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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第21話 レイモンドが持つ荷物の中身

 読んでくださりありがとうございます。レイモンドの登場です。


「……お前は、レイモンド⁉︎ 仮眠室で寝ているはずでは⁈」


「あんたこそなんでここにいるのさ。同じように仮眠室で寝てるはずだろ? ま、理由は知っているんだけどね」


 レイモンドはそう言いながらどんどんと部屋の奥へ歩き始めた。その姿を唖然とした表情でウォルトンは見つめていた。彼はまだアレックスから香水を中和する薬の存在を聞かされていない。故に仮眠室で寝ていないことが信じられないのだろう。


 どんどん歩いて進んだレイモンドはビアンカの前にたどり着くとその場でしゃがみ込んだ。そして持っていた大きな荷物を床に置きビアンカの目の前で開き始めた。もちろんビアンカはその荷物の正体を知らない。故にビアンカは完全に開き終わった荷物を見て信じられないという表情を浮かべていた。


「……おや、ビアンカ。何を呆けた顔をしているんだい?」


 レイモンドの荷物から現れたのは騎士隊で見張られているはずのビアンカの祖母シャーロットである。その姿を見たビアンカは目を丸くして驚きウォルトンは信じられないと言いたげな表情を浮かべていた。


「……何で? 何でばあちゃんがここに?」


「そりゃこの人がここに連れて来てくれたからさ」


「待て待て! 見張りがいたはずだ。……どうして連れて来れる⁉︎」


「……見張りねぇ。私はあんたの脅しの道具に使われる筋合いはひとつも無い。……まさか私の存在が可愛い孫の足枷にされていたとはね」


 そう言ってシャーロットはウォルトンを睨みつけた。最早ウォルトンにはそれを上手く誤魔化すことが出来ない。もっともどれだけ取り繕ったとしてもそれが虚言であることをアレックスは知っているのだが。


「さて、これでビアンカはこいつの脅しに従う必要は無くなった訳だ。……さっきまで怯えていたのも命令に従わなければシャーロットを殺すと脅されていたからだろう? ならもう怯えることは無いはずだ。……今一度私のために戦ってくれるか?」


 豪華な椅子にどっかりと座りながらアレックスはビアンカに向けてそう言った。ビアンカはアレックスをじっと見つめ、そして深く深く頭を下げたのだ。


「……私は王子を裏切りました。そんな私をもう一度信じてくださるのでしょうか」


「……愚問だな。あんなもの裏切りには入らないよ。君への信頼はずっと変わらないさ」


「……ありがとうございます」


 そう言ってビアンカはゆっくりと顔を上げた。その表情は先程までの何かに怯えているかのような弱々しい表情ではなく自信に満ちた強いものであった。それはマシューたちと初めて出会った時と同じ表情である。


 その様子を苦々しい表情で見ていたのはウォルトンである。彼の計画はビアンカを脅して王子を殺害させその罪を勇者候補であるマシューに押し付けるというものである。それによって自分以外の存在を消し、権力を握ろうとしたのだ。


 その計画はついに失敗に終わったが全くだめであった訳ではない。むしろかなりの部分で達成されていたと言える。アレックスが全てを知った上でそれを阻止しようとしなければ計画は全て達成されていたのかもしれない。


 だが、その計画は失敗したのだ。そのため彼には最早逃げることしか許されていない。しかし彼はまだ逃げようとはしていない。逆転の一手がまだある。苦々しい表情こそしていたがまだ完全に諦めていないその表情はやや不気味である。


「……ビアンカを利用してやるはずだったが、こんな邪魔が入るとはな。だが私には《自由》の象徴がついている。今頃私の部下たちが象徴を回収しているはずだ。あれが私の手にある限り、貴様たちは私に手を出せないはずだ‼︎」


 彼の持つ逆転の一手。それは象徴である。そもそもここルシャブランは《自由》の象徴であるラグドールの盾を守るために作られた国である。ウォルトンがその象徴を手にした場合、確かに下手に手出しは出来ないだろう。……本当に手にしているのであれば


「……話はそれで終わりか?」


「……なんだと?」


「そもそも象徴がどこにあるのかを貴様が知っているのは私が貴様に教えたからであろう? なぜその時に私が貴様の裏切りを考慮していないと思ったのだ。知られても特に問題無い故に知らせたのだ」


「……だがどうやって私が象徴を手に入れるのを阻止すると言うのだ。騎士隊は全て私の指示において動く。それ故に騎士隊を使っての警護は出来ないはずだ!」


「もちろん騎士隊に警護なんて任せられないさ。……貴様も覚えているだろう? マシューたちは4人でここルシャブランへやって来たんだ」


「……だが、彼らは今監視の役割を担っているはずだ! ならば象徴の警……」


 そこまで言ってウォルトンは突然言葉を止めてしまったのだ。理由は簡単である。この場にいないマシューの仲間であるエルヴィスとエレナは確かにウォルトンの言うように今監視場所で監視の役割を担っているはずである。だがエルヴィスとエレナの2人があの監視場所にいないことを他ならぬウォルトン自身が知っているのだ。


「監視など本来必要の無い役割だ。貴様が今考えた通りエルヴィス、エレナ両名は今《自由》の象徴の警護にあたっている。……これでもまだ貴様は象徴がその手にあると思うかい?」


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