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マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第3章 その兜は勇気をもたらす
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第20話 それは誤解

 読んでくださりありがとうございます。白と銀の鎧と言うと聖騎士ですね。……いったい何があったのでしょうか?


「……神聖の騎士団?」


 そんなマシューの呟きに呼応するかのように白と銀の鎧に身を包んだ男がまっすぐ4人の座っている机まで歩いて来たのだ。その気配でレイモンドとエレナも男に気が付いた。エルヴィスは突然【魔法解除マジックキャンセル】を発動されたことに戸惑いを隠せない。エルヴィスが男の存在に気が付いた時既に男は4人のすぐ近くまで来ていた。


「手荒な真似をして済まない。どうもこちらに気付いてもらえなそうだったものでな」


「……ええと、どちら様で?」


「私は神聖の騎士団のエリックだ。ここ書庫の警備を任されている。……先程少し不審な動きを見たものでな。声を掛けさせてもらった」


 どうやらこのエリックと言う聖騎士は書庫で警備をしている人のようだ。そして彼は少し不審な動きを見つけたため4人に声をかけたのだと言う。4人には自分たちがやましいことをした覚えは無い。あるとすればそれは勘違いである。


「……少し不審な動きとは?」


「ふむ、不審と言うと少し語弊があるか。……そこの男の動きが少し気になってな。声を掛けさせてもらったのだよ。話を聞かせてもらっても良いか?」


 ここまで聞いてマシューは目の前のエリックが何を気にしているのかを理解した。エリックが示したのはレイモンドである。そしてレイモンドがした行動で警備をする聖騎士に不審な行動と思われるものは限られてくる。


 最初こそ手荒な手段だったが対応は丁寧であり、エリックを拒む理由は無い。マシューは用件をさっさと済ませて警備に戻ってもらおうと考えレイモンドの方を向いたのである。


「レイモンド。図鑑を出してくれるか」


「……図鑑? 何で?」


「いいから早く」


 レイモンドは少し首を傾げながら収納袋から図鑑を取り出した。それをマシューは受け取るとよく見えるようにエリックに提示したのである。


「あなたが気になっているのはこの本では?」


「……うむ、まさにその本だ。その本を収納袋に入れていたのが見えたものでな。残念ながら収納袋から出した方は見えていなかった故、自前のものか書庫のものか判断がつかなかったのだよ。……ふむ、問題無いな」


 エリックの言う少し不審な動きとはレイモンドが収納袋に本を仕舞った動きだったのである。4人はレイモンドが収納袋から取り出したものであることも、その図鑑がレイモンドの所有物であることも知っているが、警備をする人間がそれを把握するというのは少しばかり無理がある。ましてや収納袋から出すのを見ていなければ不審に思うのは必然である。


「疑って申し訳無い」


「いや、こちらも紛らわしい動きだった。だから全く気にしていないよ」


 勘違いで疑ったことになりエリックは素直に頭を下げていた。神聖の騎士団にあまり良いイメージを持っていないマシューたちだが、エリックは少なくとも悪い人では無いと確信したのである。願うならば次に会う聖騎士もこのような人物であることを願いたいものだ。


 誤解も晴れエリックは再び警備へと戻っていった。予期せぬ出来事に疲れたのだろう。レイモンドはかなり大きなため息を吐いていた。そしてため息こそ吐いていないがエルヴィスもエレナも少し疲れたような表情である。


「……この感じで再開するのはちょっと無理かな」


「そうだな。ちょっと集中が切れちまったよ」


「……もうすぐ昼だな。なら一度ご飯の時間にしようか」


「そうだ! それが良い!」


「マシューとレイモンドは昼ご飯はもう決まっているの?」


 もうすっかりご飯のことで頭がいっぱいのレイモンドとマシューにエレナがそう聞いた。2人は少し返答に迷った。決まっていると言えば決まっているし、決まっていないと言えば決まっていないのだ。


 2人は普段ご飯のことは特に考えずに行動している。選択肢としては緋熊亭で食べるか食べないかの2択である。今でこそお金には少し余裕があるが、いまだにどこかの食事処で外食をすると言う選択肢を取らずにいるのだ。


「実はエマさんが2人の分もご飯を作っているらしくてさ」


「……エマさんって言うと、エレナのお母さん?」


「そうだよ。……なんか張り切って作ってるみたいでさ」


 マシューとレイモンドは思わず顔を合わせて頷いた。エマの料理は一度食べたことがあるのだ。その時はかなり腹が減っていたこともあり、心行くまで堪能した記憶がある。閲覧室に設置された時計はもうすぐ来る昼の訪れを示していた。


「それなら、お昼ご飯は決まって無いだな」


「やばいな……。思い出しただけで腹が減って来たよ」


 レイモンドはそう言いながら笑って腹をさすっていた。レイモンドが腹をさすっている時は相当腹が減っている時である。今まで一度も腹が鳴っていないのが不思議なくらいだ。2人の返答を聞いたエレナはニコリと笑った。


「よし、決まりだね。それじゃあ持って来た本は元に戻して、早速帰ろうか」


「おう」


 エルヴィスとエレナはテキパキと自分たちが持って来た本を隣に置いてあったカゴに入れ始めた。2人も慌てて本を入れ始めたのだが上手く仕舞うことが出来ない。持って来た本は厚みも高さも違うのである。最初に入れた通りの順番で入れれば入るのは知ってはいるが、その順番など覚えているはずもなかった。


「時間がかかりそうだね。僕らは先に元の位置に戻し始めるよ。早く終わったら書庫の外で待ってるからマシューたちは片付け終わったら書庫から外へ出ておいてくれ」


 そう言ってエルヴィスは入れ終わったカゴを2つ持ってさっさと閲覧室を出て行ったのだ。2人の方がマシューとレイモンドよりずっと書庫を理解している。ようやく2人が持って来た本をカゴに入れ終わったのはエルヴィスたちが閲覧室を出て3分後のことである。


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― 新着の感想 ―
[一言] いよいよ霊亀の情報を聞こうと思った時に 邪魔が入ってしまいましたね。騎士団から してみれば図書館の本なのか自前の物なのか 区別出来なかったのだから仕方ないけどね( ˇωˇ ) さて、どんな情…
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