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前世の記憶

男視点

  俺には前世の記憶がある。

  村役場で働く勤勉な男だった。これといった趣味もなく、つまらない男だったかもしれない。けれど、誰よりも家族を愛し、幸せな男だった。

  前世を思い出してから俺は、前世の妻が作ってくれた赤出汁の味噌汁がどうしても飲みたくて料理を覚えたが、未だにあの味を再現できずにいる。

  そして今も探している。最期に「生まれ変わってもまた一緒になろう」と誓った妻を。

 占い師として、他人の前世を覗きながら。



「本日は何を占いましょう?」

「恋愛で」

「そうしましたら、まず前世を透視して貴女の本質を捉えます。それを踏まえてタロットで未来を視ていきま…」

 目を合わせてすぐにこの娘の前世がわかった。

 やはり俺たちは運命だったのだ。

 ようやく…会えた。


「あ、貴女の前世は…。貴女の前世は、家庭に入り、生涯夫を支え、子どもにも恵まれ、穏やかで、温かい…」

 つい、涙ぐんで力説する。

「温かい人生でした。夫は亭主関白なところもありましたが、家族を一番に考える人でした」

「そうなんです」

「えっ」

「あ、小さい時からいつも同じ夢を見るんですけど、もしかしたらそれが前世なのかな~って」

 ああ、やはり俺たちは運命だ。


「だから今世は」

「「探している」」

「さすが占い師さん!わかるんですね!!そうなんです」

 彼女は目を輝かせて話す。

「今世は絶対、情熱的な恋がしたいんです!だから探しているんです」

 俺は、今にも彼女にプロポーズしたい気持ちを抑えながら大きく頷いた。

「前世の夫と、正反対の人を!」

「えっ」


 呼吸が止まるほどのショックで視界がボヤけた。

 そんな俺をよそに彼女は続ける。

「観れば観る度げんなりするんですもん、その夢。ぜんぜんドキドキしなくて楽しくない!嫌なんです」

 彼女から次々出てくる言葉は本当に攻撃力が高かった。


 俺は気絶した。



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