怒り
女視点
「楽しみにしてたのに…」
「えっ?」
「大っ嫌い!」
何なのもうっ!「筋肉と二人で楽しんで」なんて、アンタはお見合いの仲人かっ!猫カフェ楽しみにしてたんじゃなかったの?猫好きなのも嘘で、最初から筋肉とわたしをくっつけようとしてたの?仲間だと思ってたのに、変な気を回さないでよ、気持ち悪い!
始めは筋肉のことを気になっていたのは事実だ。それに、占い師がチャラピーと消えるとなると、心の平穏も保たれる。なのに、私は無性に腹が立って仕方がなかった。
「先生、行きましょう」
私は、占い師の横をスタスタと通り過ぎて、エレベーターに乗った。筋肉は、占い師の顔を見て一瞬迷ったようだったが、私の後を追ってエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターのドアが閉まる寸前まで占い師は微動だにせず、私達に背を向けたままだった。
「…良かったんですか?」
「…」
良いわけがない。めちゃくちゃイライラする。
その怒りを殺すのに必死で言葉が出てこない。
とりあえずいったん外の空気を吸って……あれ?
いま何階?ん?え?動いてない?
どこのボタンも点灯していない。
「えっ?えっ??故障?嘘でしょ⁉︎」
「大丈夫。目的階を押してないから動かなかっただけです」
筋肉は『1階』…ではなく『開く』ボタンを押した。
ドアが静かに開いたが、占い師はまるで石像になる魔法をかけられたかのように微動だにしていなかった。チャラピーが面白がって占い師を小突いて遊んでいる。
……ふっ。
啖呵を切って去ったつもりが全く移動しておらず、この状況を冷静に考えると急に馬鹿らしくなって笑えた。笑うと怒りがスッと消えていく。筋肉がそっと私の背を押し、私はコクリと頷いて占い師の方へ足を進めた。
「あの…さっきは言いすぎました。ごめんなさ…えっ?」
石像になった占い師は、私の事など見えていないガラスのような瞳で床の一点をみつめながら、繰り返し「嫌われた 嫌われた 嫌われた…」と呪文のように呟き続けていた。
この人、そんなに気にしてたの…。




