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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第11話 副隊長はラグドールではない

 読んでくださりありがとうございます。なぜエルヴィスは慌てていたのでしょうか。


「……よく勘違いされますが、私はラグドールではなくラガマフィンです。お間違えなきよう」


 副隊長はそう言ってマシューを見上げた。その表情からは呆れと怒りの感情が少し漏れていた。どうやら間違えられるのは嫌なようだ。猫自体あまり見たことの無いマシューにとってラグドールとラガマフィンの違いは分からなかったが本人が違うと言えば違うのだろう。


「……失礼しました。副隊長はラガマフィンなんですね」


「ええ、そうですとも。……見たところあなたが勇者候補一行で一番優秀そうだ。ならばあなたがマシューですね?」


「……そうですけど。何で名前を知っているんです?」


「ここへ来るまでにエルヴィスに色々聞いていたんですよ。あなたがマシューならば後ろのあなたがレイモンドでさらに後ろにいるのがエレナですね。私は騎士隊の副隊長ウォルトン。よろしくどうぞ」


 ウォルトンと名乗った副隊長はそう言ってにっこりと笑っていた。その表情からは余裕のようなものが見て取れる。それは自分が優秀であると確信している顔であり、実際相当優秀なのだろう。でなければ副隊長の地位にはいないはずだ。


「よし、それじゃあ副隊長も来たことだから本題に移ろう。……皆も知っていると思うがここにいるマシューは勇者候補である。勇者候補がルシャブランに来たということはそれすなわちアクィラとの抗争の激化を意味する」


「アクィラは勇者候補の手に象徴が渡ることを妨げようとしてますからね。激化するのは間違いないでしょうな」


 当然だと言いたげにウォルトンはそう言った。マシューたちはアクィラがどれほど敵対している勢力かは分かっていない。だが《自由》の象徴を守るルシャブランと敵対している以上勇者候補の手に象徴が渡ることを妨げようとしているというのは想像の範囲内である。


 そこまで聞いてマシューはふと疑問に思ったことがあった。考えても答えが出そうに無いためマシューはそれを素直に口に出した。


「……アクィラは象徴が勇者候補の手に渡るのを警戒しているなら、今すぐに俺が手に入れれば抗争も起こらないのでは?」


「ふむ、抗争自体の意義を無くしてしまうという訳だな。だが、それは悪手だ」


 マシューとしては抗争を未然に防ぐことが出来る良い案だと思ったのだがすぐにアレックスによって却下されてしまった。アレックスはこの案を悪手だと言い切るあたり既にこの案を考えた後なのだろう。


「……なぜです?」


「アクィラからすればいつ勇者候補の手に渡ったか判別出来ないからだ。そもそも奴らは勇者候補が誰かすら分かっていない。だからそれで抗争が止まることは無い。むしろ象徴が所定の場所から動くことになる故に止め時が分からず抗争が泥沼化してしまうだろう。それを避けるためにもアクィラにも勇者候補が誰なのかを知ってもらう必要がある。だからこそマシューたちに警護を頼んでいるのさ。……分かってもらえたかな?」


 マシューはアレックスのその分かりやすい答えに納得の表情を浮かべた。アレックスはなぜと聞いたマシューに対して機嫌を損ねる訳でもなくよく分かるように説明してくれたのだ。その姿は聡明な姿に見え最初の第一印象とは打って変わって見える。尊大な態度のアレックスを警護するモチベーションはあまり無かったが今なら高いモチベーションを保てそうだ。もしこれが意図的だとすればアレックスは相当優秀と言えよう。


「よし、話を戻そう。勇者候補がルシャブランにいると知ったアクィラがどう動くかは予想出来ない。真正面から攻めてくることもあるだろうし、こっそり私の命を狙ってくる可能性もある。そこで普段は騎士隊の精鋭たちが1人ずつ分担して警護してくれているが、それを手厚くしつつアクィラが攻めてくることに備えたい」


「なるほど、具体的にどうするのです?」


「私の警護の担当を6名に絞ろうと思う。具体的に言えばここにいる6名で分担して警護をしてもらいたい。1人で警護するのは恐らく難しい故に二人一組で警護に当たってもらう。その際のペアは私が先に決めておいた」


 どうやらペアで警護を行うようだ。順当に考えるならば作るペアはマシューとレイモンド、エルヴィスとエレナ、ビアンカとウォルトンになるだろう。しかしアレックスが決めたペアは異なっていたのだ。エルヴィスは予想通りエレナとペアであったがマシューのペアはレイモンドでは無かったのである。


「よろしくお願いします」


 少し困惑しているマシューに向かってビアンカが丁寧にそう言った。そうマシューのペアはレイモンドではなくビアンカなのである。騎士隊を率いるビアンカなら実力は充分でありそこに何の憂いも無い。むしろ心配なのはレイモンドの方である。


 レイモンドの方を見やるとレイモンドはウォルトンと何かを話していた。その後ろ姿はややぎこちない。やはりレイモンドも自分のペアはマシューだと思い込んでいたようだ。ウォルトンがどれほどの実力を持っているかは分からない。少しばかりの不安をマシューは感じていた。



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