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常識を壊すスライム


「…」



「…」



「…そんなガン見されても、何も出来んぞ?」



屋敷内に招かれてからずーっと2人に注視されている俺…



いや、珍しいのはわかるけどさ…



「…オシショウ……オシショウってそんなに珍しいんですか?」



「ん…まぁ…人間の言葉を話せる個体自体が少ないからな…」



「…いえ…それだけではありません。確かに、人間の言語を理解し、意思疎通が出来る個体がそういないのは事実ですが……一線抜き出た存在じゃないと話すことができないと言われています」





…ほぉ、このメイドさんはよく知ってるな。



「…え…えぇとぉ…?」



そして、案の定ミーアは理解できてなかったか…



だから、簡潔にまとめたんだよなぁ…



まぁ、仕方ないか…



「…要は強いモンスターじゃないと、話せないって事だ」



「あーなるほどっ」



まぁ、もっとも…まともなモンスターの分類に俺が当てはまるのかは不明だが…



「…付け加えるのでしたら…言語を話すとは簡単なことではありません…高い知能が必然となります……」



「おかしな話かなぁ?。オシショウは賢いですよぉ?」



「………申し訳ございませんが、はいそうですかと納得できるほど、簡単な話ではありません……ちょっと知能が高い程度で済む話ではありませんから…」



「…んん??」



「…んー、回りくどいな。まとめりゃ、こう言いたいんだろ?。モンスターが意思疎通出来るようになるには、高い知能が持てるほど強力な個体じゃないとおかしい。そして、スライムという最弱クラスの存在がそのレベルにたどり着いているのは聞いたことがないってな」



「…はい…」



メイドさんは小さく頷く。



それには俺も同意見だ。



スライムってのはモンスターとしてはかなり弱い。



いくら進化できるといっても、スライムが進化するまで強くなれるかは別問題だ。



そういう意味じゃ、メイドさんとマリベル嬢が驚いてるのも当たり前の話だ。



まぁ、俺自身自分がどういう存在なのかわかってねーから、純粋なスライム扱いでいいのか迷うがな…



「んん〜?」



「…ミーア、下手に考えなくていい。要は、めちゃくちゃ強いスライムじゃないと話なんてできない…けど、そんなスライムは見た事も聞いた事もないから、2人は戸惑ってるだけだ」



「あっ!なるほど〜」



「…ま…まぁそういう事ですが…」



「…とりあえず、色んな意味でこっちの事はどうでもいいだろ」



「…そんな簡単な流せる話題ではないと思うのですが…」



「そっちから見れば難しい話かもしれないが、俺から見れば簡単な話題だ。なら、互いに難しい話をした方がいい……マリベル嬢は“誰に呪われたんだ”?」



「ッ…!?」



「えッ!?呪われてるッ!?」



この場にいる全員が驚いた。



「…どうしてっ…」



「いや…まぁ…魔力を感じ取りやすい体質なんだよ」



「………呪った事の痕跡を見たと言うんですか…?。さすが、言語を話せる強者というべきでしょうか…」



「まぁ…それで納得できるならそうしてくれ…ただ、またマニアックな呪いをかけられたな…“魔獣食の呪い”なんざ…」



「オシショウ、“魔獣食の呪い”って?」



「モンスター由来のモンしか食べられなくなる呪いだ。それ以外食べようとしたら吐いちまうって厄介な副作用までワンセットでな……だから、マリベル嬢はあれだけ痩せこけちまってるんだろうな」



マリベル嬢を眺める。



その痩せ具合はすでに1日2日…いや1ヶ月でも足りないくらいガリガリに痩せていた。



「なるほ…んん?」



「…はい、その通りです……約1年前に、突然呪われてしまいまして…」



「…その口ぶりだと、犯人が誰かは分かってないのか……おいおい、公爵家じゃないのかよ…」



「……耳が痛くなりますね………御父上である当主様も動かれたのですが……それらしい手がかりは……かなり強めの呪いですから…相手は限られると思うのですが…」



メイドさんが言いたい事は理解できる。



呪いと言っても様々だし、使用する触媒によって変わったりする。



一年も継続してるとなれば、それ相応の良質な触媒が必要だろうから…



用意できるやつなんて限られるだろうし…



さてさて…本当に見つけられてないのかね…



「解呪しようと試みてきましたが…全く効果がなく……お嬢様は無理矢理にでも栄養を取るためにモンスターの肉を…」



「…なるほど……だが、よくまぁ一年もなんとか耐えてきたもんだな…」



「…リーンが、出来る限り味付けを…ただ一皿分食べれれば良い方で…」



「……申し訳ございません。私の腕が未熟名ばかりに…」



「…気にしないで…リーンのせいじゃないから…」



謝るメイドさんだが、こればかりは仕方ないだろう。



モンスターの食材と普通の食材は似てるようで全く違う。



特殊な鉱石や金属で出来た刃物が必要だったり、通常の火とは違う種類の火が必要だったり…



いくら、プロの料理人といえど、モンスターの食材を前にすれば素人同然…



いや、馬鹿にしてるわけじゃない。



単純に畑が違うと言いたいだけだ。



だから、メイドさんが如何に料理が出来たとしても、美味しく作れない事はおかしい事じゃない。









だが、“知らないんだろうな”。




「…オシショウ」



「ん、どうした?」



「…その呪いって、そんなに不味いものなの?」



「いや全然」



「…えっ…?」



「だよね…何で、深刻そうな表情しているのかな?」



どうやら、ミーアはこの事態を深刻だと捉えていないようだ。



まぁ、実際深刻じゃないから当たり前なんだがな…



俺達にとってはだが。



「ちょッ…ちょっとお待ちをッ…魔獣食の呪いですよっ?」



「あぁ、魔獣食の呪いだな」



「モンスター由来の物しか食べられなくなるんですよっ!?」



「あぁ、問題ないだろ。そっち食べれんなら」



「味だってッ」



「はい、落ち着きな」



「むぐぅっ!?」



俺はスライムを伸ばし、リーンさんの口を塞いだ。



「リーンっ!?」



「何もしませんよ、マリベル嬢。こっちの話を聞かなさそうだったんで口を塞いだだけです。さて…色々と認識違いがあるみたいなんで……とりあえず、百聞は一見にしかずという事で…」



メイドさんの口からゆっくりスライムを外し、俺はミーアの肩に移動する。



「ご馳走させてくださいな。“本当”のモンスター料理の味ってやつを」

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