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4話 ランニング

 意外と分岐の少ない道を全力で走る。

 かなりのスピードが出るこの体は、日頃から運動に慣れているようで息切れは起こらない。


 ドドドドドド!!


 こっちもスピードを出しているとはいえ、徐々に足音が近くなる。見ちゃダメだ、と思っていても見てしまう。


 チラッ

「ひいっ!すごい睨んでらっしゃるぅ!!!」


 明らかに敵意のある目を見てしまった。ヤバい。

 そうこうしているうちに、ついに突き当たりまで来てしまった。止まるに止まれない。くるりと後ろを見るとかなり近くまで来ている巨大トカゲ。


「えっえっ、どうしよどうしよ!!来てる!来てるよ!!コモドドラゴンが来てるよ!!!」


 ギャオオオオオ!!!!


 あっ……これデジャヴ…トラック……。思わずギュッと目を閉じる。

 ──いや、2度も轢かれてたまるか!こうなったら限界まで見尽くしてやる!!

 カッ!っと目を開くと同時に無意識に腰の剣の柄を強く握りしめる。



 そこからは一瞬だった。


 ぶつかる、と思ったところで体が勝手に動いた。

 巨大トカゲをいなすようにひらりと横へ移動し、壁を一、二歩つたって空中へ。突然の動きに対応出来ずそのまま突進するトカゲの上に来ると、全体重を乗せた一撃でその首を切り落とした。

 頭が取れても勢いはそのままで、壁に激突した巨大トカゲを後目に軽やかに着地。剣をヒュッとはらうと、トカゲの体液であろう緑色の液体が滑り落ちた。そのまま慣れた動作で腰の鞘へと納刀する。フッと浅く息を吐いて……


「──ッ!?はぁあああ!!?」


 頭の中が疑問符で埋まる。え?なにこれ??先程一緒にランニングしてたトカゲさんが?切れたものがこちらになります?いや料理番組か?違うそうじゃない!


「今切ったよね?!私切ったよね?!!」


 動揺のあまりトカゲの遺骸と自分の手を交互に見てオロオロする。よく見ると追いかけられていたため顔しか見えていなかったが、巨大トカゲのしっぽがなかった。しばらくするとその遺骸が地面に溶け込むようにじんわりと消えてしまった。


「ぁえ?消えた…?なんだこれ…」


 消えてしまった後に色々なものが落ちていた。


「あれか…ドロップしちゃったのか?倒しちゃったから…」


 恐る恐る近づいてひとつを手に取る。自分のオタク的思考からの状況把握能力結構すごいと思う。瓶の形をした、ちゃぷんと粘り気のある液体入り。


「うわぁこれ体液じゃん……」


 ドロップした物は持ち帰りたいな。ふっと思い出してショルダーバッグを見る。絶対このサイズのカバンに全部入らないよ。

 ひとまず、手に持った瓶をカバンに入れる。グイグイ押し込む気満々でぐっと力を入れていたが、意外にストンと収まる。


「こっ…これは!ドラえ〇ーん!!」


 他にも明らかにサイズアウトしている、紐でまとめられた生皮たぶんもカバンへすっぽり収まる。重さが変化した感覚もなく、カバンがパンパンになることも無い。すごいコレ。

 大興奮で次々とカバンに入れていく。楽しい!これ楽しいよ!!


 ***


 全部入れきってしまうとなんだか少し残念だった。来た道を見ると、走ってる時に振り落としてしまったのだろう、少し離れた場所に光る玉が落ちていた。歩いて拾いに行くと、落ちていた場所から道が続いていて小さく光が見えた。


「出口だ!!」


 ダッと走り出す。やったーこれで洞窟から出れるぞー。未だに状況はよく読めてないけど、いつまでもここに居るわけにはいかない。

 しばらく走ると徐々に光が大きくなる。どうやら外は夜では無いようだ。


「あと少し…!」


 なんとなく小走りになってしまう。タタタッっと走ってたどり着き、急に開けた視界。そこに広がるのは──


 ──なんというか……結構普通に道があった。

 洞窟の出口周辺は確かに林っぽいというか森未満という中に、少なからず通る人か獣がいるのだろう、草の生えていない細い獣道が続いていた。が。その道の続きであろう、少し離れた場所にちゃんとした道があり、舗装はされていないがそれなりの幅があった。


 いや、まぁよかったよ?こっからジャングルーとか火山ーとか始まったらたまったもんじゃないけどね?でも道があるとなんで自分ここにいるんだろって思っちゃうよね?


 ひとまずてくてくと道の上まで行く。あー、これぐらいならママチャリでア゛ア゛ア゛ア゛ア゛って言いながら通れるな。

 それにしてもこの辺りに生えている植物は見た事ないな。あそこの木になってる実なんてすごいぞ。どピンクに黄色のドットって。見た目だけでお腹壊しそう。


遠くの方へ目を凝らすと門と低めの外壁のようなものが見えた。その向こうに屋根のようなものが連なっているのも見える。少ないが、ちらほら人のようなものも。人が居るのなら話したい。足取り軽やかにその門へと向かう。


***


近づくとやはり人がいた。3人。男性。門のそばで立っている人はやはり門番だろう。その他に大きめの荷物を背負った2人組。一言二言話すと2人組は門の中へ入っていった。


これはもしかして入国審査のようなものなのかもしれない。ヤバい。今の人達の会話聞いときゃ良かった。仕方ない、ここは次の人が来るのを待って……


「おお!ルーシュじゃねぇーか!!」

「ふぁいっ!」


待てなかったかー。門番さん(仮)に朗らかに声をかけられてしまった。咄嗟に返事したけどルーシュって誰だ…?そういやカバンの中にそんな事が書いたカードが入っていたような。


「今回は随分遅かったな!どうした、そんなに手強かったのか?大変だったなー!」


そう言って駆け寄ってきてバシバシ背中を叩かれた。えちょ、いたっ。これ話合わせた方いいのかな。


「そう、なん、です「ふははは!!どうせまた冒険者登録証もどっかに落としてきたんだろー?!!」


いや、いてーよ!途切れ途切れだよ!てか多分この人の聞いてねぇよ!!めちゃでかい笑い声被せてきてるし!

あ、そういや冒険者登録証か!あのカード。


「あり、ます「ふはははは!!」


…聞いてねぇな。背中を叩かれながらそそくさとカバンから冒険者登録証であろうカードを出す。


「ありますよ!!!」


張り合うくらいの大声とともに差し出すと、何がそんなに面白いのか笑いっぱなしだった門番さん(仮)の表情が驚きに変わる。

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