誰が先か
女視点
もしかして私ってツイてない…?
サイン会が行われるはずだった無人のテーブルの前に膝から崩れ落ちながら、そんなことを思っていた。
本当はアイスティーでも一気飲みしたいところだが、嫌な汗をびっしょりかいたので着替えたい。でものんびりふじねこシャツを見ている間にあの2人がきっと来る。
巨大ふじねこぬいぐるみの影に転がり込むようにして身を隠し、スマホを握る。早くこの状況を隠れ筋肉に伝えないと…!ていうか早く来て!
「みつ…けた…」
背後から声がして、全身に鳥肌が立った。スマホを握り締めながらゆっくりと振り向くと、いた…。
「ひゃあっ!」
「驚かせてごめんっ。あっ、あのっ、アイツ撒いてきたから、アイスティーでも…」
汗だくで息切れをした占い師が、ビショビショの手を差し出した。
「あっ、あっ…えっと…わっ!」
差し出された手には気付かなかった振りをして、勢いよく立ち上がった…と思ったら、案の定立ち眩んだ。
「間に合った…」
占い師も意外と筋肉…と思いながら見上げると、ぼんやりとした視界に映ったのは、占い師ではなく隠れ筋肉だった。
「先…生…」
「タクシーで駆けつけて良かった…」
隠れ筋肉は私を抱き留めたまま、ボソッと呟いた。そして、呆然としている占い師の方を見て、「絡んできてた輩は?」と訊ねた。
占い師は差し出したままだった手をそっと下ろして握りしめ、何故か悔しそうに答えた。
「きちんと…撒いてきました」
「そうですか。ありがとうござ…」
「いるよ」
「「「…!!」」」
全員が勢いよく振り返ると満面の笑みのチャラピーが手を振っている。
「ここにいるよ」
「…なんでいるんだよぉぉぉ!」
「ちょっ、静かにっ」
私は聖地ふじねこカフェで暴れようとする占い師を意識が朦朧としつつも注意した。
「ハハッ。撒いたと思った?相変わらず馬鹿だね。撒かれたフリをして後をつけたに決まってるじゃん」
「テメエこそ、相変わらず姑息なっ!」
「…知り合いなのか?」
筋肉が怪訝な顔をして占い師とチャラピーを交互に見る。




