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無意識にやらかすスライム



「はい、お姉さんっ」



「ありがとう…ミーアちゃん」



ミーアが差し出した水入りコップを受け取るガーナ。



「…オシショウちゃんもありがとう…助けてくれて」



「気にしなくていい…ミーアに優しくしてくれてた礼だ」



「ふふっ、ミーアちゃん愛されてるわねぇ」



「ふぇッ!?、そ…そうかなぁ…えへへへっ///」



顔を真っ赤にしながら照れるミーア。



そりゃ、大事な弟子だからな。



大切にするのは当然だ。



「…でもごめんなさいね…せっかく買い物に来てくれたのに…」



「うぅんっ大丈夫っ!」



「…てか、アンタが気にすることじゃないだろ…当人同士の問題なら違うが…あの感じだと向こうが一方敵みたいだしな」



「…えぇ……何度も断ってるんですけどね…」



「ああいう奴らは自分の思い通りじゃないと諦めないからな…」



「その通りね……女だからと舐められてもいるんだろうけれど…」



正直、否定はできない。



男だろうが女だろうが優秀な奴は優秀だ。



確かに、肉体の発達による違いはあるがそんな物、数ある内の1要素でしかない。



現にあのチンピラ達が、彼女が作った食器を同じように作れるかといえば答えはノーだ。



逆に彼女が、熟練の騎士が放つ一撃を出せるかといえば出せるわけがない。



つまりは、人それぞれ…



出来る事と出来ない事があるって事なんだが…



未だ馬鹿みたいに、男は無条件で女より優れているなんて考える奴がいるのが現実だ。



「…一体何を狙ってるんだ、あいつら。ただ食器類を売り捌くためだけとは考えづらいんだが?」



「……」



「…あぁ、悪い。言いたくなかったら言わなくてもいいから」



「…ふふっ…オシショウちゃんってまるで人間見たいね」



…まぁ、元人間だからなぁ…



いや、人間だったよな…?



「…こんなとこを見られて、気にしないでなんて無理よね……ついてきて」



ガーナは立ち上がると奥に歩いていく。




俺たちもついていき、保管室らしき場所まで来れば、彼女は手袋をして1つの箱を出していた。



「…これよ」



「…はわわわわわぁぁっ」



ミーアが驚嘆の声をあげる。



箱から取り出したのは、宝石の如き美しさを放つ一枚の皿だった。



「…これは亡き父が作った物なの」



「ほぉ…親父さんが…」



「…これっ…全部宝石?」



「ふふっ、いえ違うわ。これは宝石じゃなくて、ガラスよ」



微笑みながら彼女はそういうが、どこからどう見てもガラスには見えない。



その光沢はどう見ても宝石だ。



「…これがガラスとは…恐れ入ったな…」



匠が研鑽し、更に上の段階に踏み入れないと作れないような逸品の前に、俺は思わず息を呑んだ。



「ガーナさんのお父さんってすごいっ」



「ミーアちゃんありがとう。父はあまり喋らない人だったんだけど…作る事に関しては本気だった……より良い品を作るために沢山の食器を作った末、これを作り上げたらしいのよ」



「ほぅ…なるほど……ん、“らしい”?」



「…私も母からそう聞いただけだから……詳しいことはわからないの」



「…じゃぁ、アンタの母親なら…」



聞けるのかと聞こうとすると、彼女は横に首を振る。



「残念ながら、母も……」



「…そうだったんだ…」



ミーアも、彼女の様子から察したようだ…



…まぁ…生と死は切っても切れないからな…



「…結果、私は母からこの品と昔話を少し引き継いだだけ……結果誰も知らないの…そのお皿の作り方を……残念だけどね」



「…じゃぁ、あのチンピラ達が狙ってるのはこの皿って事か…」



「いえ、少し違うわ」



「なに?」



「…本当に欲しいのはそのお皿を作る技術と作り手よ」



はぁ?



「おいおい…アンタさっきも作り方は失われたって言ったじゃん」



「えぇ…でも、そんな事を話したりすればどうなるか…」



「…あぁ、なるほど…そういうことか…」



作り方が不明である以上、狙われるとしたらこの皿だ。



それにあの手の奴らは“はい、そうですか”とはならないだろうしな…



逆に自分は知ってると思い込ませた方がいいか…



「…危ない取引だな…」



「…仕方ないの…自分自身で守らないといけなかったから…」



「……なるほど…てか、どこで知ったんだよチンピラ達は…」



「…わからないの…多分、父関係から漏れたんだと思うんだけど…」



「…まぁ無駄な犯人探しなんざしても意味ないよな…」



「…で…でも、流石にバレたら危ないんじゃ…」



正直、ミーアの言う通りだ。



流石に命までは取らないと思うが…無事ではすまないだろうなぁ…



「…まぁ、作り方がわからないんじゃ処分も困るな…」



「…オシショウ…処分するなんて…」



「だが間違ってないだろ?。形見だからな…砕くとか捨てるとかしたく無いだろうし…かといって売るにも売れん」



「…売れはするんじゃ?」



「…あー…言い方間違えたな…確かに売れるだろう。だが、新たな火種になる可能性の方が高い」



「…火種?」



「あぁ、火種だ。正直、これだけの美しさだからな、人気が出るだろうよ……だが、世の中善人ばかりじゃねぇ…世界にたった一枚の皿といったところで信じない奴もいるだろうし…最悪、ガーナが作れると思い込んで寄ってくる奴がいてもおかしくは無い」



「…その通りよ、オシショウちゃん…現に、さっきの人たちもそんな感じの人なの…」



「…やっぱりか…」



「…そんなぁ…」



「…ミーア、金が絡むと人が変わるやつなんざ沢山いる…よく覚えておくんだよ」



「…はい…」



「…何だか、オシショウちゃん…ミーアちゃんの先生みたいね」



んんっ!?



「…いや…別にそんなことはっ……」



「あらそう?、側から見てたら誰だってそう思うわよ?」



「む…むむっ…」



た…確かに必要以上にミーアに構いすぎた気はしなくも無いがっ…



「…まぁ……ほら、ミーアは危なっかしいだろ?」



「オシショウッ!?」



「…ん…んんぅ…それは…そうね…」



「ガーナさんまでっ!?……うぅ…そんなに危なっかしいかなぁ…?」



正直、未だ幼いところとか無警戒なとこがあるから見てないと酷い目に合いそうで怖いんだよなぁ…



「…とにかく、この皿は良い物なのは間違い無いが…作り方がわからないんじゃ隠しとくのが最善だな」



「…そうですね…出来れば飾ったり、お皿として使ってあげたいですが…」



「どこで見られてるかわかんねーし、やめといた方が……ん、何だこれ?」



ガーナが皿を持ち上げりと、皿の裏には何やら独特な模様が刻まれていた。



…あれ…どっかで…



「…あぁ、それは父がつけたものらしいんです」



「ほぅ…アンタの親父がかい…」



「何を表しているのかはわからないんですけどね…」



あははっと小さく笑うガーナ。



受け継ぐ前に親と離れ離れになったんだからな…まぁ知らないのも無理ないか…



しかし、このマーク…んんん…



「自分のマークとかかなぁ?」



「…さぁ…少なくとも父にそういったものがあるなんて聞いたことありませんが…」



「じゃぁ、何かの暗号?」



「…流石にそれは」



暗号…まぁ確かに、皿の裏に暗号なんてかか…あっ。



「あっ、ピュセル文字だこれ」



「…へ?」



「いやぁ、どこかで見たことあると思ったら…随分とマニアックなものが出てきたなぁ」



「…お…オシショウっ?」



「ん、何だよミーア」



「そのマーク…知ってるの?」



「あぁ…昔に使われてた隠語なんだけどよ…このマークに沿って魔力を流すとだな」



“…きぃぃぃぃぃぃんっ…”



魔力を流し始めれば、まるで吸い込まれるようにマーク全体に流れ込んでいく。



マークが魔力の実態を持てば皿から離れ、宙に浮かび上がる…



「…こっ…これはっ…」



「ピュセル文字は、たった一文字のマークの中に文章を埋め込んでおく魔法文字なんだよ」



「マークの中にっ?」



「それってかなり凄いんじゃ…」



「だと思うだろ?。だが、現実はそんなに甘くなくてな…保管できる文字数はそんなに多くないし、そもそも構築するのが難しい…だから一部のマニアの中でしか流行らなかったものなんだよ。だって伝えたいだけなら手紙を書いた方がよっぽど早いだろ?」



「…そう聞くとあまり凄くなさそうな…」 



「まぁ、そう思って仕方ないがな…とはいえ、技術レベルで見ればかなりのもんだ…アンタの親父さんは魔法の腕が高かったんだな」



「…お父さん…」



自分が知らなかった父親の一面を知れたからか、彼女は小さく笑みを浮かべていた。



「…オシショウ、この浮かんだの…」



「ん…あぁ、それが展開されて中から文字が…おっ、開くみたいだぞ」



マークに十分の魔力が行き渡ったのか、マーク自身が変形していく…



そして…












「…へ?」



「…うわぁ…こりゃまた…」



「…ぁ…あらぁ?…」



俺たちは現れた文字を見て言葉に詰まった。



何故なら…












“アレンっアースシロップとホワイトスノウで作れたぞッ、俺の勝ちだッこの屁理屈アホ狸!!”



「…お姉さんのお父さんって…かなり口が悪い?」



「…ぇ…えぇと…そんなことはないはずなんですが…あははっ…」



「口が悪いから黙ってたとか…」



「…ぅ…」



寡黙な父親が遺した言葉…



それがまさか、アレンという人に向けた…何かを勝ち誇り、罵倒した言葉だったとなれば…



正直心中を察するわ…




「……ぉ…お父さん…」



どうやら傷はかなり深いらしい…



「…お姉さん……元気出して…ねっ?」



「は…はい……」



落ち込むガーナを慰めるミーア。



師匠として、他人を気遣えるように成長したミーアを褒めてやりたいが…先にすべき事があるからな



「おい、いじけてんなよ」



「オシショウっ…今デリケートな状態っ」



「んなの見ればわかる。だが、今はそこじゃないんでな」



「えっ?」



「あれあれ」



俺は体を変形させて浮かび上がってる文字を差した。



「あれがどうかしたんですか?」



ん…?



「…あれ、気づかない?」



「…ふぇ?」



不思議そうに首を傾げるミーア。



まじかぁ…



「…ぅぅ……はぁぁぁ……父の言葉がどうかしました…?」



「いや…どうしたも何も…材料なんじゃねーの?。アースシロップとホワイトスノウが」



「…へ?」



「ざ…いりょう?」



「あの綺麗な皿を作るための」













「「…あっ」」



はっと気がついた2人。



どうやら、ガーナはミーアとにた分類だったようだ…



…まじかぁ…

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