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プロローグ

閲覧ありがとうございます!

あたふたする主人公がメインです。




リロリン

リロリン



脳内で響く音に、目を覚ます。


(ん・・・、ここは・・・?)


豪華な天蓋に、広い部屋。フカフカのベッド。


(えぇ?どこ、ここ)


直前の記憶が思い出せない。

なんだっけ・・・、ゲームの事考えてて、それで・・・。


(起きなきゃ・・・。今日は出社する日だから、準備しなきゃ・・・。あぁ、面倒だな!!)


もぞもぞと体を動かす。


(それにしても豪華な部屋・・・。都内の1DKとは考えられな・・・・。―え?)


覚醒する。違う。違うのだ。ここはいつもの光景じゃない!

飛び起きて、全身を姿見に映す。


(やってまった?)


そこにいたのは、「自分」じゃなかった。


(あぁ・・・色々とやらかした、かも)


鏡の前には、プラチナブロンドの美少女が立っている。

スラリと伸びた手足に、小さな顔。

これ8等身はあるんじゃないのってくらい見事なスタイル。


可愛いと言うより美人に近い造形。

形のいい眉に、小ぶりな唇。大きすぎず、小さすぎずの眼と淡い黄色の瞳。


どうあがいても手に入れられない可憐な姿を手に入れて、初めに思い浮かんだ感情は・・・喜びじゃない。


(あ、詰んだ、かも)


いやでも、と希望を胸に胸元に恐る恐る手を当てる。


(あのアイテムが無ければ大丈夫。あれが無ければ大丈夫、大丈夫、だいじょ―)


チャラリ


手に固い物が当たった。そっと取り出すと、透明な輝く無色の宝石が出てきた。

朝日を浴びて、眩いばかりの七色の色彩を放っている。


(あー!詰んでたっ!)


―絶望。




朝日を浴びながら思考すること30分。


まず第一に。私は亡くなった、のだろう。

攻略中のゲームの事を考えながら歩いていて、大きな衝撃を受けた・・・が最後の記憶。

我ながらあっけない最期だったとは思う。

思うが、問題はそこじゃない。


有り体に言えば、私は必死こいて進めたゲームのヒロインになっていた。

フィオレ・ミンディア。

貴族のご令嬢。かつ、容姿端麗。


(うんうん。いいね)


しかも清純派ヒロイン。


(最高)


攻略キャラは4人。優しい系、ツンデレ、わんこ、チャラ男。


(わーお。選びたい放題)


最後の記憶によると、入手困難な「想いのネックレス」を手に入れて浮かれていた。


(そうそう、それが・・・それが・・・)


大問題なのだ。


特定のキャラから一定の好感度を得ていた場合、「想いのネックレス」はそのキャラクターの所持品となる。最後のプロポーズの場面で、そのネックレスがヒロインに渡される手筈だった。


で、全てのキャラから一定数以上の好感度を得ていなかった場合。

フィオレ自身が「想いのネックレス」を手に入れる。

私は死の直前までそのルートを辿っていた。


―主人公が「想いのネックレス」を手に入れるために、睡眠時間を削って頑張ったんだよなぁ。


フィオレは恋愛ゲームの清純派ヒロインで、真っ当にゲームを進めると甘々ラブラブなエンドになることが多かった。優しくて、気立ての良い18歳の女の子。誰にでも平等な女神。


ゲーム側も「フィオレ=良い子」を前面に押し出しているのが伝わったし、選択肢だって分かりやすいものが多かった。

プレイヤーからしたら、相当に易しい難易度だったと思う。選んだキャラと絶対ラブラブ両想いになれるから。


―が、ゲームをやりつくした私はあることを思いついた。


(好感度下げまくったらどうなるの?よし、やってみよ)


あの時の自分を殴ってやりたい。


ゲームには赤と青、2色の好感度があってそれぞれが、おそらく「好き度」「嫌い度」を示していた。

青の数字を上げれば攻略キャラから嫌われる。

最大100まであがるから、青が100になれば大成功だと思っていた。

逆に、赤が上がらないようにめちゃくちゃ気を付けた。


とにかく最悪な選択肢を選び続けたのだ。

「フィオレごめんね!」って思いながら、彼女を高飛車高慢自己中女に仕立て上げちゃった。


だから当然、手に入れない方が難しい「想いのネックレス」を手に入れることに成功。

「好き度」が40あれば、ネックレスは攻略キャラが持っているはずなのだ。

一度の選択肢で好感度が最大20上がるから、細心の注意を払わなければならない。


「フィオレ」がネックレスを手に入れるのは鬼畜難易度だった。


言っちゃあなんだけど、セーブ・リロードを繰り返させてもらったくらい。

だってちょっと間違えるだけで、


ピョロン 赤+15


すぐ好感度が上がってしまうから。





フカフカのベッドの上で頭を抱える。


(まずいって!!!)


マズいのだ。

首元にぶら下がる「想いのネックレス」は、私が精一杯頑張った【皆から嫌われまくってみた】ルートを辿っていることをはっきり示しているのだから。


今のフィオレはきっと、悪役令嬢もびっくりの大悪女。

大切な約束をすっぽかす。人を荷物持ちにしか考えない。周囲にネガティブな発言をし続ける・・・。

・・・ちょっとヤバい女の子。


フィオレの名誉のために言っておくと本来はこんな子じゃない。私なんかのせいで、嫌な女の子に仕立て上げられただけなのだから。本当、ごめんねフィオレ。


―まさか、自分の身にその業が降りかかってくるとは思いもしなかったけれど。


(まずは、おさらい。記憶してる範囲で思い出そう)

攻略キャラは4人。18歳のフィオレと大差ない年齢のキャラばかりだ。


ライト・エメラルド 20歳

・王子

・優しい


ジーク・ラスティ― 18歳

・騎士

・ツンデレ


ノーマン・ムース 17歳

・幼馴染

・わんこ系


コイオス・パール 19歳

・旅人

・チャラい



(我ながら浅い記憶力だな・・・でも、これ以上の要素は無かったはず)


おそらく、ライトの好感度が一番低いだろう。


(優しい系男子が、強烈発言をする女の子に困る姿が見たくて。あぁ、止めとけばよかった)



トントン


―と、不意にドアがノックされる。


「お嬢様?お目覚めでしたら、朝食を召し上がってください。今日はライト王子にお呼ばれされていますから、早めにご支度なさってください」

「え」

「お嬢様が焚きつけなさったんでしょう?『はぁ?貴族が集まるパーティーを開きなさい。私以上のいい女はいないってこと、証明してあげるわよ!!まぁ、皆平凡な地味女ばかりでしょうがね!』と、高らかに仰っていたではないですか」


(あぁぁぁぁあ!!そうだったぁ!)


命を落とす日の朝。人生最後の選択肢を思い出す。


ライト王子との談話で、彼が他の女性を褒めるという場面があったのだ。

その際に出た選択肢は3つ。


①『私以外の女性に、気があるのですか?』

②『ライト様の周りには、素晴らしい方々が集まるのですね』

③『はぁ?貴族が集まるパーティーを開きなさい。私以上のいい女はいないってこと、証明してあげる   わよ!!まぁ、皆平凡な地味女ばかりでしょうがね!』


―さぁどれが正解でしょう?

そんなもん、最後以外に決まっている。

でも好感度を下げたい私にとって、これはラッキー問題だった。

絶対、絶対「嫌い度」20上昇はいっただろう。元々「嫌い度」がいくつなのか覚えてないけれど。



「さぁ、お嬢様が恥ずかしくないよう全力でおめかしいたしますよ!!」


メイドのサーシャが腕まくりをして入ってくる。

私は死んだ魚の目をして、されるがままになるしかなかった。




閲覧ありがとうございました!

次話を楽しみにしていただけると幸いです。


よろしければブクマ・高評価をして頂けると、ものすごく嬉しいです。

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