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9話 初日終了

 案内された部屋は寝室だった。中央に大きな天蓋付きベッドがある。その脇に置かれた化粧台のようなものに大きな鏡がついていた。

 覗き込んだそれの中には、かなりの美形が驚きの表情で佇んでいた。

 一瞬では男性か女性か分からない程の中性的な顔立ち。驚きの表情で見開かれた切れ長の瞳は淡い水色。すっと通る鼻筋。ガバッと開いた口は薄く色付き、ちらりと見える歯並びはきっちりピッタリ整っている。流れるようなストレートヘアーで毛先は濃紺、胸元から顔にかけて瑠璃色へと変化し、顔から頭頂部までに若草色へと変化していた。

 ───美形って驚いたアホ面でも美しいんだな。


「どうしましたか?顎閉じなくなりました?バカみたいですよ?」

「いや、すごいナチュラルに貶してくるな!」


 近寄って鏡越しに目が合ったサランさんがおーい、というように手を振ってくる。そこにビシッと手の甲でツッコむ鏡の中の美形。


「まさか……これ私か!」


 洞窟で見た時はなんとなく整っている顔立ちなのかな〜とは思ってたけど。


「ここまでとは…」

「髪や瞳の色は、その人の使用出来る魔法の属性によって変わるんです。ルーシュ様はこの家まで歩いて帰ってきたのですよね?街の方で人々の髪や瞳の色をご覧になった中には、ここまで鮮やかな方はいらっしゃらなかったかもしれません」


 サランさんは髪色に驚いている、と勘違いしたようで説明を続ける。


「例えば、水属性を使える方は青系統の色をしていることが多いですね。魔力量が少ない人はその色がくすんでいます」

「…ということは、私は水属性が使えるんですか?」

「いえ、ルーシュ様は……そうですね、ちょっとやってみた方が早いかもしれません。少し風を起こすことは出来ますか?」

「はい、やってみます」


 何度かやっているのでそろそろ感覚が掴めてきたようだ。意識すると屋内なのにどこからかふわりと風が吹いてきた。


「それを、そのまましばらく続けてみてください」


 しばらくそよそよと風を起こしてみる。こちらをじっと見つめるサランさん。なんか私の頭頂部を見てる…?


「……そろそろいいですかね。ではルーシュ様、鏡をもう一度ご覧下さい」


 そう促され、風を止めて鏡を覗く。


「なんか…色変わってません……?」


 鏡の中の美形こと私の髪が、毛先から青、黄緑のグラデーションになって、黄緑の幅が広がっていた。紺、青、黄緑のグラデーションだったはずだ。


「変わってますね。風属性はご覧の通り緑系統です。本来、髪や瞳には生まれ持った属性の色が反映され、生涯変化することはありません。しかしルーシュ様は珍しく使用魔法によって変化してしまう髪質です」

「あ、今風を出したから緑になったんですね」

「はい。そして、ルーシュ様は全属性の魔法を使えます」

「えっ、じゃあ頑張れば髪の毛虹色に出来るってことですか?」

「できますが、虹色にしたいんですか…?」

「興味本位です」

「良かったです。ちなみにルーシュ様は暇な時に虹色にして遊んでいましたよ」


 まじかよ



 ***



「───っと、そろそろ寝る時間ですよルーシュ様。外が暗くなってまいりました」


 窓の外を見ると、とっぷり暗くなっていた。そのまま寝室で魔法や、その他この世界について質問に質問を重ねていたらかなりの時間が過ぎていたようだ。


「こちらでご就寝なさってください。この部屋はルーシュ様の部屋ですので」

「分かりました」

「では、おやすみなさいませ」

「───っあの!最後に一つだけ聞いていいですか?」


 寝室のドアに手をかけたサランさんが振り返る。


「いいですよ。ですが、一つだけです。あとは寝てください。明日も聞きますから」

「ありがとうございます!」

「……かなり面倒なのでこのまま寝ていただいても構わないのですが」

「思っても口に出さないで下さいよ…」

「手短にどうぞ」

「あっ、あの…聞いていいのか分からなかったんですけど…その…サランさんは人間ではないですよね……?」

「そうですね」

「やっぱりそうで──」


 バタン

 ドアを閉められてしまった。いや、確かに一つだけって言われたけど。

 ベッド腰掛けると、今までの疲れが出たのか眠気が襲ってくる。こんなふかふかのベッドで寝ていいって言われてるんだから寝ちゃおう。うん。実は明日の朝、明晰夢だったと自分のベッドでスマホのアラームを止めることになるかもしれないし。

 モゾモゾと枕元へと進む。大きなベッドであるため端からそこそこの距離がある。


「これ…閉めるのかな……?」


 ベッドにかかる天蓋を閉める。ピッタリ閉めると中は程よい暗さになった。天蓋付きベッドとか奇跡の体験だ。仰向けになり、ふわふわ毛布をかけるともうダメだった。これは魔のベッドだ…。


 自然と瞼が閉じてゆく。


 これが夢だったらな─────


 ────ぐぅ。

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