表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
138/234

第12話 役割を分担しようか

 読んでくださりありがとうございます。ペアの組み合わせにマシューはやや不安を感じているようです。


「今言ったペアで一日の3分の1の時間警護してもらうことになる。また警護だけでなくアクィラが真正面から攻めてくることも警戒せねばならん。待機しているものはそちらにも気を配ってくれたまえ。……こちらの神経を削ぐためにアクィラが何日経っても動きを見せないことも充分考えられる。故に待機している間休息を取ることを許可する。適宜必要な分だけ休息を取ってくれ」


 マシューたちはアレックスのこの言葉に不安を感じていた。もちろん休息が取れるのは嬉しいことである。だがそれと同時に何日経っても動きを見せない可能性があることは警護がどれだけ続くか分からないという意味でありマシューたちに不安を感じさせるのだ。


 6人で軽く話し合った結果休息は確実に確保したいと思う人が多く、その結果ペアでの行動を警護、監視、休息に三分割することが決定したのである。そして同時に行動の分担もまた決定したのだ。まず最初に警護をするのはエルヴィスとエレナのペア、そして次に警護をするのはレイモンドとウォルトンのペア、そしてその次がマシューとビアンカのペアである。


「……上手く役割分担が決まったようだな。それではたった今から警護を始めてもらおう。各々役割を果たしてくれたまえ」


 アレックスのその言葉を合図にエルヴィスとエレナを残して4人は王子の部屋を後にした。アクィラの動きを監視するのに適した場所がどうやらあるらしくレイモンドとウォルトンはすぐにその場所へ向かって去って行った。つまり今王子の部屋の前にはマシューとビアンカだけである。


マシューとビアンカの最初の役割は休息。警護をした訳でも監視をした訳でも無いためマシューは休息と言っても何をして良いか中々思いつかなかった。


「……休息か。さて、何をしようか」


「今は疲れてなくても仮眠を取った方が良い。警護が始まれば終わるまで眠ることは一切許されないからな。……良ければ仮眠室を案内しようか?」


「仮眠室? そんなものがあるのか?」


「もちろん。案内しよう」


 そう言ってビアンカはどこかへ歩き始めた。その後ろ姿についていきながらマシューは仮眠室がどんなものかを想像していた。ルシャブランは動物の国猫の里である。ルシャブラン城はそんなルシャブランにある城である。……であればそこに設計された仮眠室は猫用と考えて間違いなさそうである。


 そんなことを考えていた故にマシューはビアンカが開けた扉の奥を見て驚いたのだ。なにせ目の前には帝都で泊まった緋熊亭のベッドに少し劣るくらいの品質の良いベッドが何脚か置かれていたからである。


「……なぜベッドが?」


「もちろんこの里へやって来る勇者候補のためだ。ルシャブラン城には在籍している猫以外に勇者候補である人間がやって来る。下手すれば何年も来ない存在ではあるが、いざその時を迎えた時のためにこうしていつも仮眠室にはベッドが置かれているのさ」 


「……へぇ。それはすごいな」


「ここには他にも勇者候補が仮眠をするためのアイテムが多数用意されている。……例えばこれは眠りやすくなる香水だ。これを水で薄めて使うことで短時間で質の良い仮眠を取ることが出来る。……試してみるか?」


 いつの間に取り出したのかビアンカは薬品らしきものが入っている瓶を尻尾で器用に持っていた。恐らく瓶の中のものがビアンカの言う香水なのだろう。


「……なるほど、それはすごいアイテムだな。……ちなみにそれってビアンカにも効果があるのか?」


「残念ながら無い。さっきも言ったがこれはあくまでも勇者候補が使うためのアイテムだ。私たち猫が使うようには出来ていないのさ。……それで試してみるかい?」


「……そこまで言うなら試してみようかな。時間はそうだな。……1時間半かな」


「1時間半だな。では私もせっかくだからそれくらいの仮眠を取るとしよう。……この香水はかなりの即効性がある。私が最適の濃さにして使っておくからそなたは何もせずベッドに入っていると良い」


 そう言うとビアンカはこれまた尻尾を器用に使って瓶の中の香水を水で薄め始めた。その気配を感じながらマシューはビアンカの勧めに従ってベッドに入り目を閉じた。やがてマシューは心地よい香りを鼻に感じた。良い匂いだとマシューの脳が認識したその瞬間マシューは一瞬にして眠りについた。


「……! なるほどこいつはすごいな」


 マシューが眠りについてからきっかり1時間半後、仮眠室のベッドでマシューは目を覚ましていた。最適の濃さにするというビアンカの言葉は全く嘘では無かったようだ。そしてマシューから見て奥から2番目の猫用のベッドがもぞもぞと動いていた。どうやらマシューの声でビアンカが起きて来たようである。


「……やあ、よく眠れたかい?」


「申し訳ない。……大きな声を出してしまったな。君が寝ていることをもう少し考えれば良かったよ」


「ふふ……。あの香水を使って初めて仮眠を取った人は大抵大きな声を出すものだよ。その声で起きようと思っていたから何も気にする必要は無いさ。……ところでなぜ仮眠は1時間半だったんだ? まだ役割の交代には4時間程時間があるが……」


 ビアンカは不思議そうにそう言った。確かにマシューが仮眠から目覚めたのは昼前の時間でありペアの役割の交代時間にはまだ時間が山ほど残っている。……と言ってもこれは役割のことだけを考えればの話である。単純な話マシューはただお昼ご飯を食べたかったのだ。


「もちろんご飯を食べるためだよ。警護や監視の時間は多分満足に食事は出来ないだろうからお昼ご飯はしっかり食べないとね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ