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八
扉の先にいたのは、一人の少女だった。日本人形のような白い肌と切長の目をした美少女に気圧された次郎は、しどろもどろに、あの、ええと、誰?と言った。
「夏彦、待ってる」と、少女が言った。「私は一女子」と、少女は次郎の袖を掴んで思いがけない力強さで外へと引き摺り出すと玄関を施錠した。
有無を言わさず階段を下すと、車の運転席に座っている夏彦がいて、一女子は助手席に、、次郎は狭い後部座席へと押し込まれた。
「見た目は古いですが、中身は電気自動車に改造してありますから、ご心配なく」という夏彦の言葉は、次郎には特に意味はなく、走り出した車の行き先も告げられないまま拉致された気分で震えている様子をみつめていた一女子が夏彦に話しかけた。
「ねぇ、この人、埋めるの」
「うん?」
「罠にかかった浣熊みたいになってる」