二人三脚
女視点
「ねぇ、なにあれ」
すれ違う人が口々に言う。
先を急いではいるが思わず振り返る。
うん?占い師とチャラピーが肩を組んでる…!いや、占い師は胸ぐらを掴まれてる?
「この悪徳ブリーダーが!そうまでして俺たちを滅茶苦茶にしたいのか!恥をっ…知れっ…ヒィッ」
「束縛公務員がほざくな!グフッ」
斬新な二人三脚をしながら斬新な罵り合いをしている。そして私に向かってくる。絶対に追いつかれたくない。
私は全力疾走していた。
カフェの入り口が見えてきた。
ハァッ ハッ ハッ
コラボカフェは、この雑居ビルの8階!
肩で息をしながら振り返ると、アイツらは私にはまだ気付いていないようだが、グングン近付いてくる。
やっ、やだっ、来ないで…!!
心臓がバクバク鳴っている。
エレベーターのボタンを連打しまくるも、階数表示が全く変わらない。えっ、嘘!おっそ!なんで!もう!ムリムリムリ!みっ、みつかる!!!絶っ対に関わりたくない…!
エレベーターボタンの連打は諦めて、横の非常階段を駆け上がる。
ハァッ ハァッ ハッ
ヒール履いてこなくて良かった。犬の散歩スタイルで正解だったわ。
全力で駆け上がれたのも3階フロアまで。
は、 8階…。目が回る…。これ確実に明日は筋肉痛だ…。
そもそもなんでアイツ、ちゃんとチャラピー撒いてこないのよっ!まったく!いつもお人好しで断りきれないんだからっ!
…あれ?いつも??占い以外で会うの初めてだったよね?なんでいつもって思っちゃったんだろ。
そんなことも一瞬脳裏によぎったが、占い師は見るからにお人好しだから、どうせいつものことだろう。知らないけどわかる。そういうことだ。
カン カン カン カンッ
私の足音が鳴り響く。
途中で他のフロアからエレベーターに乗ろうかと思ったが、あの距離だ。時間差によってエレベーター内で鉢合わせ、密室空間で逃げ場なし、なんてことになったら終わりだ。完全におしまいだ。あの二人のタイミングは神がかっているからあり得る。
私にはあの二人を止められない。そして、お人好し占い師と私では、チャラピーの押しの強さに負けるのが目に見えている。
くっ…!筋肉ドクターが来るまで、持ちこたえられるか…!
カン カン カン カンッ
私は酸欠で脳細胞が死滅し、ただただ無心で階段を登り続けていた。
つ、着いた…!8階!!
女子校育ちの文化部で、運動とは縁遠いところで生きてきた私の足を褒め称えたい。頑張った…!今日はもうよく頑張った!早くお家に帰ってお風呂に浸かって休みたい。
ガチャッと非常階段のドアを開けて、私は目を見開いた。
『本日作者急病のためサイン会は中止とさせていただきます』




