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悪夢

男視点

 目を覚ますとそこには見覚えのない天井が広がっていた。隣ではどうやら俺を助けてくれたらしい青年と駅員が話をしている。


 その後ろに妻が…あれ?いない…??たしか女性客が来てそれが妻で…感動の再会がけちょんけちょんに否定された気がしたが…。


 もしや夢だった?会いたいという気持ちが強すぎて、でも拒否されたり妻は記憶が無かったらという不安のあまりあんな悪夢を見てしまったんだ。きっとそうだ。そういえば昨日はふらっと入った居酒屋で飲んだ酒が妙な味だった。当たったに違いない。


 落胆と安堵が同時に来ると人はこんな感覚に陥るのか。


「あっ、気がつきましたか。少し休んでから戻られた方が良いですよ。お店の方は先ほどテナントの警備員に連絡しておきましたので」

「すみません。ありがとうございます」

「では、私はこれで」

「あっ、あの!女性、見ませんでしたか?栗色でふわふわのロングヘアーで、目がパッチリしてて、小柄な感じの…」

「ああ、彼女なら今店番してくれていますよ。私も荷物を預けているので、すぐ戻らなくては」

「!!」

「急に起き上がってはいけません。もうしばらく休んだ方が良いでしょう」

 なんとしても彼女に会いに戻らなくては。なのに体がびくともしない。よほど俺は弱っているのか…いや、強い。強すぎる。

 この青年の、握力が。


 なんなんだこの…隠れ筋肉。

「ふっ」

 ヤバい。心の声を口に出してしまっていたらしい。怒られるかと思いきや、青年は思い出し笑いを噛み殺すようにしながら「いや、さっきも言われたんですよ」と楽しそうに呟いて、改めて俺を寝かせた。


「では、お大事に」


 ああ、これはまだ悪夢の続きだ。

 会わないままの方が良い夢を見ていられたのに。生まれ変わって妻を探し続けていた32年よりも、妻に会えた今の方が断然辛い。

 悪夢なら、目覚めてくれ…!


 そうして俺は、また気絶した。






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