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光る部屋

女視点

 隠れ筋肉ドクターとくっついて歩くのはたまらなくドキドキした。足は痛いけど。

 気まずくならないようにずっと私に話しかけて、優しく支えてくれる彼の開業したクリニックだ。地域の人に愛されているに違いない。

 そんなことを考えていたらあっという間に到着した。でも真っ暗なクリニックはなんだか怖いなぁ。なんて思っていたら


「…!誰か…誰かいる…!」さっきまでの高揚がうってかわって冷や汗となり全身を伝う。


 一部屋だけ電気が付いている。そして動く影も割とはっきり見える。えっ幽霊?生きてる人間?いやもうどっちでも怖いわ!


 目を見開いたまま彼を見上げると、彼もまた目を開け更に口も開けていた。言葉を失っているようだ。


「…まだスタッフが残っているみたいです。ちょっと、ここで待っていてください」

 院の窓から漏れる光が当たらない植え込みの陰に腰掛けるよう促された。筋肉ドクターは私を置いて、何故か忍び足で院の裏手にまわっていった。


 もしや、スタッフではなく本当は泥棒なのでは。

 だとしたら私がいたら確かに足手まといだな。でも、筋肉ドクターならどんな相手でも勝てそうな気がする。

 そして、泥棒を捕まえて私にこう言うんだ。「外で待たせてごめん。君を巻き込みたくなかったんだ」って。ふふふっ。真冬の夜に外で待つのはかなり冷えるが、心は妄想でポカポカしていた。


 すると、窓の向こうから女性の怒鳴り声が聞こえた。


「院長!もしかしてまた猫でも拾ってきたんですか!」


 ガラガラッ。


 窓を開ける音がして思わず縮こまる。院からは死角になって見えていないはずだが、あの声の女性にみつかったら筋肉ドクターとともに叱られるような気がして動けなかった。


「怪我してたんだ。しょうがないだろ!」


 あ、猫って部分は否定してくれないんだ…。


「自宅に持ち帰れないからって、院に連れ込むのはやめてくださいよ!ご近所の目もあるんですから!」


 …これは、本物の猫の話なのか?

 いや、きっと女性の比喩だ。いつも院に女を連れ込んで遊んでるんだ!


 キッと光る部屋を睨んで、痛む足を引き摺りながら去る。



 これはまだ恋じゃなかった。

 まだ本気では好きじゃなかった。

 運命じゃなかった。


 困ってるときに優しくされたから、勘違いしただけ。


 いつもこうだ。

 真剣に恋がしたいだけなのに、遊び人に騙されたり、夢追い人を養うことになったり、独身だと嘘をつかれたり。


 私に運命の人なんていないのかもしれない。



 トボトボと暗い住宅街を歩く。こういう時は、戸建ての部屋の明かりがやけに眩しく感じる。


 一人の時間が好きな方だ。趣味もあるし、仕事もやりがいがある。

 けど、たまらなく寂しくなる瞬間がある。


 きっと、繰り返し見るあの夢のせいだ。

 なんの変哲もなくてつまらないのに、やたらと温かい夢。

 温かさを知っているからこそ、相反する孤独もまたよく知っていた。


 その夢の中の夫は「生まれ変わっても一緒になろう」と約束して先に逝ってしまうのだ。

 哀しくて哀しくて、心がポッカリ空いたまま、その後独りで何十年も生きる女性の夢。

 それが私の前世らしい。


 その夢を見て起きたときはいつも、涙の跡がある。



 あんな空虚な孤独感を味わうくらいなら、夢の中の夫とは正反対の人とワクワクドキドキするような恋愛をした方が、人生がずっと楽しい気がする。


 そういえばあの占い師、私の前世が見えるって言ってたな。

 それなら私の気持ちをわかってくれるに違いない。

 あの気絶も、私の前世のあまりの寂しさにショックを受けたからかもしれない。涙目だったし。

 そうと決まれば!明日にでもあの占い師のもとへ行かなくては!

 そして占ってもらうのだ。


 私の運命の人とは、どこで出逢えるのかを!

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