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5 引き返せない道

閲覧ありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけると幸いです。


トボトボ家に帰ると、サーシャが飛びついてきた。


「お帰りなさいませ!どうでした?わたくし達の完璧プランは!?」

「えっと、ちょっと失敗したかな・・・」

「・・・やはり、わたくしの庶民感覚では王子を満足させることが出来なかったのでしょうか」

「違うよ。多分、私のせい。ライト王子が本当に望むものが与えられなかったことが駄目だった。私がちょっと間違えちゃっただけで、サーシャのせいじゃないよ。むしろ相談に乗ってくれてありがとう」

「お嬢様・・・」


サーシャが落ち込んでいる私に、入浴を促す。

お言葉に甘えて、私は暖かい湯船に浸かった。

【想いのネックレス】は湯に浸すわけにもいかず、脱衣所に置いてきた。


(さっきの言葉が引っかかる。「大好き」?大嫌いの間違いじゃなくて?ライト王子、ものすっごい嫌味かますじゃん・・・。笑顔怖いし。全然優しくない・・・。あーあ。全部、自業自得だけどさ)


チャプと乳白色の液体を手に浮かべる。


「あ」


右手の薬指には、光る黄色の指輪。


「そうだ。貰ったんだった・・・」


見ているとちょっと悲しい気持ちになる。ライト王子はどんな気持ちでこれを私に渡してきたんだろう。つまらないデートだなって思いながら、なぜ私にこれを・・・。


なんだか申し訳なくて、指輪を取ろうと左手で指輪をつまむ。

左手の中指と親指で持って、上に―。


「いっったぁ!!」


ビリどころじゃない痛みが、右薬指を走った。

なんだろう、紙で切ったみたいな。スッとした痛み。


「え?えっ?なんで?」


―と、ここで賢い私は、ジュエリーショップ店員さんの捨て台詞を思い出す。


『取り外そうと思わない方がよろしいですよー!』


「取り外さない・・・ほうが、よろしい・・・です・・?」


おかしいとは思っていた。指輪に「取り外す」って。まさか、指輪に細工したみたいな、ね。言い方・・・。

そっと右手薬指を横から見ると、何だかかぎ爪みたいな取っ掛かりが見えた。


指輪を下に戻すと、それは引っ込む。が、ちょっとでも上に上げると猫の爪みたいに小さい爪が出てくるのだ。このまま上に上げれば、関節の皮膚を傷つける事間違いなし。

・・・指輪を外したら流血ものだ。ライト王子にバレる。


「や、やられた・・・」


ライト王子と揃いの指輪なんか、彼を狙う人から集中砲火を食らうに決まって・・・。


(あぁ、分かった)


体のいい虫よけにされたんじゃない、これ。


―どうやら私は高度な嫌がらせをされたようだ。




透明な宝石がはめ込まれた【想いのネックレス】を首にかけ、黄色の指輪をひと撫でする。

バルコニーに出た私は、夜風にあたって考え込んでいた。


(とりあえず、明日王子に謝りに行こう。それとこの指輪も外してもらおう)


青の数値が大幅に下がったことは喜ばしいが、何だか目の前のライト王子は私に失望したみたいだった。


(っていうか。「好き度」が上下するなら、「嫌い度」は必要なくない?)


おバカな私が気付けなったせいだが、新たな謎が出現した。

青の数値が「嫌い度」を表していないとしたら、何を示す数値だろうか。

ライト王子を「個人」として考えなかったことで、彼は傷つき、青数値が下がった。


(おぉ。じゃあ、「自分を本当に理解してくれているかどうか」が、青?)


謎の選択肢で青数字が減るなら、実際のゲームで青100は至難の業だ。

生前の私は、それを成し遂げようとしていたのか。


(でも、あの時はセーブ&リロード出来てたから・・・)


今は違う。リロード出来ない訳で。失敗したらどこかで挽回するか、最悪ゲームオーバー。


「うぅぅううう。やるしかない・・・」


フィオレのためにも、私はハッピーエンドを目指すのだ。




翌朝。

ライト王子に謝罪をするため、城に赴いた。・・・のだが。

大きな壁にぶつかった。


「何の用だ」

「・・・ジーク。ライト王子に面会したいのだけれど」

「お前みたいな尻軽が来る場所じゃない。散れ、消えろ」

「~っあのね!あんた、口を開けば!っていうか、尻軽とかやめてくれる?どこからそんな噂が広がったのか知らないけど、私は身も心も清い、うら若き乙女だから!!」


(だって、全年齢のゲームだから!)


「・・・口では何とでも言える」

「体で証明できるわけ無いでしょ!デリカシーない人!」


私はプンプンしながらジークを通り過ぎようとする。こちらに敵意がある人物を一々相手にしていられない。ジーク攻略は、ライト王子が解決した後だ。


「アバズレって噂は、嘘なのか・・・?娼館に入り浸ってるって噂も・・・?」


ぼそり、とジークが呟く。聞き捨てならない言葉に思わず足を止めて踵を返す。


「え、今なんて言った?」

「・・・」

「誰にも言わないから言って。誰から何を聞いたの?噂でもいいから」


どこかで私の悪評を流す人物がいる。誰かは知らないが、捨ておけない。

攻略キャラと仲良くなる障害になるに決まっている。

そんな人物はこの手で仕留めて、二度と口を開かせ無くしてや―。


「アバズレはライト王子。娼館はコイオスだ。直接聞いたから間違いはない」

「無理じゃん!!」


思わず叫んで、地に膝をつく。無理でしょ。攻略キャラが率先して悪評流してたら、改善の余地もないよ!


(そ、そんなにフィオレが嫌い・・・?でも嫌われるように選択したの私だ。う、涙出てきた)


というかコイオスに至っては、「噂を聞いた」って言ってたくせに。まさか自分で流していたとは。


でも問題はライト王子。ア、アバズレって汚い言葉、王子が使う?あの聖人キャラの王子が?まだ見せてない闇があるのかもしれない。いや、あるな。


「そう、ありがとう。ジークは真に受けないでね、お願い」


―前途多難。ライト王子とコイオスへの怒りを胸に、私は歩き出した。


閲覧ありがとうございました!


今日も、もう一話だけ投稿します。

宜しければ、ブクマや評価を頂けると嬉しいです!

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