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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第3章 その兜は勇気をもたらす
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第21話 親しげな顔見知り

 読んでくださりありがとうございます。どうやらエレナの家でお昼ご飯を食べるようですね。


「……ふぅ、何とかカゴに入ったな」


「あぁ、結構時間が経ったよな。……自分たちで片付けていたとしても粗方は本棚に戻せているくらいの時間か。よし、ここは職員に片付けを頼んで俺たちはすぐに外へ出ようか」


 本をカゴに入れるだけでもかなりの時間がかかったのだ。このまま本棚に戻していては相当時間がかかるだろう。それにこれらの本を実際に手に取ったのはリチャードであり2人とも本棚がどれであったかをあまり覚えていない。それならば無理に自分たちで片付けようとせず職員に託した方が遥かに効率的である。


 2人はすぐにカゴを職員に手渡して片付けてもらい、書庫の外へと急いだのである。だが案外片付けと言うのは時間がかかるようでエルヴィスとエレナは書庫の外にいなかったのだ。お昼がもうすぐそこに迫っているのをありありと示すように太陽は2人の真上で光り輝いていた。


「……そういえば待つってのは久しぶりな気がするな」


「確かにそうかもしれない。エルヴィスは基本的に早いからね」


「ま、たまにはこんなのも良いんじゃないの?」


 2人がそんなことを話していたその時後ろから2人を呼ぶ声がしたのである。その声はエルヴィスでもエレナでもなかった。声だけでは誰かが判別出来ずマシューとレイモンドはやや険しい表情で振り返った。……なるほど、声だけで判別出来ないはずである。真新しい鎧に身を包んだ駆け出しの冒険者が2人に手を振っていたのだ。確かパウロと言う名前だったはずだ。


「やあ、君たちは武器屋にいた2人組だろう?」


「……まあ、そうだね」


「あの時勧めてもらった剣は良い感じだよ。ちょっと高いと思ったけど、良い買い物だった」


 会うのは二度目のはずだがパウロはかなり親しげに2人に話しかけて来た。多分彼の中ではマシューとレイモンドは親切な友人と言ったところだろうか。もっとも2人ともそんな風には一切思っていないのだが。


「……わざわざそのお礼を言いに来たのかい?」


「いや、知り合いを見つけて嬉しくなってね。こんなところで会うとは思ってなかったよ」


 そう言いながらパウロはニコニコと笑っていた。2人としてはこれと言って親しくなる気は無いのだが、エルヴィスたちを待つ間暇ではあるので適当に話を合わせていた。


 そして数分後、パウロの話の種がそろそろ尽きようかというタイミングでマシューは書庫から出ようとするエルヴィスの姿を見つけた。ここらが話を切り上げるちょうど良いタイミングだろう。


「……おっと、俺の仲間が出て来たみたいだ。悪いけど話はまた今度にしよう」


「そうだね。会えて嬉しかったよ。また今度ね」


 パウロは相変わらずニコニコと笑いながら手を振って去っていった。入れ替わりでエルヴィスとエレナが2人の近くへやって来た。もうパウロの姿は見えなくなっていたがレイモンドはマシューの影に隠れて鼻の頭をつまんでいた。


「……さっきの人は知り合い?」


「うーん、……知り合いと言えば知り合いだけど、そんなに親しくは無いかな」


「どちらかと言えば苦手な人だよ。なぜかは分からないけどちょっと疲れるんだ」


「……ふぅん、なるほど」


 エルヴィスは何かを考えるような表情である。エルヴィスが何を考え込んでいるのか、マシューもレイモンドも分からなかった。


「……早く行くよ?」


「あぁ、そうだった。……今ちょうど昼だね。急いで帰ろうか」


 エルヴィスはちょうど真上に来ていた太陽を見上げそして頷いた。正面を向いたエルヴィスはもうすっかりご飯を食べることにシフトさせている表情である。エレナとレイモンドも同様である。一体何をさっき考えていたのか。マシューはそれを聞きたかったがどうやらそのタイミングは今では無いようだ。


 別にお昼ご飯を食べた後に聞けば良い。いつだってエルヴィスに直接聞けるのだから。そう思ったマシューは進み始めた3人を追いかけるようにしてゆっくりと歩き始めた。


「あら、4人ともいらっしゃい。ちょうど今お昼ご飯が出来たわ」


 エレナの家に到着した4人をエマは上機嫌で出迎えた。奥からスパイスの効いた良い匂いが漂って来ている。お昼ご飯はカレーだろうか。


 4人がテーブルに座って待っているとエマが全員の料理を運んで来たのである。予想通りエマが作っていたのはカレーライスである。鼻に抜けるスパイスの芳しい香りは何ともマシューの食欲を刺激していた。最早これで美味しくなければ詐欺である。


「さ、召し上がれ。おかわりもあるから遠慮なく言ってちょうだい」


 エマのその声を契機に4人は勢いよく目の前のカレーライスを頬張った。少し辛めにしてあるルーがマシューの食べる手を加速させる。あっという間にマシューは目の前のカレーライスを平らげていた。それを見ていたエマは嬉しそうに笑っている。


「いつも美味しそうに食べてくれるから嬉しくなっちゃうわね」


 マシューは鏡を見ている訳では無いので実際の自分の表情は分からない。ただ恐らくは満面の笑みを浮かべながら食べているのだろう。険しい表情をしている訳では無い故に見られて困ることは無いのだが、ずっと見られていると言うのも恥ずかしいことである。気まずくなったマシューは少し顔を伏せた。


「実際エマさんの料理はどれも美味しいからね」


「ふふ、……みんな嬉しいことを言ってくれるのね」


 気付けばもう全員が食べ終わっていた。食べ終わるのが一番早かったのはマシューだが他の3人もそう変わらない時間に食べ終わっているのである。それだけエマの作ったカレーライスが美味しかったと言うことだ。エマは嬉しそうに笑って洗い物をするためにキッチンへと戻っていった。


「……さて、みんな食べ終わったね。それじゃあさっきまでの話の続きだな。場所は……エレナの部屋で良いかい?」


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