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七
まぁ、迷惑なので、と近所を憚ってとりあえず玄関に入れた。積み重なった本の独特の香りが漂う中で、男二人が狭い中で立ち向かいになっていた。
夏彦が黙っていると、彼が名乗った。白鷺次郎。それが青年の名前だという。次郎がいうには、自分のせいではないが、会社に幽霊が出て、そのせいで買収先が決まらず困っている、このままだと路頭に迷う云々。
服は着ていますか?
次郎が返答困っていると、その幽霊、服は着ているかと訊いているんですと夏彦が再度、確認したが、幽霊をみたのは私ではなく、別の社員だというと、なら、確認してください、と命令した。懐からスマートフォンを出して電話をかける次郎をほったらかしにして、夏彦は本の向こうにある引き戸をひいて向こうへと消えた。通話が終わってからもなかなか戻ってこないので、次郎が不安に思っていると、玄関の扉が外から開けられた。