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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第3章 その兜は勇気をもたらす
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第31話 森の奥へ進め

 読んでくださりありがとうございます。フォレストクロコダイルを何とか討伐出来ましたね。


 マシューがフォレストクロコダイルの口から取り出したのはサンダーバードだったものである。マシューは嵐馬平原で討伐したサンダーバードを使うことでフォレストクロコダイルの口を開けさせ討伐へ持ち込んだのだ。サンダーバード1匹の納品を犠牲にフォレストクロコダイルを討伐出来たのはかなり幸運だったと言えよう。


 討伐したフォレストクロコダイルを収納袋へ仕舞っているとエルヴィスが2人に駆け寄って来た。隣にいるエレナの顔色は大分明るいものになっているように見える。つい先程までの顔とは大違いである。


「エレナももう動けそうだね。良かった良かった」


 マシューは優しく声をかけたつもりだったがエレナはそれを聞いて頭を下げた。どうやらかなり申し訳なく思っていたらしい。


「……ごめんなさい」


「謝る必要は無いよ。フォレストクロコダイルと一番距離が近いエレナがそれほど驚くのは無理もないよ。誰だって驚く。……俺だってかなり驚いたんだからね」


「全くだ。気付いたらあんなにでっかい口が開いてるんだからな。本当に喰われるかと思ったよ」


「ほら、レイモンドもそう言ってる。……謝る必要なんてないさ」


 2人の宥めを受けエレナは下げていた頭を上げた。やや気まずそうな表情ではあるがその表情にはこの先へ進む覚悟が表れていた。そもそも修羅の国へ行く大きな目的のひとつがエレナの父、マルクを探すことである。目的を果たすためにも前に進まなくてはいけないのだ。


「……さあ、早く進もう。この周辺はかなり血の匂いが濃い。早くしないとモンスターが集まって来てしまう」


「あぁ、それじゃあ先へ進もう」


 再びマシューたちは修羅の国を目指して進み始めた。この道で合っているのかという不安を抱えながら4人は少しずつ修羅の国へ近づこうと前に進んでいるのだ。そして再び進み始めてから数分後、前を進むレイモンドが歓声に似た声を上げた。外から漏れる光が見えたのだ。4人はその光に向かって足を急がせた。


「……ここは?」


 その場所に一番最初にたどり着いたレイモンドは戸惑いを隠せない。なぜ森の中にこんな場所があるのか分からなかったのだ。目の前には静かに水をたたえる泉があった。そしてここ一帯は木が何も生えていないためほぼ真上から太陽の日差しが注ぎ込まれ森の中にも関わらずまるで森の外かのような明るさを放っていたのだ。


「……これはまたすごいな」


「泉……か。マシューの持つ地図にはそれらしいものは描かれているのかい?」


 泉にたどり着いた他の3人は思い思いに言葉を発していた。皆それぞれ共通しているのは目の前のこの景色が驚くべきものであることと、この場所が修羅の国と関連があるのか否かということである。残念ながらそのどちらも4人には判別出来なかった。


「……ふむ、お客さんかの」


 背後から突然声が聞こえた。驚いて振り返るとそこにはタバコを吸いながら杖をついてこちらへ近づく老人の姿があったのである。その老人を見たマシューは何故かその老人と紅玉の祠で出会ったソフィアを重ねていた。


「お主たち、この場所に何の用じゃ?」


「……俺たち修羅の国を目指しているんだ」


「ふむ、……やはりか。修羅の国を目指す理由を聞いても?」


 どうやらこの老人は何か知っているようである。そうでなければ修羅の国を目指す理由など聞くことは無いだろう。他の3人はマシューの方に少し体を傾けている。……なるほど、それを説明するのはマシューの役目のようだ。


「……父親を探しに」


「……ほう、お主の父親か?」


「いや、……ここにいるエレナの父で」


「……なるほど、他に理由は?」


 この老人には確信する何かがあるらしい。じっとマシューの瞳を見つめていた。その瞳は老人のものとは思えないほど強さを放っていた。


「……修羅の国にあるはずの象徴を、……手に入れるためです」


 老人の表情は変わらない。まるでマシューたちの目的を全て見透かしているかのようである。


「それはかなり修羅の道じゃ。……知った上でかの?」


「……もちろん」


「…………大した覚悟じゃの。まあ、それほどの覚悟が無ければ到底《勇気》の象徴は手に入らんよ」


「……あなたは象徴がある場所を?」


「もちろん知っている。わしは言わば修羅の国の門番のようなものじゃからな。……さて、お主たちついて来なさい」


 そう言って老人は口角を上げてみせた。この老人が4人に見せる最初の笑顔である。どうやら悪い人では無さそうである。そして修羅の国の門番であると言う老人に連れられ4人は泉の近くの祠へやって来たのだ。その祠には小さな鏡が祀られていた。


「……この鏡は【転移ゲート】の効果を持つ魔道具。表と裏が混在する修羅の国だからこそ必要な魔道具じゃな」


「……と言うことはこれを使えば修羅の国に?」


「もちろん行くことが出来る。……修羅の国は生半可な場所では無い。ついて来る覚悟のある者だけがついて来なさい」


 そう言って老人は祀られた鏡に触れた。【転移ゲート】が発動し、老人の姿は鏡へと吸い寄せられた。どうやらこの鏡に触れることで【転移ゲート】が発動出来るらしい。つまりこの鏡に触れればすぐに修羅の国へ行くことが出来るという訳だ。


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