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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第5話 ルシャブラン

 読んでくださりありがとうございます。四人はラグドールを追いかけるようです。


 4人は突然現れたラグドールの後を追いかけることに決めた。それに気付いたのかラグドールはゆっくりとどこかへ去って行ったのである。急いで去った場合見失ってしまうのだが、ラグドールはゆっくり去って行ったために4人はギリギリ見失うことなく追うことが出来た。


 これは幸運とも取れるし誘い込まれているとも取れる。やや緊張を感じつつ4人は時々手近な木の枝を折りながらラグドールの後を追う。相変わらずラグドールはゆっくり、ゆっくりとどこかへ向かっていた。


 追い始めて数分が経っただろうか、やがて開けた場所へたどり着いた。目の前に広がっているのは古い歴史を感じさせる町である。そしてそこには人はひとりもいない。目に入るのはその町で生き生きと生活を送る動物たちの姿である。マシューたちはその光景に思わず感嘆の声を漏らした。


「そなたたち人間には見慣れぬ景色であろう?」


 どこからかそんな声が聞こえてきた。辺りを見渡すと先程まで4人が追っていたはずのラグドールがこちらをじっと見ていた。……あの声はこの猫が出したのだろうか。


「……そもそも声を出す動物の方が見慣れなかったかな?」


 再び声が聞こえてきた。その声はやはり目の前の猫から聞こえてくるようである。


「いや、見慣れない訳じゃないよ。違う可能性を捨てきれなかっただけさ」


「ふむ、目の前に起こっていることに疑いを持つのは賢者の資質があるとも言えるか。……最近の勇者候補はかなり優秀なようだ」


「……最近の勇者候補?」


 マシューは思わず聞き返していた。目の前の猫がどう言う存在なのかは分からないがどうやらマシューが勇者候補であることは分かっているようだ。


 偶然たどり着くことが出来たこの場所だが、もしこの場所がアイザックの言う場所ならば帝都よりも古い情報が手に入るはずである。ならば目の前のこの猫が勇者について詳しく知っていてもおかしくは無い。


「ここは動物の国、猫の里ルシャブラン。我々ラグドールが長年統治している。……もっともそれももう長くないかもしれないがな」


「長くない……? いや、それよりも最近の勇者候補とは? 以前の勇者候補を知っているのか?」


「……今その質問には答えない。答えが知りたければついて来るが良い」


 そう言うとどこかへ向かって歩き始めた。4人はそれぞれ困惑の表情を浮かべている。だがついて来いと言われている以上ついて行く他ないだろう。ゆっくりと4人も後に続いて歩き始めた。そしてたどり着いたのは大きな城の前である。この場所が目的地なのだろうか。


「そなたたちに会わせたい猫がいる」


「会わせたい猫?」


「そうだ。勇者候補、そしてその一行であるそなたたちには是非会ってもらいたいのだ。……そうすればきっと心を入れ替えてくださるはずだ」


 最後に何を言ったのかマシューにはところどころしか聞き取れなかった。だがその内容も気になるのだがそれよりも気になることが多すぎるのだ。


「……なぜ俺たちが勇者候補とその一行だと? あなたは何者だ?」


「……ふむ、名乗るのはまだだったな。私の名前はビアンカ。今目の前にあるルシャブランの城で騎士隊を率いている。さて、ここまでついて来てくれたんだ。質問に答えないといけないな。……そこの先頭にいるそなた。そなたが勇者候補なのだろう?」


 ようやく名乗ったこの猫はビアンカと言い、この場所で騎士隊を率いる猫のようだ。そしてそのビアンカはマシューをまっすぐ見つめて勇者候補だと言ったのである。確かにマシューは勇者候補で間違いないのだがビアンカがなぜそう思ったのか。その理由はまだ分からないのだ。


「……なぜそう思った?」


「匂いさ。……私はそなたたち人間よりも遥かに鼻が利いてね。……先頭にいるそなたの収納袋から数多くの象徴の匂いがした。それほどの数を集められるものはかなり優秀な勇者候補だと見て間違いない」


「……数まで分かるのか?」


「正確には分からない。……だが匂いの強さから半分ほどは集まっているのではないか? どの象徴を手に入れているかは分からないが匂いから考えると《勇気》の象徴と《幸運》の象徴はあるはずだ。……違うかい?」


 目の前のビアンカはまっすぐにマシューを見ている。そしてマシューはビアンカの言う通り《勇気》の象徴の獅子頭の兜と《幸運》の象徴の蹄鉄の鎧を収納袋に入れている。どうやらビアンカは本当にそれを確信しているようだ。


「……なるほど、鼻が利くのは本当か。……先程言っていたこのく……いや、何でもない」


 先程のやり取りでマシューはビアンカが優秀であることを確信したのである。それ故にビアンカが言ったこの国が長くないと言う言葉は不穏な響きを放っていた。そのことを詳しく聞こうとしてマシューは思い留まった。


 目の前にはルシャブラン城。ビアンカはその城で騎士隊を率いていると言う。ならばそんな場所を目の前にしてビアンカが悪く言っていたと言う訳にはいかない。中途半端に言い出して言い淀んだマシューを見てビアンカはにっこりと微笑んだ。どうやらマシューが何を言おうとしているか分かったらしい。やはり相当優秀であるようだ。


「ついて来れば分かる。案内しよう」


 そう言うとビアンカはルシャブラン城の中へ入って行った。門衛である猫に会釈をしながらマシューたちもその後に続いた。やや入り組んだ構造の道を進み豪華な扉の前にたどり着いてビアンカはその足を止めた。会わせたい猫と言うのはこの先にいるようだ。


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