけ照れくさそうに笑ってすぐに顔を引き締めた。近くに誰かがいる気配がしたからである。


 その気配は廊下の奥からしていた。その場所はちょうど暗くなっていて気配が誰からのものかすぐには判断出来ない。マシューたちがじっとそちらを見ていると不思議そうな顔をしたビアンカが闇から顔をのぞかせたのだ。


「……誰かと思えばそなたたちか。こんなところで何をしていたんだ?」


「象徴の警護をしていたエルヴィスたちを迎えにきたのさ。狙うものもいないのに警護を続ける意味も無いからね」


「……なるほど。そういえばエルヴィスとエレナは《自由》の象徴の警護をしていたんだったな。……つまりこの辺りに象徴が守られているのか。ここから近い場所と考えると、……やはり宝物庫の中なのか?」


 ビアンカはそう呟きながら象徴がある場所を考え込んでいた。アレックスはウォルトンに象徴の場所を教えたと言っていたがビアンカにも教えたとは確か言っていない。ならば目の前のビアンカの反応からして象徴の場所は知らないと見て間違いないだろう。


「……あぁ、すまない。つい場所がどこなのか気になってしまってな。……恥ずかしながら私はまだどこにどう保管されているか知らなくてな」


 そう言ってビアンカは恥ずかしそうに顔をかいていた。マシューたちにはなぜアレックスはビアンカに場所を知らせていないのかについては判断が出来ない。3人とも場所を知っているために代わりに教えることが出来るのだがそれをしないのは判断に迷うのならばしない方が良いという判断からである。


 流れのままうっかり話してしまうことの無いようにマシューは話題を変えることにしたのである。強引に変えるのは不自然なためなるべく自然な流れで話を変える必要がある。何の話に変えようか少しだけ考えたマシューはやがて口を開いた。


「……ところでビアンカはなぜあんなところに? あの先に牢獄があるのかい?」


「あぁ、そうだよ。この先の廊下を進んだ先にある階段を降りるとそこが牢獄さ」


「……宝物庫の近くに牢獄を作ったら安全性が低くならないか?」


「城の内情に詳しい人なら低くなるかもしれないが、そうじゃないなら宝物庫の場所を知らないから問題無いさ。この城の宝物庫は少し地味な作りをしていてね。もし扉の作りで宝物庫かどうかを判断するなら、間違いなくみんな王子の部屋に行ってしまうよ。私もそれで盗賊を何回か捕らえた経験がある」


 ビアンカの説明に3人とも思わず笑みを浮かべた。確かにアレックスの部屋の扉は豪華そのものである。何も知らない城の中で宝物庫に当たりをつければアレックスの部屋に行き着いてしまうのも想像出来る。


「確かに王子の部屋の扉は豪華だからな。間違えるのも無理ない……か。それでええと、……俺たちはこれから王子の部屋へ戻るんだがビアンカも戻るで良いんだよね?」


「そうだな。早く戻ろうか」


 マシューの提案にビアンカはすぐに頷いた。それから3人と1匹は特に何も話すことなく歩いてアレックスの部屋に向かったのである。歩いている間マシューは象徴の場所について詳しく聞かれなくて良かったと胸を撫で下ろしていた。


 この城の中で最も豪華な扉をノックして3人と1匹はアレックスの部屋に入った。既にレイモンドは帰ってきておりアレックスと一緒ににこやかな表情を浮かべて全員を待っていたのである。


「多分ビアンカと一緒になるんじゃないかってさっきまで話していたんだ」


「宝物庫と牢獄の場所から考えれば大体同じタイミングになるんじゃないかと思ってね。……ビアンカはマシューたちから象徴の場所は聞いたかい?」


 にこやかな表情のままでアレックスはそう言ったのである。その表情は何かを試すような表情であった。どうやらマシューたちが象徴の場所をビアンカに言うのではないかと思われていたようだ。何も言っていない故に何も感じる必要は無いのだがマシューは少しばかり背中に冷たさを感じていた。


「いえ、聞いてませんよ」


「ふふ、……私としては別に話しても良いことだが、どうやらマシューたちは慎重に物事を考えるようだな。恐らくビアンカが知らないのは何らかの理由で私が隠しているだろうからと考えた。……違うかい?」


「……言葉にするなら、そうなりますね」


「勇者は時に慎重にならなければならない時がある。そういう意味で言えばまだ勇者候補ではあるが、マシューには既に勇者の資質があると言えるな。……まったく最近の勇者候補はかなり優秀だよ」


 そのアレックスの言葉には聞き覚えがあった。確か最初にビアンカに会った時そんなことを言っていた記憶がある。


 そしてマシューは最近の勇者候補を知っているのかという疑問が再び浮かんだのである。それは確か最初にアレックスに会った時にも浮かんだ疑問である。あの時は呆れられてしまったが今なら聞いても呆れられないかもしれない。そう考えたマシューは思わず口を開いていた。


「やはり王子は時の勇者に会われたことがあるんですね」


「当たり前だ。……そもそもここルシャブランは《自由》の象徴を守っている場所。つまり勇者ならば来ていなければおかしいのだ。……そうだ、マシュー。君にひとつ聞きたいことがある。何、それほど難しい話では無い。……答えてくれるかい?」


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