第10話 魔力適性検査
読んでくださりありがとうございます。さて、とうとう冒険者になる時が来たようです。
そう言ってニコラは紙切れを2枚2人に差し出した。2人とも手渡されたその紙切れに自分のことを書いていった。ギルドに登録するのに必要な情報はそれほど大したものでは無い。名前や出身地、得意武器や戦闘スタイルなどを書くだけである。1分もしないうちに2人とも全ての項目を埋め受付にいる女性に手渡した。
「ありがとうございます。マシューさんにレイモンドさんですね。……書かれている情報に従ってお2人とも登録が完了しました。それではこちらがギルドカードになります。お持ちください」
そう言って受付の女性は金属片をそれぞれに手渡した。手のひら大のその金属片の右下には名前のようなものが彫られているようだ。
「そのギルドカードは自分の身元を証明するものになりますので無くされませんようお気を付けくださいませ。もし、無くされた時は早急にギルドに連絡をお願いします。続いて階級の説明に移ります」
そう言うと受付の女性は大きめの透明なガラスケースのようなものを取り出した。中を見ると金属片が5つ並んでいるようだ。マシューたちのギルドカードに似た色の金属片が一番左端に置かれており、右端に行くにつれて金属片の色が綺麗になっているようである。恐らく階級によって金属片の色が異なるのだろう。
「階級には大きく5段階ございます。一番左端から青銅、赤銅、白銀、黄金、白金と名前がついており、それぞれ階級が定められています。お2人は登録したばかりですから一番左端の青銅階級になりますね」
「ギルドに寄せられる依頼をこなしたり帝都に住む人たちの願いを叶えたりすると帝都への貢献度が評価されて階級が上がる仕組みになっている。もし階級を上げたいのなら帝都に貢献するような行動をすると良い」
「……詳しいんだな」
レイモンドは思わずそう呟いてしまった。ニコラは騎士団長であり冒険者とは関係無いはずである。だがこうして冒険者ギルドまで案内出来るばかりか本来受付の説明する部分まで把握しているようである。不思議に思っているとニコラは口角を上げると腰に下げた革袋からとあるものを取り出してみせた。ニコラの手には黄金に輝くギルドカードがあったのである。
「……⁈ ……ええと、つまり……これ?」
「そう、その金属片と同じ色だよ。僕は深緑の騎士団グリフォーンの団長だが同時に黄金級の冒険者でもある。だからさっきの説明も出来ると言う訳だ」
「……なるほど、どう言うことかは分かった。……けど、それってよくあることなのか? 騎士団の騎士は全員冒険者登録もしてるって言うことなのか?」
「冒険者って言う肩書きがあった方が便利な時もあるのさ。僕の知る限り騎士団に所属していて冒険者登録もしている人は割といるよ。さっき会ったアンガスもそうさ。彼は白銀級の冒険者だよ」
なるほど騎士と冒険者を兼業している者は割といるようである。そしてニコラの言うように冒険者の階級が帝都への貢献度に関係しているのなら兼業している者の階級はかなり高いと予想される。
そしてそんなニコラやアンガスでさえ最高階級である白金級には届いていないと言うことは階級を上げると言うのはそれだけ困難なことなのだろう。
「階級について分かっていただけたようなので次の説明に入ります。説明に入る前にひとつだけ確認させてください。レイモンドさんは魔力適性検査を希望されているようですが、マシューさんは希望しないでよろしかったでしょうか?」
マシューはレイモンドの顔を見た。先程の紙切れにあった質問に適当に答えていたようでレイモンドはとぼけた表情を浮かべていた。
どうやらレイモンドは良く分からない場合とりあえず肯定してしまうようで、逆にマシューはとりあえず否定しておくタイプであるためにこの場合は希望しないを選択していたのだ。要するに2人とも魔力適性検査がどう言うものかが分かっていないという訳である。
「ええと、……そもそもその魔力適性……検査? って言うのが何か分かってないんだが。まず魔力って何だ?」
「そう言うことでしたらまずは魔力の説明から始めさせてもらいますね。魔力とは簡単に言えば生まれつき身体に備わっている精神エネルギーのことです。それを使うことにより魔法が使えるようになります。そして魔力適性検査とは備わっている魔力がどれほどのものであるか、そしてどの属性を持っているかを判定するものでございます」
「魔力については大体分かった。それで……その、魔法と言うのは?」
「まあ、見たこともないことを理解しろと言うのは難しいな。こう言う場合見た方が理解が早い。マシュー、レイモンド。今から少しの間僕から目を離さないようにしてくれ」
「……ニコラをじっと見ていればいいのか?」
「そう、決して目を離さないよう注意するんだよ。……【認識阻害】」