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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第15話 伝言は数多く

 読んでくださりありがとうございます。ビアンカは中々戻って来ません。伝言にしては長すぎる気もしますが……。


 エルヴィスはあの時いなかったがエレナもしくはアレックスから同じ話を聞いているだろう。今アレックスの警護はエレナとエルヴィスだけであり、秘密の話をするにはぴったりである。恐らくエルヴィスは驚いたに違いない。何せあの場にいた3人全員が驚いたのだからきっとエルヴィスもそうだろう。


 最初に聞いた時はまさかと思ったが今なら断言出来る。アレックスがした話はほぼ間違いなく事実である。それ故に与えられた役割はしっかりこなさねばならない。マシューが思うに一番難しい役割はレイモンドの役割である。


 だが彼ならきっとやってくれるだろう。マシューの役割はレイモンドが役割を果たしていることを信頼しながら自分の役割を果たすこと。つまりはいつも通りである。


 マシューがそう心に言い聞かせたその時仮眠室の扉が開いた。もちろん入って来たのはビアンカである。入って来たビアンカの顔色は少し青くなっているように思われた。いったいどうしたのだろうか。


「……ふぅ。なんとか仮眠の時間が作れそうだ」


「交代の時間までまた仮眠するのかい?」


「私はそうさせてもらう。……そなたはどうするんだい?」


「……俺は仮眠までは良いかな。ベッドの上でのんびりするとするよ」


「そうか。それじゃあ私だけ失礼するとするよ」


 そう言うとビアンカは猫用のベッドに潜り込みすぐに寝始めたのである。少し顔色が青かったのは睡眠不足だったからだろうか。それにしてはそれ以前に何の予兆も無かったのだが。


 ……恐らく直接ビアンカに聞いても実情を教えてはくれないだろう。知り合って間もないがビアンカは決して自分の弱味を見せない猫であることは分かっていた。ひとつだけマシューには思い至ることがあるがそれは本人から聞いたものでは無く信憑性がやや低い。


 だがそれも時間が経てばすべて分かるようになるだろう。そのためにも自分は自分の役割をこなさなければならない。マシューはそう自分に言い聞かせながらベッドの上に座りそっと目を閉じた。交代の時間にはまだあと1時間ほどある。仮眠室は物音ひとつしない静寂に包まれていた。


 時が経ちそろそろ交代の時間が迫って来ていたためマシューは目を開け交代の準備をしようとベッドから降りたのである。そしてほぼ同じタイミングでビアンカが仮眠から目を覚ましたのだ。仮眠を取る前に比べると顔色は戻って来ている。先程はただ疲れていただけなのだろうか。


「……そろそろ交代だな。私たちの次の役割は監視。場所は決まっているから早速向かおうか」


 マシューはビアンカのその声に頷きその場でひとつ伸びをして仮眠室を出たのである。ビアンカは仮眠室を出るとすぐに右折しまっすぐ進んだ先の階段を上がり始めた。どうやら監視のための場所はルシャブラン城の中でも高いところであるようだ。


 途中マシューたちはレイモンドとウォルトンのペアとすれ違った。どちらも特に疲れた様子は見られない。恐らく何事も無かったのだろう。今後のことを考えればアクィラは動きを見せない方がありがたいのである。そのためマシューは2人のその姿に安心していた。


「さ、着いたよ。ここはルシャブラン城の中で最も高い場所さ。ここからならルシャブランを一望出来る」


 ビアンカが案内してくれたこの場所はルシャブラン城の最上階にあたる場所で手すりから身を乗り出さずとも猫の里ルシャブランが隅々までよく見えるのだ。そしてもちろんここからアクィラとの境界も見える。なるほど、確かにここは監視するには最適でありそうだ。


 やや落ち着きなくマシューは周囲を見渡し始めた。それは何かを探している訳ではなく思ったよりこの場所が高いので気を紛らしているだけである。だがそれがよく分からないビアンカは心配そうにマシューの顔をのぞき込んでいた。


「……どうしたんだい?」


「……思ったより高いんだなと思ってさ」


「それはそうだろう。高くなければ監視なんて出来やしないさ」


「それはそうなんだけどね。……あれ? あの場所は……」


 忙しなく周囲を見渡していたマシューはあることに気が付きようやく落ち着いたのだ。上手く気が紛れたとも言える。そんなマシューが気が付いたのはここからやや眩しく映るとある部屋である。その部屋には小さな窓のようなものがありそこから沈みゆく夕日に照らされて光が反射していた。


「おや、気付いたか。あの部屋は王子の部屋だよ」


「やっぱりそうなのか。……でもあんな小さな窓なんてあったかな」


「換気が必要だからね。貴金属に紛れて見えにくいが内側から開ける窓があったはずだよ」


 確かにビアンカの言う通りである。換気するシステムの無い部屋は窒息の可能性が出てしまう。そのため広さにもよるが扉を含めて数カ所換気出来る場所が大抵の部屋に備えられているものである。


 次の交代でマシューとビアンカは王子の部屋の警護をすることになるため忘れていなければその時にマシューは窓の位置を確認出来る。何となくマシューは窓があることを覚えておこうと思ったのである。


「……ここから部屋が見えるならここも監視した方がいいんじゃないか?」


「確かにそうだね。でもアクィラとの境界を監視しない訳にはいかない。……せっかく二手に分かれることが出来るんだ。時間で交代するとして役割を分担するのはどうだろうか」


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