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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第8話 王が語る古い歴史

 読んでくださりありがとうございます。オースティンはマシューたちに古い歴史を教えてくれるようです。


 マシューはオースティンのその語りをじっと聞いていた。マシューが知っている最も古い歴史は初代勇者についての話である。それはエルヴィスから聞いたものであり、確か約300年前の話である。


「そうして誕生した初代魔王はそこから700年に渡って世界を支配したのじゃ。それに待ったをかけたのが初代勇者じゃ。……そこから先の話ならそなたたちも知っておるやもしれんの」


「……初代勇者の伝説なら帝都にも記録がありました」


「やはりか。ならばその辺りの話は省くとしよう。……初代勇者が初代魔王を撃ち破るまでの約700年でこの世界は大きく変わってしまったのじゃ。初代魔王に従う動物たちはその褒章として魔力が授けられた。そうして魔力を授けられた動物はその身に魔力を宿しモンスターと呼ばれるようになった」


「……ちょっと待ってください! ……その話が本当なら人間は初代魔王に従っていたと言うことになりませんか⁉︎」


 エルヴィスは思わずそう叫んでいた。その時マシューは眉をひそめ険しい表情をしておりレイモンドとエレナは首を傾げていた。エルヴィスが一番反応が早かっただけで他の3人も遅かれ早かれ同じようなことを叫んでいたに違いない。


「その通りじゃ。人間はかつて初代魔王に従うモンスターの仲間だったのじゃ。……マシュー、先程そなたは人間はモンスターであるかと私に問うたな? これがその答えじゃ。そなたの言う通りかつて人間は初代魔王に従うモンスターの仲間だったのじゃよ」


 オースティンは静かにそう断言した。話をじっと聞いている4人はそれぞれで困惑していた。それもそのはずである。彼らにとってモンスターは自分たちを襲撃する敵なのである。そこに仲間意識など微塵も無い。


 そしてかつて仲間であったのならば初代勇者の行動は裏切りにあたることになる。それはもちろん従っているはずの初代魔王を撃ち破った故である。だが現代に生きるマシューたちは初代勇者を伝説として伝承して来た歴史を持つ。そのことが上手く説明出来ず4人はただただ困惑していたのだ。


「……もっとも地位は相当低かったようじゃがな。この国に残る記録によれば人間はそれまでまるで奴隷のような扱いを受けて来たとされている。初代勇者はそうした扱いに対する反骨心から生まれたものなのやもしれんな。……今となってはもう分からないことじゃがな」


「……」


 4人は何も言えずにいた。帝都よりも古い歴史を知ることは時に知りたく無いことも知ることになる。初代勇者の裏切りの背景が4人にとってのそれに当たる。人間が奴隷のような扱いを受けていたことやそれに反骨心を感じていたことを知ったとしても中々それは割り切れるものではなかった。そんな4人を見ながらオースティンはにっこりと笑ってさらに話を続けた。


「さて、ここまでが前提の話じゃ。動機はどうあれ初代勇者は初代魔王からの支配から動物を解放してくれた偉大な存在であることには変わりはない。あの時確かに我々動物は姿さえ見たことのない初代勇者に深く感謝したのじゃ。そしてその深い感謝を形として示すために我々動物は初代勇者にとある場所の警護をすることを願い出た。そしてそれは快く受け入れられ今の動物の里に至る訳じゃ」


「……となる場所の警護?」


「そうとも。ここ動物の国猫の里ルシャブランではとある場所を守っておる。とあるものと言っても差し支えないの。我々が昔から今に至るまで守ってきたもの、それは初代勇者が使っていたとされる盾じゃ。《自由》の象徴であるラグドールの盾はルシャブランによって守られておるのじゃよ」


「象徴⁉︎ 《自由》の象徴はルシャブランにあるんですか⁉︎」


 マシューは思わずそう叫んでいた。マシューたちがこの場所を訪れたのは帝都よりも古い文献を探すためであり、象徴を求めて来た訳ではない。つまりマシューたちは文献を求めるために動物を追うと決め、それで見かけたビアンカを追うことで象徴のある場所まで来たことになるのだ。先程までの困惑が吹っ飛んでしまうほどの衝撃にマシューの表情はかなり複雑であった。


「左様。そしてそれを守っている詳しい場所は今この国では私とアレックスしか知らないのだよ。何せ守っているものが守っているものじゃからの」


「詳しい場所は騎士隊を率いる私ですら知らされていません。……まあ大体の見当はついていますが」


 そう言うビアンカは複雑な表情である。騎士隊を率いているビアンカはその役職からルシャブランの中でどの場所が手厚く警護されているか把握している。それ故に詳しい場所を知らされなくとも大体の見当はつくと言う訳だ。


 だからと言って知らされないのは信頼されていないような気がしてしまうのだ。そして今オースティンは王としてビアンカが連れて来た勇者候補を王子であるアレックスの警護にしようと言うのだ。オースティンが最初にマシューたちに警護を頼んだ際あのような反応を示したのはこういう理由があるのだろう。


「さて、私はそなたに王子の警護を頼みたいと言ったな?」


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