表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシューと《七つの秘宝》  作者: ブラック・ペッパー
第3章 その兜は勇気をもたらす
100/234

第14話 睡魔に負けないように

 読んでくださりありがとうございます。マシューにとって睡魔は天敵かもしれません。

――

閲覧室

――


 閲覧室へ入ったマシューとレイモンドはまずエルヴィスとエレナの姿を探した。2人は文献を探す時間に加えてリチャードを探した分も時間がかかっている。エルヴィスたちは既に本を探し終わり閲覧室に来ているはずである。


 閲覧室を見渡すと奥の方にエレナらしき姿を発見した。そのすぐ近くに座っているのは恐らくエルヴィスだろう。後ろ姿だと判断がしづらいがどうやらもう既に読み始めているようだ。カゴを持つ手に力を込めて2人はその場所へ早足で向かったのだ。


「……おや、遅かったね」


「本を探すより人を探した方が楽だと思ったんだ。……まあ、大して差は無かったけどな。エルヴィスは今何を読んでいるんだ?」


「『アーノルド帝国通史』だよ。書いてあることが少し難解だがそれなりには参考になるな」


 そう言ってエルヴィスはレイモンドに自分が今読んでいた本の表紙を見せた。『アーノルド帝国通史』と表紙に記されていたその本はシンプルな表紙でかなり厚みがあり調べものをする時で無ければレイモンドが一生手に取ることは無いであろう代物である。


 そして横に積み上げている本の半数以上がアーノルド帝国の歴史についての本である。どうやらエルヴィスはその面から修羅の国への情報を得ようとしているようだ。


 レイモンドは自分が持って来たカゴから本を取り出すと机の上に積み始めた。順番など関係無く無造作に積んでいるように見えるが本人の中では順序立てて積んでいるのだ。カゴの中身を全て机の上に積み終わったレイモンドはカゴを床に置くとマシューが置いている本を2冊ほど手に取りさらに上に積み上げた。


 それなりに厚みのある本が10冊以上積んであるのだ。無駄に高く積み上げられた本の塔にエルヴィスはつい本を読む手を止めてそれを見上げていた。


「……それ全部読むのか?」


「いや、全部読まないよ。歴史系は苦手だからな。得意な人に任せるとするよ」


 そう言ってレイモンドは上から5冊手に取ってエルヴィスの目の前に置いた。レイモンド

満面の笑みを浮かべていたが、エルヴィスは呆れた表情である。


「僕は別に歴史系が得意な訳じゃないよ。君も知ってると思うけど魔法の方が好きだし得意だよ。ほらその手にある『上級補助魔法について』って書かれている本の方が読みたいかな」


「……これか? これは俺が読むんだ」


「それは好きなものだけを読むって事じゃない?」


「そうとも言うな」


 最早レイモンドは開き直っている。こうなれば何をどれだけ言っても仕方ない。エルヴィスは肩をすくめてみせると手に持っている『アーノルド帝国通史』を再び読み始めた。得意な訳じゃないと言ってはいたが、やはりそれなりには得意な分野のようでエルヴィスは少しばかり難解なその本をどんどんと読み進めていた。


 その姿を見てマシューは安心していた。言葉にこそしていないがマシューは歴史系の話が苦手である。ケヴィンが楽しそうに話す歴史の話は大抵最後まで聞けない。睡魔に負けてしまうからだ。人の話でさえそうなるのに本で読むとなると全くと言って良いほど自信が無い。マシューは歴史とは関係無さそうな『裏世界の見聞録』と表紙に記された本を手に取り読み始めた。


「……痛っ」


 急に頭に重めの衝撃を感じマシューは顔を上げた。突然の予期せぬその衝撃にマシューは混乱を隠せず数回瞬きをして周りを見渡した。斜め前に座るエルヴィスが杖を少し上に上げてこちらをじっと見ている。その表情は全くの無表情でありマシューには何が何か分からなかったのだ。


 横にいるレイモンドはマシューが今読んでいる本の表紙と内容をのぞき込んで確認すると苦笑いを浮かべた。その間ずっとエルヴィスは無表情である。


「……すまん。マシューがこう言うものが苦手なのをすっかり忘れていたな」


「だが早すぎるぞ? まだ10ページも読んで無いくらいの早さだ」


「……俺も苦手ではあるが、マシューはこっちを読んだ方が良さそうだな。これならお前でも読めるぜ」


 そう言ってレイモンドは『上級補助魔法について』をマシューの顔の前に置きマシューが手に持っている『異世界の見聞録』をさっさと読み始めたのだ。一連のレイモンドとエルヴィスの行動と自分が本の内容を一切覚えていないことからマシューは先程自分がどう言う状態だったのかを思い至った。どうやらいつの間にか寝てしまっていたようである。


 きっと疲れていたからだろう。そう自分に言い聞かせてマシューは渡された『上級補助魔法について』を読み始めた。何食わぬ顔で読み始めたマシューだがその耳は真っ赤になっていた。


 『上級補助魔法について』はその題名通り上級補助魔法について事細かに書かれている本である。もちろん【転移ゲート】も網羅されている。目次でその章を見つけたマシューはすぐにその場所から読み始めた。今度は意識を手放すことなくすんなりと言葉が頭の中へ入っていった。先程少し寝た故か頭は冴えているようである。


 その本によれば【転移ゲート】は込められた魔力量により転移出来る距離や人数が変わり、より魔力が濃いものが発動させれば異なる世界への転移も可能であるそうだ。ユニコーンが発動させた【転移ゲート】の色が緑色をしていたのも恐らくその理由からであろう。それだけユニコーンが高位の存在であったと知ると同時に戦わなくてよかったことにマシューは心から安心したのである。


 【転移ゲート】について把握出来たマシューは目次に戻っていた。どうせなら他の補助魔法についても知りたかったのである。マシューはとある魔法を見つけるとすぐに該当のページを開けて読み始めた。そこには【暗号魔法シークレットコード】について記されていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ