4 違和感
閲覧ありがとうございます!
少し短いですが、お楽しみいただければ幸いです。
(ライト王子には裏の顔がある・・・?)
少し怖い仮説に身を震わせていると、不意に肩を叩かれた。
「うわっ!!」
「・・・そんなに驚くことですか?お待たせしました。はい、僕からの贈り物です」
「ありがとうございます。あれ、何か金属の部分の造りがちが―・・・」
私が言い終わるか終わらないかのうちに、
右手の薬指を持たれ、グイっと指輪を嵌められる。
若干、肌がピリリと痛んだような気がするのは気のせいか・・・?
視界の端にいる店員さんの苦笑いが恐怖を煽る。
「さ、行きましょうか、フィオレ」
「す、すみません!そこの店員さん!その苦笑い、怖いんですけど・・・?」
「またのご来店をお待ちしております」
「取り付く島もない!!」
そして店員さんは地獄の台詞を吐いた。
「その指輪を取り外そうと思わない方がよろしいですよー!」
「うぇ、今なんて!?指輪に【取り外す】って表現、適切ですか!?嘘でしょ!」
「フィオレ、さっさと歩いて下さい」
最後に振り向くと、店員さんは私に向かって合掌していた。
―もう二度と絶対あの店には行かない。
ジュエリーショップの外は澄んだ夜だった。
街灯の光が灯され、街並みが綺麗だ。
「次の予定は考えてありますか?」
指輪を上に持ち上げようとする私の手を、片手で力強く制したライト王子がにっこり笑う。
「最後はディナーです・・・。有名な庭園で・・・」
「あぁ、あそこですか」
「多分そこです」
「僕とのディナーは、人目につく場所を選んだんですね。あそこは景色が美しいけれど、開放的で他の客やウェイターの姿が常に見える」
「・・・け、景色が綺麗と有名だったので」
「はぁ・・・。ここまでにしましょうか」
「え?」
思わず顔を上げると、真顔のライト王子がこちらを見下ろしていた。
その顔は影になっていて、少しばかりの恐怖を覚える。
初めて知った。温和な笑みではない彼が、これほどまでに怖いなんて。
「どう、して・・・」
「よく分かりました。君が全く僕を理解する気が無いことが」
「・・・そんなこと」
「君は僕に何を望んでいましたか?僕との時間?僕との対話?・・・違いますね。君は僕を王子様扱いしたいだけだ。こんなことなら、前のように我がままで自己中心的な君の方がまだ、マシだ」
デデン
(青−10・・・)
「美術館に行っても君は1人で盛り上がっていた。オペラ劇場で2人っきりになれると思いきや、口を開けば使用人を呼ばれる。プレゼントは君が考えたものではなく、僕に選ばせようとしていた。それに何の意味が?・・・最後に。レストランでやっと2人で腰を落ち着かせて話せると思いきや、【有名だから】で選ばれたありきたりな場所。・・・フィオレは僕を、全く、見ていない」
デデン
(青−5。どんどん青が下がる・・・。青が80に)
喜ばしい数値だと思いたい。・・・のだが、目の前の彼の表情と声色から、「嫌い度」が下がっているようには思えない。むしろ、
(どんどん嫌われてない?)
「ごめん、なさい。そんなつもりは・・・」
(嘘だ。私は好感度の事ばっかりで、ライト王子のことを考えていなかった。【王子様には、これがいいだろう】というイメージだけで行動して、1人で盛り上がって・・・)
「謝らないで下さい。分かっていましたから。散々な逢瀬でしたが、こうやって言いたいことを言えたので満足です。次を期待しています」
「え、次・・・があるんですか?」
こんなに怒らせたのに?傷つけてしまったのに?次が?
私がライト王子なら、もうフィオレに接触しないだろう。
人の気持ちを考えずに、最悪なデートを考案してしまった私なんか、無視してしまいたい。
(あぁ、そうか。「優しいライト王子」だから、こうやって気を遣ってるのかな。あ、なんか惨めかも)
自己嫌悪に陥る私に反し、
ゾッとする笑顔でライト王子が言った。
「次はありますよ。僕はフィオレが大好きですから」
―ヒュッと息を呑む自分の声が聞こえた。
閲覧ありがとうございました!
予想以上に筆が進んでいるので、今回のように一度に何話か投稿することがあるかもしれません・・・!