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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第1章 風吹き荒れる平原の中で
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第8話 ユニコーンの騎士

 読んでくださりありがとうございます。とうとう冒険者ギルドに到着しました。


「さて、この大きな建物がそうだよ」


「ここが冒険者ギルド……。門から一直線なら迷いようが無いか」


「あぁ、なるほど。道を覚えようとしていたのか。尾けられている訳でも無いのに何でキョロキョロしてるのか不思議だったよ」


 ニコラはさらっと物騒なことを言い出した。そんなこと欠片も考えてなかった2人は急に不安になってか大袈裟に後ろを振り返ったりし始めた。その様子がかなり可笑しく見えたのだろう。ニコラは腹を抱えて笑っていた。


「なんだよ、そんなに警戒すること無いだろ。尾けられてないって言ってるじゃないか」


「……尾行されたことなんて無いけど物騒じゃないか。もしかすると急に誰かに襲われるかもしれないってことなんだろう? 心配したくもなるよ」


「ははっ。それは悪いことをしたな、ごめんよ。君たちがよっぽど悪いことでもしない限り急に襲われることは無いよ。……あ、でも敬語を使ってるような冒険者は狙われちゃうかもな」


 そう言うとニコラはマシューをちらっと見た。最早マシューは固まってしまっている。そんなマシューを横目に自分も使わないようにしようと強く心に誓ったレイモンドであった。


――

冒険者ギルド

――


 建物の中は独特の緊張感で満ちていた。腕っぷしに自信があるような人たちが全員今入って来たマシューたちを値踏みしているのではと思うと怯えてしまいそうである。だがニコラは全くそれを気にして無さそうである。となれば残る2人も堂々としていなければいけないだろう。2人は懸命に胸を張ってニコラについて歩いた。


 目の前に受付らしき場所が見える。恐らくここで冒険者登録が出来るのだろう。ならばここにまずは向かうはずだ。そう予想したマシューだったが、ニコラは受付らしき場所とは全く異なる場所へ向きを変えた。


 どうやら誰か知り合いを見つけたらしい。ニコラが歩く先へ視線を向けたマシューは思わず目を背けてしまった。するとどうしたことだろうか。なぜか隣のレイモンドと目が合ったのだ。どうやらレイモンドもマシューと同じことをしたようだ。


 2人とも苦笑いを浮かべながら恐る恐るニコラの方へ顔を向けた。穏やかに笑ってニコラがこちらへ近づいて来る。隣には騎士らしき人物が同じく穏やかに笑っていた。その男は白と銀の鎧を身に纏っていたのだ。


「なぁ、君たちが探している騎士はこんな鎧を着ていたんだろう? ……なんでそんな無表情なんだい? あれ? もしかして違ったのか?」


「いや、その、……あの。……ええと、その人はニコラの知り合い……なのか?」


 レイモンドは戸惑いを懸命に隠しながら言葉を選んで口に出していた。目の前にいる男の着ている鎧は間違いなくあの日見た騎士たちが着ていたものと一致する。だがそれだからと言って面と向かって話をしたい訳では無いのだ。


 あの時ニコラに隠すことなく全てを話したならばこんな事態にはならなかっただろう。だがそんな後悔はもう遅い。白と銀の鎧を着た男が既に目の前にいるのだから。


「あぁ、そうだよ。紹介しよう、僕の幼馴染であり神聖の騎士団の若き副団長アンガスだよ」


「アンガスだ、よろしくな。君たちのことはさっき軽くニコラに聞いたよ。ええと、君がマシューで、君がレイモンドだな」


「……いや、逆だな。さっき言っただろ。こっちの盾を持ってるのがレイモンドでこっちの剣を持ってる方がマシューだよ」


 アンガスはものすごく真面目な表情で2人の名前を間違えたのだ。そしてすぐにそれはニコラによって訂正されたのだ。そしてその後誰も言葉を発そうとしなかったのでしばらく何とも言えない空気が流れていた。


「ふむ、わざと間違えてみたんだがどうやらもっと困らせてしまったみたいだな。どうも2人とも表情が固かったんでな、何とかやわらげてやろうと思ったんだが……、失敗だな。まあ、良いか。なんでも僕が今着てる鎧に興味があるとか。いや、違うか。ええと、……以前この鎧を着た騎士に会ったことがあるんだったかな? ニコラどっちだったっけ?」


 真面目な表情のままアンガスはニコラへ振り返った。話したと言ってもかなり短い時間故にそれほど詳しくは聞いていないのだろう。それにニコラに話した内容もそれほど込み入った内容では無い。マシューは一旦流れに身を任せることに決めた。


「以前その鎧を着た人に会ったで合ってるかと。その話をさっき俺がニコラにしたんで」


「ふむ、なるほどね。……あいにく僕は君たちの顔に見覚えは全く無い。だから多分会った騎士ってのは僕ではないね」


 どうやらアンガスはマシューたちに見覚えが無いようだ。もっともマシューたちはあの日遠目で騎士たちを見ただけに過ぎず顔に見覚えがあるはずも無いのだが。


「残念だな。白と銀の鎧を着ている騎士で印象に残ってるならアンガスの可能性があるって思ったんだけどなぁ。まあ、騎士は一個の騎士団に限ったとしても百人くらいいるもんな。鎧が同じでも確率的には低いか。アンガス、呼び止めて悪かったよ」


「構わんよ」


 そう言ってアンガスは軽く手を上げてその場を去ろうとした。が、何か引っかかったのだろうか、マシューの方を、いやマシューの持つ剣をじっと見ていた。


「……マシュー、ちょっと君の持ってる剣を見せてもらってもいいか?」


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