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3人組

男視点

 ゴムボールを投げてやる。するとラブは嬉しそうにそれを追いかけて口に咥えて帰ってくるのだが、その姿がみるみる筋肉質な人間になっていく。


「わぁぁぁああああ⁉︎」


 びっくりして飛び起きた。夢を見たのは久しぶりだ。結局占い師も続けていて何も変わらない毎日…のはずだったが今日は3人で猫カフェに行くという大イベントが待っている。


 俺が気絶している間に彼女がなぜか捻挫していてラブが面倒を見ている。そして俺は彼女の恋愛運に対してまたも占う機会をうやむやの後に失った。猫カフェの後にでも答えを出してやらないと…占わずに済んでいることに正直ほっとしているのだが。



 ブーブー


 スマホが鳴って、メッセージの通知を見て思わず頬が緩む。彼女からのメッセージだ。


『おはようございます☀️今日は11時に池袋東口でしたよね?よろしくお願いします(^^)楽しみです!』


 アイコンの写真の場所はテーマパークだろうか。キャラクターの耳をつけた後ろ姿が、顔も見えないのに可愛い。

 思えば、前世の彼女はこのように友達とはしゃぐようなことはなかった。いつも控えめに微笑んでいて、この間のように声を上げて泣くことも、感情のままに怒るようなこともなかった。

 それだけ俺が我慢させていたのだろうか。

 今世の彼女は、それに比べるとあまりに表情豊かで、自分の気持ちに素直だった。たくさん愛されて育ってきたのだろう。

 俺の知らない彼女の人生に想いを馳せる。


 ブーブー


 今度はラブだ。

 ラブは、『ペコリ』と書かれたおじきをする猫のスタンプを送ってきた。


 ブーブー


『あっ!ふじねこスタンプ!ふじねこコラボカフェも楽しみですね♪』

 彼女がグループトークに続けて書き込む。


「ふじねこ」とは、人気クリエイターのハチワレ猫のイラストだ。現在池袋の雑居ビルでコラボカフェが開催されており、グッズ販売やクリエイターのサイン会もあるらしい。

 猫カフェの前にそこでランチすることになった。

 白黒の顔の模様と気だるげで自由気ままな雰囲気が、前世の我が家の縁側によく遊びにきていた野良猫にそっくりだった。

 俺は何となく懐かしくてそのスタンプを使っていたが、メッセージアプリのアカウント交換をした時に挨拶代わりにそのスタンプを送ると、全員が同じスタンプを購入していたことが発覚したのだ。


 理由もなく惹かれるものって、実は本人が憶えていないけだけで大抵理由があるものだ。人の前世を視ていてよく思う。


 彼女が筋肉ドクターのことが気になっていることは何となく察していた。だからあの時、あえて彼女を誘ったのだ。彼女はドクターが来るなら断らないだろう、と。

 ズルイよな。俺と二人だったら彼女は誘いに乗らなかっただろうし、誘った時点でもう占いにも来てくれなくなるだろうことはわかっていた。

 ただでさえ、占って彼女をスッキリさせてしまって、新しい恋へ背中を押してしまった暁には、俺は用無し。ただのキューピット占い師。それこそ立ち直れない。


 だから俺は決めた。


 [計画1] 今世の彼女を知ろう

 [計画2] 彼女に前世の夫の良かったところを思い出させよう

 [計画3] ドクターと彼女の恋は絶対阻止!!


 彼女がドクターに惹かれている理由が、前世の愛犬ラブだからだといいな…。

 そしたらあの頃のように、仲良し3人組で楽しく過ごせるだろう。



 早めに行って場所の下見でもするか、と外出の準備を始める。

 クローゼットを開けて、「清潔感、清潔感」と呟きながら、紺色のセーターとスッキリめのジーパンを取り出した瞬間、またしてもスマホが鳴った。


 ラブだ。


『すみません!今から院に寄らなくてはいけなくなって、14時頃猫カフェで合流でも良いでしょうか?汗 12時からのふじねこクリエイターさんのサイン会、参加したかった。。涙』


 ブーブー


『わかりました(>_<)先生の分のサインも私達が確保しておきますね!』




 ……!!これは…デ、デート!!


 時間をずらすことも考えたが、彼女はなんとしてもサイン会に行きたいらしい。

 二人きり…と考えるとピキッと緊張が身体を硬直させた。


 なにを隠そう、俺は…前世はお見合い結婚、今世は妻を探し続け、言わずもがな…恋愛経験がない。

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