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帰り道

女視点

 占い師さん…一体誰を見てるんです?


 飲み会の喧騒のなか、ぼんやりとあの時のことを思い出す。占い師は、時折私を通して別の人を見ている時がある。それは占い師の持つ人の前世を見るという能力故なのか、背後霊でも見えているのか、いずれにしろ自分の知らない自分を見られているような居心地の悪さと、自分自身を見てもらえていないような腹立たしさを感じていた。


「聞いてます?俺はどうしたら結婚できるんすかー!」

 すっかり酔っ払った平社員の男に肩を揺さぶられ、現実に戻る。

「そういうところですよ。TPOを弁えた声のボリュームと…」

 平社員の男にアドバイスするも、聞いてくるくせに聞く耳がないのか何も響いていない気がする。呆れてアドバイスを続けるか迷っていると、先輩がメモを取り出した。

「これ、明日この人せっかくのアドバイス絶対全部忘れてるよ。いいよ、私メモ取って明日渡しとく」

「もう、どうせ憶えてないんならこの人無視して恋バナの続きしましょー」

 後輩が自分の相談を始めると、平社員の男は自分の話題でなくなってとたんに会話に興味を失ったのか、うつらうつらと眠りはじめた。


「先輩、この人と同じ駅でしたよね?どうします?」

「置いて行きたいところではあるけども…お店の人に迷惑掛けられないし…」


 深いため息をつきながら自販機に反射した自分の顔を眺める。私は何をやっているんだ…。


 平社員が駅のトイレから出てきたら冷たい水でも飲ませてやろう。全然酔えなかったしモヤモヤも解消してない。女子会は見る影もなく解散の運びとなった。


「お嬢さんどうしたの?買ってあげようか」


 自販機前で漠然と立ち尽くしていたからだろう、サラリーマンに声をかけられた。


「えっ、あっ、いや…大丈夫です」

「どれが欲しいの?」

 ピッ。サラリーマンが自販機にICカードを押し付け、ボタンが点滅する。

「あ、、じゃあこれを…ありがとうございます」

 ガシャンッと水が出てくる。


「どこから来たの?一緒に飲み直そうよ」


 平社員が戻ってこないかと、駅の階段を見上げるも、平社員は戻ってくる気配がない。もう5分以上も待ってる気がする…トイレで倒れてないよね…?あー、もうっ!


「連れがいますので」

 控え目に会釈だけすると、サラリーマンは気にしてないような笑顔のまま、手を振って来た電車に乗り込んでいった。


 トイレ見に行った方がいいのかな、、。でも男子トイレだし。

 いっそのこと置いて帰るか、と電車を2、3本見送った後決意した瞬間、千鳥足の平社員が階段を降りてきた。


「あー!待っててくれたんスねー!」


 呆れ顔で水を押し付ける。


「わっ!気が利く~!いい女ッス!!」

「その水、私が買った訳じゃないんで」

「えっっ?」

「もういいからっ、サッサと帰りますよ」


 運良く席に座れたものの、平社員の頭がグワングワンと揺れだして、私の肩にもたれかかってくる。


 はぁ。なんてツイてない。

 心を無にしたまま電車に揺られること十数分。そろそろ乗り換え駅に着く頃だから平社員を起こさねば。今は何駅かと車内のモニターを見上げると、知った顔と目が合った。



「先輩!やっぱり…紹介してもらえませんか?」


 後輩がそこに立っていた。


「なっ…えっ?どうして」

 どうしてこの電車に乗っているのか。彼女の最寄駅は全然違う。そして紹介?

 何が起こったのか分からず混乱したがとりあえず降りる駅に着いたので平社員を次の電車へ誘導し、後輩と自宅へ向かうことに。


「おつかれー」

 本日2度目の乾杯をしてコンビニ袋を漁りながら聞く。


「どういうこと?何から何まで分からないんだけども」


 後輩は缶チューハイを両手で握り、俯きながら話し出す。


「あの飲み会の後1人で考えてたんです。公園で。」

「そんな過ごし方するくらいなら平社員の世話手伝ってほしかったな」


「それでやっぱり会わせてほしいなって思いが強くなって!」

「やっぱりも何も紹介する話なんてしたっけ…?」


 酔いと疲れで本音がダダ漏れてしまう私をよそに後輩はとうとう言う。


「占い師さん紹介してもらえませんか」



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