縁
女視点
「夫ですよ。元ね!」
「ええっ⁉︎」
私がチャラピーに絡まれていると占い師がちょうど良いタイミングで登場し、助けに入ってくれた。
ここで、筋肉ドクターが現れたらキュンとしていただろう。
だが、占い師の良いところは、タイミング、、だけだった。暑苦しい引き離し方、訳のわからない嘘、そしてペアルックのような格好。全てが恥ずかしく、私は羞恥心にまみれて死にそうだった。
ダメだ、ギャラリーが集まり始めている。私が何とかしなければ…。
「ああ~、前世の夫なんです!そして、未来の夫!今は彼氏です!!」
ちょっとイカれたヤバイ女感を演出しつつ、占い師と腕を組んだ。
その占い師はというと、優しい笑顔とも浮かれて何も見えていない顔ともとれる表情をチャラピーに向けている。何をぼうっとしてんの!早くチャラピーを追い返す追撃しなさいよ!タイミングしか取り柄ないのに!
イラっとして彼の腕をつねるような気持ちで強く握る。すると我に返ったように目つきが変わり、占い師は言った。
「君とはまた出会うだろうね。何度でも」
ゾワッと鳥肌が立って、私は思わず握っていた占い師の腕を離した。
えっ、なに、これはヤバイ人アピールの演出なの?それとも、何かに憑依しちゃってる??
ジリジリとちょっとずつ距離をとる。
チャラピーはというと、一瞬キョトンとした顔をしたが「お兄さんウケる~」と笑っている。
全然怯んでないじゃない!ああ、もう、助けて~!隠れ筋肉~!!
ブーブー ブーブー
ポケットが震えて手を突っ込んでスマホを確認すると、筋肉ドクターからの着信だった。目で占い師に合図して、人の少ない建物の陰で通話に出る。
「はい、もしもし。」
「…大丈夫ですか?」
「えっ、大丈夫じゃないです!なんでわかったんですか!?」
「はぁ、やっぱり…。なんか、嫌な予感がしまして…。今、院を出たところなので、なるべく早く合流します」
「ありがとうございます!」
筋肉ドクターに今の状況を説明すると、ドクターはまたしてもため息をついて、指示を出した。
「貴方はそのままカフェへ向かってください。占い師の彼には、絡んできてる輩を撒いてから合流するように伝えますので」
筋肉ドクターと話して私は何だか安心した気持ちになって、振り返ることなく早速カフェへと向かった。素早く人ごみに紛れて進まなければ、チャラピーに気付かれて追いかけられる可能性がある。
ドクターが占い師に伝えてくれるって言ってたし、後は占い師に任せよう!
それに…コラボカフェに着いたら先にふじねこグッズのパーカーを買って着替えて、占い師とのペアルックな格好から脱したい。そう考えていると自然と歩くスピードも、競歩のように上がった。
前を見据えた私は決して振り返ることはない。
そんな私の数10メートル後ろで、占い師とチャラピーの壮絶な競歩レースが開催されているとは知る由もなく。




