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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第4章 隠された自由を求めて
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第1話 知らないことが多すぎる

 読んでくださりありがとうございます。これより第4章の始まりです。


 マシューは目を開けて布団から出るとすぐに窓へと歩き勢いよくカーテンを開けた。心地の良い朝日がいっぱいに部屋へ差し込んで来ている。振り返ると既に目が覚めていたようでエルヴィスは立ち上がり身支度を整えており、レイモンドは眠そうに目をこすっていたのだ。


「……まさかここまで寝相が悪いとは思わなかったぜ。布団はあっちのはずだよな」


「僕も思ってなかったよ。まさか僕の布団が途中で無くなることになるとはね」


 レイモンドとエルヴィスはそう言いながらため息をついていた。視線の先にはエレナが眠っていた。何がどうなったらそうなるのかは分からないが、エレナは現在3つの布団に気持ちよさそうに寝転がっている。


 マシューたち4人はアイザックの家に泊まらせてもらったのである。泊まらせてもらうだけでもありがたいため部屋を分けるべきとはとても言えなかった。それ故に4人とも同じ部屋で眠りについたのである。


 アイザックが用意してくれた布団は色々なところから取ってきたようで大きさがバラバラであった。マシュー、レイモンド、エルヴィスの中で最も寝相が悪いと自負していたのはレイモンドである。そのためレイモンドには一番大きい布団を使ってもらうことにしたのだ。


 その結果左からマシュー、レイモンド、エルヴィス、エレナの順に布団を使うことにしたのである。そしてその結果今エレナはレイモンドとエルヴィスの布団も同時に使っている。本来一番端にいるはずのエレナがこんなところで寝ているのはエレナの寝相のせいに他ならない。


「……とりあえず起こそうか。エルヴィス、任せてもいいかい?」


 エルヴィスは気持ち良さそうに眠っているエレナを軽く揺さぶった。それだけでエレナは目を開けたのである。自分が寝ている場所に気が付くとエレナは少し首を傾げていた。


「……あれ? 私の布団これだったっけ?」


「エレナ、君の布団はあれだよ。昨日の夜決めただろう?」


「……ん? それじゃあなんで私はここで寝ていたんだ?」


 どうやら寝相が悪い自覚は無いようである。そういえば帝都にあるエレナの家で見たベッドは相当大きかった覚えがある。一番大きな布団を使うのはエレナの方だった。今後いつ使うか分からない知恵を手に入れたマシューはすぐに気持ちを切り替えて口を開いた。


「さて、修羅の国での目的は全部達成したことだし、帝都へ早く帰ろう」


「……? 確かに目的は達成したけど、帝都に帰るのに急ぐ必要は何故なんだい?」


 エルヴィスは不思議そうに首を傾げた。マシューが帝都へ帰りたがっているのにはとある理由がある。それはマシューが象徴について知らなすぎた故なのだ。


 昨日試練を無事に達成し《勇気》の象徴である獅子頭の兜を手に入れたマシューはこのまま象徴を探せば七つとも全て手に入れてしまいそうなほど順調なのである。だがこのまま探し続けるには知識が無さすぎる。それをマシューは痛感したのだ。


「実は昨日の夜アイザックに聞いたのさ。…………」


 全員に向かって説明しながらマシューは象徴についてアイザックに聞いた昨日の夜の会話を思い出していた。


「アイザック、俺に象徴ついて、……それから勇者についても教えてくれませんか」


 夕食を終えたマシューはアイザックの部屋をたずねていた。マシューは昨日試練の祭壇で聞いた勇者候補の話が頭から離れなかったのだ。それ故によく知っているであろうアイザックへ直接聞きに来たという訳である。そんなマシューにアイザックは優しく微笑んで口を開いた。


「象徴について……か、難しい質問じゃの。……象徴とは初代勇者様が魔王討伐の時に着けていた装備と言うのは既に知っておったの。それじゃあその後の話をしてやろう。その装備品を身につけた初代勇者様は魔王を討伐しその場所に帝国を作ったのじゃ。それが今のアーノルド帝国と言う訳じゃな。ここで世界が平和になれば良かったのじゃがそうはいかなかった」


「魔王が力を受け継いで復活したから……」


「ふむ、それも知っておるのか。そう、討伐されたはずの魔王は力を次世代に受け継ぐことに成功しておったのじゃ。このままでは討伐することが出来なくなる。そう考えられた初代勇者様は亡くなられる直前に実の息子に自分の力を込めた装備品を託したのじゃ。その装備品を着けた実の息子は託された力を存分に発揮し二代目勇者となって再び表れた魔王の討伐を目指した。……とされている。そしてその装備品が今象徴として受け継がれておる。……これがどう言うことを表すか、お主に分かるかの?」


「……ええと、つまり象徴には初代勇者の力が込められている?」


「そう言うことじゃの。手に入れたことのあるお主なら分かるのかも知れないが、象徴にはそれを手にすることで因果を変えるほどの力を持つと言われておる。……例えば獅子頭の兜を持っていれば類い稀な勇気を持つことが出来る。と言った感じじゃの」


「……なるほど」


「私が把握している象徴と言えばこんなものじゃの。……あとは勇者についてか。それはつまり初代勇者様や時の勇者様のことと言う訳ではなく、勇者そのものについてと言う意味じゃな?」


 アイザックのその質問にマシューは無言で頷いた。アイザックは少し険しい表情を浮かべていた。気を悪くしていたわけではなく、説明するのが難しい故である。険しい表情で上の方を見つめていたアイザックはやがて口を開いた


「……勇者そのものについてか、それはさらに難しい質問じゃの。私が把握しているのは象徴を追い求めている者が勇者候補と呼ばれていることくらいじゃ。踏み込んだ知識が知りたければ本を読むことじゃの。帝都ならある程度の情報が集まるはずじゃ。……本当なら帝都よりも相応しい場所があるんだが、……まあ、たどり着けないじゃろうな」


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