素直に言えたね
「ねえ誤解しないで聞いてほしいんだけど。」
「何よ、怖いなあ。」
「消えてしまいたいって思った事ある?」
「急に何?病んでんの?」
「わかんない、けどさ死にたいじゃないの。消えたいの。」
「あんた職場でいじめられてんの?」
「そうじゃないんだって、なんていうか…そうだな。」
「何よ。」
「疲れちゃった、が1番かも。色んな事に疲れちゃった。仕事とかもそうだけど、そういう疲れじゃなくて。」
「どういうこと?」
「将来の事。不安がっても仕方ないけど。結婚とか働くとかお金とかそういうの。考えてたら消えたくなるの。」
「そっか。それはなんとなく分かるな…分かるよ。あんたの気持ち分かる。死にたいわけじゃないっていうのも消えたい気持ちも。」
「ありがとう。分かってくれて。」
「でも消えてほしくないよ。まだあんたと遊びたいし話してたい。」
「うん、私も消えたくない、だけど急に悲しくなったり苦しくなったり、でも次の瞬間には楽しくなったり嬉しくなったりしてる。自分でも分からない。」
「病院行く?」
「どうだろ、行った方が良いのか、余計に落ち込むのか?難しいかな。でもその選択肢もあるよね。」
「……私はあんたと一緒に美味しいもん食べてお酒を飲んですっげぇ綺麗な景色を見られたらそれでいいよ。その後もしまだ消えたいなら…。」
「駄目!もしそうなっても1人でいく。迷惑はかけないよ。それに死ぬつもりはないし。本当に違うの。」
「ああ、そう。」
「でも、ありがとう。ずっと思ってた事を人に聞いてもらえてちょっと軽くなったもの。何となくね毎日重さが変わるの。すごく重い日もあれば羽みたいに軽い日もある。聞いてもらえて今、とても軽いわ。」
「そう良かった。また聞くよいつでも。」
「うん、ありがとう。髪切ろうかな、この前切ってきたんでしょ。ハンサムショートってやつに。似合ってる。」
「ホント?ありがとう。ついてくよ。ついでに色も変えな。金にしな金に。」
「えぇ、今でも目立つ色かなって思ってるのに!金!」
「しなよ。そしたら私はシルバーにするから。」
「ワオ、でも良いかも。しようかな金。」
「絶対に似合うよ。」
「今、何時?」
「14時ってアンタまさか。」
「そうそのまさか!行こ!今から!」
「あたし染めたばっかりなのに!」
「まあまあトリートメント代だけは奢ってあげるから。」
「絶対に1番高いやつにしてやる。」
「はいはい行きますよ。お姉さん。」
「うるさい同い年だろ!」
「ていうかさっきからスマホで何してんの?会話を楽しもうよ!」
「美容室に予約入れてんの!なんか知らんけど安くなるのよネット予約が!」
「うわぁーい。ホント愛してる。」
「はいはい行くよ!平日だからか15時でとれたし。」
「はーい。ありがとう。」
「いいえ、どういたしまして。」