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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第17話 ビアンカは未だ帰らず

 読んでくださりありがとうございます。警護はマシューひとりで行うようです。

 ルシャブラン城の数ある部屋の中でも特別豪華な部屋。それがマシューが今から警護するアレックスの部屋である。レイモンドの読みが正しければ動きが見られるのは今日の深夜であり、それを対応することになるのは恐らくマシューになるだろう。覚悟を決めたマシューはアレックスの部屋の扉をノックしてひとりで中へ入ったのである。


 部屋の中ではアレックスが相変わらず豪華な椅子にどっかりと座っていたのである。見える景色に大した違いは無い。強いて違いを言うのであればアレックスが頬杖を右腕ではなく左腕でしていることくらいであろうか。


「……ビアンカはどうした?」


「ビアンカは騎士隊で緊急の案件が発生したとかでどこかへ去りました。場所も言わずに去ったのでどこにいるのかさっぱり分かりません」


「……なるほど、私の警護とは別の案件が騎士隊にはあるのだな。……帰ってきていないのであれば仕方ない。マシューだけで私の警護をしてもらおう」


 アレックスは特にビアンカを咎めはしないようである。むしろアレックスはこうした状況に慣れているような雰囲気を出している。それだけ騎士隊は忙しいということなのだろう。マシューは納得したような様子で何度か頷いていた。


 ふとマシューは思い出したかのように周囲を見渡し始めた。そしてすぐに目的のものを見つけたのである。マシューが探していたのは窓である。監視をしていた時にその存在に気付いたのだ。あちら側からこちらのことが見えるのであれば当然こちら側からあちら側もよく見える。


マシューはその窓から今監視の準備を始めているエレナらしき人の姿を確認した。マシューはずっとアクィラとの境界を監視していたため監視の場所からの景色はあまり見れなかったが、今ならばよく見ることが出来る。小さな窓ではあったがこの窓の効果は絶大であった。


「……その窓はウォルトンが開けたらどうかと言うので開けたものだ。なんでも部屋の空気が悪い故に換気をするためだとか」


「換気……? 監視のためでは無いんですか?」


「あの時ウォルトンは確かに換気のためと言っていた。監視のためとはどう言う意味だ?」


「この窓から監視の場所が見えるのですよ。この部屋はかなり明るいですから向こう側からなら恐らくかなり鮮明に部屋を見ることが出来るはずですよ」


「……やはり換気のためだけでは無かったか。換気ならそこの通気ダクトもあるからあまり必要性を感じなかったが、なるほどそう言う側面があったとはな」


「通気ダクト?」


「……見えるかな。天井から壁沿いに沿って付けられているこの黒い筒のようなものがそうだ。これが外と繋がっており換気の役目も果たしているんだよ」


 そう言ってアレックスは窓から少し離れた位置に備え付けられている黒い筒のようなものを指で示した。なるほど確かにそれは通気ダクトのように見える。つまり今この部屋は通気ダクトと窓を開けることで換気を進めていると言う訳である。


「……通気ダクトということはこれは外のどこかへ繋がっていると言う意味です?」


「あぁ、そうなるな。……ところで今あんたは監視の場所からこの場所がよく見えると言ったな?」


「……そうですね」


「ならひとまず今日は開けたままにしておこう。もし何者かに監視されているなら無闇に刺激をする必要は無いからな」


 何者かに監視されているなら。アレックスはそう言ったがこの場合の何者かが表すものはひとつしか無い。それはもちろんこの窓を開けると提案した騎士隊の副隊長ウォルトンである。彼が何を思ってこの提案をしたかまでは分からないが何か思惑があるのだろう。マシューはレイモンドの言葉を思い出しながら真剣な表情で窓の近くに座ったのである。


 こうしてマシューだけで行われる夜の長い警護が始まったのである。マシューが真剣な表情で自分の役割を果たそうとしているその頃、監視の役割を担っているエルヴィスもまた自分の役割を果たすために監視の目を光らせていたのだ。


 最初に行われた短い話し合いの結果エレナがアレックスの部屋の監視を、エルヴィスがアクィラとの境界の監視を担当することになったのである。マシューは少しこの場所の高さに不安を感じていたようであったがエルヴィスは特に気にしていない。大きく身を乗り出しながらエルヴィスは真剣に監視をしていた。


 そして監視を始めて約1時間が経ったその時エルヴィスは見えている光景に首を傾げた。なんだか騒がしい場所があるのである。エルヴィスが周囲を見渡すと眠そうにあくびをしている騎士隊と目が合った。そこでエルヴィスはその騎士隊を手招きで呼んだ。もちろん状況を確かめてもらうためである。


「……何かありましたか?」


「ちょっと聞きたいんだが、あそこには何があるんだ? 何か特別なものでも?」


 そう言ってエルヴィスは視界に映るルシャブランのとある一点を指で示した。それだけで騎士隊はエルヴィスがどこのことを聞いているのか分かった。エルヴィスは知らない場所であるが騎士隊にとってはよく知る場所である。呼ばれた騎士隊もその場所で警護をした経験があるのだ。


「あぁ、あそこですか。あの場所には隊長のお祖母様が住んでおられるんですよ。隊長は忙しい故に騎士隊で警護をしているんです」


「……警護? それにしては騒がしそうに見えるが」


「…………確かにそうですね。……何か緊急事態でもあったのだろうか」



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