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とりあえず弟子を馬鹿にされたのでぶっ飛ばしました



「えへへぇ〜、お師匠様だぁ〜」



「…」



感動の再会(?)からずっと俺に抱きついてきては頬擦りをしているミーア。





…いや、俺としては構わないし…



慕ってくれてるのがわかるからいいんだけど…





流石に受け入れすぎじゃない?



「なぁ、ミーア」



「何ですかぁ?」



「いやその…受け入れすぎじゃないか?……いくら慕ってくれてると言っても、今はスライムの姿だぞ?……普通なら疑って警戒すると思うんだが…」



「お師匠様を疑うなんて有りえません!」



「…ん…あぁ…そぅ……」



俺は何も言い返せなかった。



…いや、だって…あんな力強く言われたら…ねぇ?



「……しかし、まだここにいたんだな…俺が死んでから数年は経過してるんだろ?」



「……そうですね…………お師匠様が亡くなられた後…私達はお師匠様の言葉通り街に出たんです…最初は皆で一緒にやってたんですけど…皆それぞれの道を進んでいって…あははっ、結果私だけがここに残ったって感じになっちゃいましてっ」



ミーアの影ある表情から、色々と苦労した様子がうかがえた。



…しかし、皆ちゃんと前を向いて歩き出したんだな…



「…そうか……何があったかはわからないが…皆自分の道を進んでいるのか…それは何よりだ……正直、心配だったからな……安心したよ……しかし、ミーアも物好きだな。こんな辺鄙な場所に留まるより、皆みたいに世界に出ていけばよかったのに…」



「あはははっ…そこは私のこだわりと言いますかぁ……そうするしかなかったと言いますかぁ……」



「…はい?」



…何かあるのか?




◇◇◇◇◇◇



街中に堂々と佇む立派な木造建築。



そこは冒険者達が集うギルドハウス。



毎日、沢山の冒険者達が訪れては自分に合ったクエストをさがし、金を稼ぐ場所だ。



街に住む者や流れ者、遠征ついでに立ち寄った者など様々な冒険者で溢れている。



そんな中に、ミーアの姿もあった。



「あのぅ…これ受けたいんですけどぉ」



「あらあら、ミーアさん。また不釣り合いなクエストを受けるんですかぁ〜」



ミーアが受付嬢にクエストの紙を持っていくと小馬鹿にするような態度で対応されていた。





…いや、その態度…





…なるほど…



ミーアから話は聞いていたが…



どうやら、思っていた以上の扱いをされていたようだな…



周りの職員達の様子からしても、普段からこんな扱いなんだろうし…



やれやれ…



「"魔物使い"なのにモンスターの1匹も連れていない貴女じゃ難しいと思うんですけどねぇ〜。ほら街中のゴミ拾いとか貴女にピッタリ〜」



「っ…」



…ほぅ…ゴミ拾いがピッタリとねぇ…



確かに、モンスターのいない魔物使いだと、危ないのは確かだが…



そこまで言われないとダメなもんかね?



てか、ミーアもミーアだ。



言い返すなりしたらいいのに…



「いっいえっ、そのっ…よ…ようやくテイム出来たんですっ…“オシショウ”っ」



自信満々に俺の名を呼ぶミーア。



ローブの中に隠れていた俺は、体を動かして、にゅっと肩から顔を出した。



ちなみに、オシショウとはまじで俺の名だ…



最初は別の呼び名で呼ばせようとしたんだが…



お師匠様呼びが全然離れなくて…結果こうなった。



「…ッ…ぷっ!あははははっ!!。何をテイムしたかと思ったらスライムじゃ無いですかぁ〜、雑魚中の雑魚を引き連れてるとかっ。まぁ雑魚同士お似合いかもしれませんけどねぇ〜!」



お腹を押さえながら笑う受付嬢。



いやいや…流石に失礼って枠を超えてるよな…?



「おっっ…オシショウの事を馬鹿にしないでくださいっ!」



「雑魚に雑魚って言って何が悪いんですぁ〜、事実じゃ無いですかぁ〜。てかオシショウって…ありえないでしょ〜」



…まぁ名前に関しては俺も思うところはあるが…





「前々から役立たずだとは思ってましたけど〜、スライム1匹しかテイムできないとかお話になりませんよ〜。役立たずのスライムなんて何の価値もありませんし〜、まぁ貴女の能力じゃそこが限界なんでしょうけど〜」



「っ…わッ…私は役立たずでもっオシショウは雑魚じゃありませんっ…!」



ミーアは涙目になりながらも必死に言い返していた。



…どうやら、自分を馬鹿にされたことより、俺を馬鹿にされたことが許せないらしい…





…昔から優しい子だったからな……



…他の弟子達と喧嘩した時も、自分が悪いと思い込みすぎてたっけ……



…あの時、しっかりと考えを改めさせるべきだったな…




…自分が馬鹿にされても、自分が未熟だからと…



言い返すとかしなかったんだろうな…



その結果、この馬鹿達を増長させることにつながったってとこか…



「おいおい、役立たずの魔物使いがようやくテイムに成功したんだって?」



さて、どうしてやろうかと考えている最中…



こちらを伺っていた、大柄の男の冒険者が絡んできた。



「スライムが強いとか夢見てんなぁ〜。どれどれ、俺が力を測ってやるよ」



小馬鹿にしたような顔…どうやら、こいつもそうらしい…



てか、周りで見てる奴らもか…





「アハハハハハっ、冒険者同士の喧嘩は自己責任ですからねぇ〜。被害が出ないようにしてくださいよ〜。物が壊れたりしても冒険者に請求できないっていっても、雑魚のために払うお金なんて勿体無いんですからぁ〜」





……



「あはははっ、わかってるよ。まぁ雑魚が1匹死んじまうかもしれんがなッ」



「っ…!」



大柄の男は問答無用でこちらを殴りつけようとしてきた。



それを見て、慌てて俺を庇うように抱きしめるミーア。



だが、男は笑みを浮かべたまま、殴ろうとするのをやめなかった。



止めるのが間に合わないとかじゃない。



はなから止める気がないのだ…



…ミーアもろとも殴るつもりか…







…さて、もういいだろ。



言質も取れたし…



なにより…












“我慢の限界だ”。














“パシっ…”



庇うようにして俺を抱きしめるミーアの頭を撫でながら、スライムの手を作り、打ち出された拳に向けて伸ばし…捕らえた。



「あっ…?」



「えっ…?」



まさか受け止められるとは思ってなかったのか、変な声を出す2人。



周りも信じられないものを見たような表情になっていた。





…さて…遠慮しないぜ…?



「てめぇ…スライム如きがっいぐぉぉぉぉぉおぅぅうッ……!!?」



大柄の男はその場に蹲った。



…そりゃそうだろうな、骨が軋むほどの力で握ってやったんだから。



「…さて…冒険者同士の喧嘩は自己責任…しかも、ギルドハウス内の物が壊れても請求されないだったな?」



俺が声を出せば、周りはさらに信じられないものを見たかのような表情になった。



「…え……スライムが…話した?」



俺はミーアの腕から離れ、カウンターの上に飛び乗る。



信じられないと目を見開く受付嬢だが、正直どうでもいい…



重要なのは、特に理由もなく…くだらない理由でミーアを馬鹿にしたことだけだ。



「…言い換えれば…“どんな傷を負おうが止める事はなく”…“どれだけ壊したとしてもギルドは冒険者に請求出来ない”って事だな?」



「…ぇ…」



「とりあえず…“1発は1発だ”」



“ッ…どごぉぉおおッ!!”



「ぐぶぅぅぇッ!!?」



それだけ言うと、スライムの拳を思いっきり相手の顔面に打ち込んだ。



「きゃッ!?」



「うごぉぉッ!?」



殴り飛ばした男はニヤニヤと見ていた観衆達のもとに打ち出される。



“バキッボゴッガシャァァァァッ!!!”



弾丸のように飛んでいけば、野次馬達と共に木の椅子や机を巻き添えにし、壁に思いっきり叩きつけられていた。



…ふむ…多少巻き添えにしてやったが…



もっと力を入れたほうがよかったか?



「…さて…」



「…ッ!?」



俺が顔を向ければ、生意気な受付嬢はビクッと体を振るわせた。



どうやら、ようやく自分の立場…



そして目の前のスライムがただのスライムじゃないことを理解したようだ。



「悪いが、こんな雑魚なスライムをつれた魔物使いでも受けられる…それなりに良いクエストを用意してもらえるかな?」



出なけりゃ、お前もああなるぞと…



わざわざ気泡をつくり、指を鳴らしながら威嚇する。



「っっ!!ひゃッひゃひゃいま!!」



生意気な受付嬢は何度も頭をすれば、すぐさま書類の束を漁り出す。



…はぁ…最初からまともな対応をしてればいいんだ、最初から…



俺はカウンターから降りると、ミーアの手手を引いて近くの椅子に座らせた。



「…ミーア」



何が起こっているのか理解できずに、こんがらがっていたミーアに対して優しく話しかけた。



「はっ…はいっ…」



「…もう少し、胸を張りなさい。相手の意見を尊重することと、好き勝手言われる事は違うからね」



「…わかりました…オシショウ」



「よろしい」



「…ありがとう…オシショウ」



そう小さく呟くと、そっと持ち上げ抱きしめられた。



やれやれ…



大きくなったと思ったが、まだまだ子供だな…



……出来る限り見ていてやらないとな…

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