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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第22話 まずは後始末を

 読んでくださりありがとうございます。どうやらウォルトンの企みは全て阻止されたようです。


 全てを知っている。アレックスが言ったその言葉は決して嘘では無い。本当に全てを知った上でウォルトンの計画を阻止しているのだ。いったいいつからウォルトンの計画は知られていたのだろうか。そのことを考えれば考えるほどウォルトンの首筋は冷えていった。今目の前で自分を見下ろすアレックスのその姿はこの上なく恐ろしいものに見えた。


 ウォルトンは焦った表情で何かを確認するように辺りを見渡し始めた。その間ウォルトンはじりじりと徐々に後退りをしている。最早誰がどう見てもその行動の意図は筒抜けであった。マシュー、レイモンド、そしてアレックスと視線が合う。そして視線こそ合わなかったがシャーロットの姿も見えた。辺りを見渡したウォルトンが目にしたのはそれだけである。


 だがこの場にはまだビアンカがいるはずだ。そしてなぜその姿が見つからないのかは振り返らずともウォルトンには分かった。さすがは騎士隊を率いているだけはある。まったく気付かないうちにいつの間にか後ろに回られていたのだ。


「……どうやら逃げることも出来ない……か」


「あぁ、それはもちろん許さない。……ビアンカ! 副隊長を牢獄へ連行しなさい」


「……かしこまりました」


 最早ウォルトンは諦めたようだ。抵抗の素振りすら見せずビアンカに連行されていったのだ。これでアレックスから聞いた極秘の話は全て解決出来た。そのことを安心したのかレイモンドは大きく息を吐くとともにその場に座り込んだのである。


「……ふぅ、疲れた」


「……お疲れ様だと言いたいところだが、君たちにはまだ役割がある」


「……まだ何かあるんですか?」


「もちろん。……その役割は君たちに是非果たしてもらいたい。内容は全員揃ってから伝えた方が良いだろう」


 どうやらマシューたちにはまだ役割があるようだ。今のところアレックスから聞いた話は全て解決したはずである。であればアレックスの言う役割はまだ話していない話なのだろう。


「故に、今はまだその話はしない。ひとまず後始末が先だ。レイモンドはシャーロットを家まで警護しなさい。そしてマシューは象徴の警護をしているエルヴィスとエレナに全て片がついたことを伝えて来るのだ」


 まだ役割がある。その言葉は気になるところではあるが確かに今はまず後始末が先である。レイモンドはすぐにシャーロットを連れて部屋を出て行った。マシューもすぐにエルヴィスたちのもとへ行かねばならない。《自由》の象徴がどこにあるのかは既にアレックスから聞いている。確かあの場所だったはずだ。


 記憶をたどりながらマシューはアレックスの部屋を出て象徴が置かれている場所を目指した。象徴が置かれている部屋はルシャブラン城の宝物庫のすぐ隣である。ただし廊下からその部屋に入ることは出来ない。宝物庫に入って左側のガラス張りの壁を押すとその部屋へ続く扉が開くのだ。


 マシューは宝物庫にたどり着くと躊躇いなくその扉を開けた。歴史ある城の宝物庫だけあって少しカビ臭いその部屋の中には所狭しと財宝が収められていた。恐らくこの財宝の中にひっそりと《自由》の象徴が置かれていても何も知らない人からすれば分からないだろう。そんなことを考えながらマシューは宝物庫のガラス張りの壁を探した。


「……お、ここか」


 ようやく見つかったガラス張りの壁はなぜか大きめの甲冑で塞がれていた。塞がれていると言ってもそれほど重いものではなくマシューはそれを難なく移動させることが出来た。


 ……エルヴィスたちを閉じ込めるためだろうか? だが向こう側から出るには扉を引くのであり、扉の前を塞いだとしても何の意味も無いのだ。首を傾げながらマシューは甲冑をどかして出て来たガラス張りの壁をそっと掌で押し込んだ。そしてギィと軋む音ともにゆっくりと扉が開いたのである。扉の奥は暗くその先が見えづらい。だがそれに構わずマシューはその先へ歩いていった。


「……まだ諦めていないのか? 良い加減しつこいな」


 部屋の奥からそんなエルヴィスの声が聞こえて来た。恐らくエルヴィスはマシューを象徴を狙ってやって来た騎士隊と勘違いしているみたいである。確かにこの暗さでは顔はあまり見えづらいだろう。だが騎士隊はラグドールなどの猫でありマシューは人間である。体格が全然違うのだからすんなり見分けて欲しいものである。……相当疲れているのだろうか。


「……面倒くさいから魔法で片付けるとするか」


「待て待て! エルヴィス、俺だよ。マシューだよ」


 どうやらエルヴィスは面倒になっていたようで魔法を発動させようと魔力を込め始めた。さすがに魔法を喰らいたくないマシューは慌てて自分であることのアピールをしたのである。少し遅かったかと思ったが魔法が飛んでくる気配は無かった。どうやら間に合ったようである。


「……? あぁ、何だマシューか。いったい何しにここへ?」


「ウォルトンが牢獄へ連行されたんだ。だからもうここを守る必要がなくなったのさ。……それをエレナにも伝えようとここに来たんだが、エレナはどこだ?」


「あぁ、なるほど。それでここへ来たのか。エレナなら象徴のすぐ隣だよ。……そうだ。マシューはまだ話を聞いただけでまだ《自由》の象徴がどんなものか知らないだろう? エレナを呼びに行くついでに見たら良いよ。さ、ついて来て」


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