8 攻略成功・・・?
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「数字が・・・消えてる」
ピョロンやデデンの音どころか、数字が消えてしまった。
ライト王子の「優しさ」を褒めるような発言が最後だっただろうか。
あれはいい線いったと思ったのだが、王子の顔を見るに逆効果だったみたい。
(まさか。私、いま盛大に王子を煽っちゃった?)
今更しくじりに気付く。王子の裏の性格を知った上で、笑顔で「あなたは優しいですね」発言。
これは大罪だ。
嫌味どころじゃない。煽りレベルMAXの言葉だった。
「先に言っておきますが、僕は何が起きてもフィオレを嫌うことはありません。君も覚悟を決めて僕の捻くれた性格を受け入れて下さい」
「えぇー!」
「失礼ですね」
「思ってた好感度と違―う!もっと甘々な感じの、『僕は何が起きてもフィオレの味方だよ』みたいな?もっと優しい感じを予想してたんですよ!」
「君は僕を何だと思っているんですか」
「腹黒王子・・・」
呆れた顔でライト王子が肩を竦める。
その顔も様になっているが、腹黒王子の本性がその輝きを黒くさせている。私は白い輝きを想定していた!
「まぁ・・・。フィオレの悩みは解決してあげたいので、君の考えていた奇妙な計画には協力させてください。僕ならいいアドバイスが出来るかもしれませんよ?」
「数字が消えた人に言われてもなぁ・・・」
「おや、数値が消えてしまったんですか。それは残念です。僕の協力は要りませんか?」
「じゃあ、青99は怖いので、私にあまり近付かないでもらえますか?謎に100にならないのが、逆に怖いかも・・・」
私がそう言った瞬間、王子は嫌ぁな笑顔を貼り付けた。あれ、何か嫌な予感が・・・。
「そうですか。じゃあ、僕は君の噂を流すことで、好感度変化に貢献することに決めました。僕以外に数値が見えるのは誰ですか?その人に君の悪印象を植え付けてみて、赤と青の数値を比べてみましょうか。近くに君がいたら音で判断できるんじゃ―」
「あー!ごめんなさい、私が悪いのでそれはやめて下さい!嬉しいなぁ!王子が味方なんて心強いなぁ!!」
王子の肩を掴んでガクガク揺さぶる。不敬罪とか知るか。この悪魔をどうにか上手く扱わないと、私がとんでもないことになる。王子の影響力を舐めたらいけない。
「初めからそう言ってればいいんですよ」
王子の勝ち誇った声に私は歯ぎしりを堪える。
口を閉じたまま悪口の1つや2つ、飛び出てしまいそう。
悔し気な私の姿を見て王子は、私と会って初めて心から笑っているように見えた。
「あ、そうだ。指輪。外していいですか?ジュエリーショップに行ったら外してもらえるかな・・・」
「駄目です。取ったらまたプレゼントしますね。今度はもっと強い刃で」
「腹黒め!私を盾にしようってつもりなのは分かってるんですよ!綺麗なご令嬢の中にいい人はいないんですか!協力するので早くお妃を見つけてください。王子もいい歳でしょ!」
「よく回る口ですね。いいんです。もう目星は付けてあるので、フィオレが心配することはありませんよ」
私を責めるようなジトっとした視線が気になるが、王子がそう言っているのならいいだろう。出来ればその相手を教えてほしい。その人に王子の腹黒を先に言っておかないと、女性が幻滅しちゃう可能性があるから。
「そういうフィオレはどうなんですか?一生独身のつもりですか?」
「ふふん。私には許嫁がいますから。会ったことはないけど、きっと好きになれます」
「どこの誰?」
「えっ、えと、それはまだ分からないんですけど・・・」
「君はどこの誰かも知らない人と生涯を共にするのですか?そんなに君の人生は軽いのですか?」
「・・・ぁ」
(確かに。許嫁の姿はゲーム中に無かったな。もし、どうしようもないヒモ男で、毎日殴ってきたらどうしよう。あれ?私、この世界で生きていくなら、もっと真剣に将来について考えた方がいいんじゃない?結婚してハイ終わり!っていう、誰かの物語じゃないんだ)
――突然、不安に駆られる。
(でも、もうここは異世界だから。日本には帰れない・・・。っていうか、私本当に死んじゃったのかな?・・・もしかして、日本に帰る方法を探した方が良いとかある?好感度うんぬんの前に、やるべきことあるんじゃない?)
胸元の【想いのネックレス】がほのかに熱を帯びる。
(ちょっと楽観的に考えすぎていた。大好きなフィオレの人生を歩むのも悪くないけど、元の世界にも未練が無いと言ったら噓になる)
「まだ・・・、隠し事がありそうですね」
「さすがに、この件は・・・い、言えません」
「そうでしょうね。君の顔を見ていたら分かります。いつか抱えきれなくなったら、僕に相談して下さい。それまで待っています」
「・・・ここで優しいムーブですか。・・・やりますね。不覚にも、ちょっとときめいちゃいました」
「怒りますよ」
取り繕うことを止め、ちょっと苛立っているライト王子を見て、幾分か気が楽になった。
私には心強い味方が出来たのだ。
――自分の生き方を考えつつ、数値の謎を解明していこう。
とは、決めた・・・ものの。
「どーやって帰ったらいいかわかりゃしない」
寝ころんだまま、【想いのネックレス】を目の前に持ち上げる。
仄かに黒いその宝石は、スモーキークォーツみたいで綺麗――・・・え。
「ん?」
この宝石って透明じゃなかったっけ?
何で若干くすんだ灰色になっている?
よく見ると、端がアクアマリン見たいな淡い青。
どこかで汚れた?宝石が?有り得ない。
そもそもずっと私の胸元にあった。
原因は?
ライト王子の数値が消えたから?
青の数字が99になったから?
それとも、
「帰りたいって、思ったから・・・?」
すると、宝石が光る。その光は鈍く、注視していなければ気付くはずもない輝きだった。
「うそ・・・。帰れるの?私、日本に?」
シーン
「ちっ、ケチな宝石・・・」
宝石は反応をやめた。が、少しでも前進したのが嬉しい。
(私、元の世界に戻れるかもしれない・・・!)
―今まで思い付かなかった新たな希望に、ガッツポーズを決めた。
閲覧ありがとうございました!
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