可愛い男装護衛が異世界の旅人で忍術を教えてくれるし旨い飯も食わせてくれるから毎日が楽しい【スピンオフ】
異世界転移した超能力者が王子のニンジャとなって戦い、たまに夜中耳に思いの丈を囁くが姿は見せない!だってニンジャだからhttps://ncode.syosetu.com/n5665gg/のスピンオフ。
王子視点。 @短編その9
何かな?この小動物的な娘は・・・
「今日から殿下の護衛になる『なすか』です。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた娘は男の格好をしている。が。
どうみても女だろう?
だが周りはみんな男と信じて疑わない。
なぜだ?私が間違っているのか?
なすかと名乗ったこの・・・娘、だよな?何故みんな男と思ってるんだ?
近衛騎士団長でエルフのタリアテッレが言うには、城内の求人で『護衛』を募集したところ、なすかがやって来たと。面接が済んだところで実技試験・・騎士と戦う事となって、近衛騎士でも荒くれ者のシドニィと戦ったのだが、驚いたことになすかは大層強かったそうで、大男のシドニィをまずぶん投げて、空中でキャッチして『@@@@@@@@ーー!!』、なんか分からない技名?を叫んで地面に叩き込んだそうだ。後でナスカに聞いたら『プロレスの技掛けたった』・・・プロレスってなんだ?
まあ、こんな男前な技を披露したので、女と思われないそうだ。
その技、この前侵入したコソ泥に、私の前で披露してくれたので、ああ。確かにこれ見たら、男と思われても仕方が無いかな、納得した。
だがなすかは女だ。
で、彼女はよく分からないクテクテな服を着込んでいる。忍び装束と言うらしい。手作りだそうだ。裁縫は下手だな。これがまた、不細工な服で・・なすかはかなり可愛い部類の容姿なのに、なんで自分から泥に突っ込むようなことをするんだ?まあ面白いからいいが。
私の護衛を始めて暫くした頃、不思議な現象が起こる。
夜中に女の声で耳元に・・
「王子様、好き。(きゃー言っちゃったー!)大好き。(うふふ)」
「ん、はっ!!」
さっと起きる。
部屋をささっと確認するが、誰もいない。
また籠絡狙いの美人局か?
臣下・・と言っていいのだろうか?こんなことを画策するような奴・・
そいつらの手による『王妃候補』が、時々進入してくる。
なすかが警護になったきっかけは、前の警護が金で買収され、女を引き入れたからだ。
夢かな?
夢なら私はおかしくなっているのかもしれない。こんな妄想する程、女に飢えているのか?
いや、性欲など最近ちっともわかない。
この悶々とした現象は、数ヶ月後判明した。
なすかがベッド下で護衛していたのだ。ベッド下など、普通確認などせん。
たまたま持っていたペンが、ベッド下に転がって・・・なすかを発見した。
「あ。見つかっちゃった」
二ヘラっと笑う。小動物か?
つまり、あの『愛の囁き』の犯人は・・・お前か。
「見張るならここの方が良いだろう」
布団を捲って、手招きで『来い来い』すると、遠慮せずに布団に潜ってくる。
照れもしないか。
「囁いて良いぞ」
「?」
「好き、って」
「!!」
ははは。顔が真っ赤だ。『愛の囁き』、やはり犯人はお前か。
「布団に潜るのは良いのに、囁くのに照れるとは」
本当、なんて可愛いのだ、なすかは。私の抱き枕、決定だ。ああ、暖かい・・
近衛騎士団長のタリアテッレも面白いのか、なすかにしょっちゅう絡んでいる。
というか、仲良しだ。・・何だかいらっとする。
で、この間はお菓子を作って貰ったとパクパク食べている。主人である私の前で。
普通、主人から先に寄越すものだろう?
なすかに寄越せと手を出したら、彼女は自分の手を乗せて『お手』。
可愛いが馬鹿だ。
「すみません、カップケーキクッキーカップはもう無いんですギャアアアア」
『お手』で乗っかった侭の手を握り潰してやった。
次からはちゃんと作って持って来たが、
「お持ちいたしやしたー」
体をフルフル震わせている。もう攻撃しないから。忘れなければ、な。
こんな可愛いなすかだが、仕事はなかなか優秀。
どこぞの暗部も忍術でニンニーン!と倒してしまう。
魔法なら『解術』を唱えると効果が消えるが、忍術では魔法の術が効かない。
だから魔法を無視して、ガンガン突っ込んで行く。
お前可愛いのだから、無茶をするな。背も147センチとチビなのだから。
護衛の1日は早い。
私の寝床から這い出して、身支度を済ませる。
まず朝起きたら厨房に行き、私の朝食を用意する。
そして私を起こしに来て、朝食を一緒に取る。
一緒に執務室に行き、私を送ると近衛騎士団の練習場に向かう。
そこでタリアテッレと忍術や剣術、魔法などを訓練。
昼食の用意が出来たら私を呼びにくる。
ダイニングで一緒に食事を取る。食事は旨いがお茶は下手くそだ。
午後は会議などで多くの臣下が集まるので、私の護衛を少し離れた所に待機させる。
盗聴する間者を、見つけてはひっ捕らえー、見つけてはひっ捕らえーをする。有能。
夕食の用意が済むと、呼びに来るのでダイニングに再び。
二人で食べながら『明日はシチューの予定ですよ〜』とか言ってくる。
「私は魚がいい」
「もー。仕方が無いですねぇ」
明日は魚のブイヤベースに変更。有能過ぎ。
そして風呂に入り、寝室へ行くとなすかは護衛をしている・・・ベッドの下で。
「ほらこっちにおいで」
ひょいと傍に手を差し入れて持ち上げる。猫を持ち上げるような感じ。
「にゃ」
「もう体が冷えてる。いいから先に布団に潜って居なさい」
「私、護衛ですよ?」
「抱き枕だな。とっとと寝ろ」
「にゅ・・おやすみなさい殿下」
これがなすかの1日である。
ば可愛いなすかは、私に未だに女であるとバレていないと思っている。
そんな訳ないだろうが。
抱き枕と称して抱き締めるのだが、柔らかくて優しい匂いがして、癒される。
胸もなかなか。好みの大きさだ。
私のなすか。
可愛いニンジャ。
彼女を手に入れたい。
彼女と出会ってもうすぐ2年。
いよいよ私の王位継承式典が近付いて、それと共にお妃選びも始まっている。
利がなければ殺そうと刺客送ってくる臣下は、結婚相手の娘も送ってくる。不愉快だ。
なすかは違う。私の護衛、守りのニンジャ。そして厨房にも立つ。
『殿下にあったかいご飯を作って差し上げますよ〜』と、ニコニコ作る。
毒味され、先に食い散らかされ、冷めた食事をたった一人で食べる毎日だった。
今は私の食卓は賑やかで華やかになった。なすかが一緒に食べてくれるからだ。
もうあんな冷たい、冷めた料理など食べたくない。
何もかもが暖かいなすかと寝床でゴロゴロしたい。
心もあったかいなすかが傍にいて欲しい。
彼女を側室扱いになんかしたくない、私は妻は一人でいい。
そんな毎日で気づいたのだが・・・
聴き慣れない言葉、風習、方法。そして不思議な技。
もしやと思い、手に取ったのは『異世界の旅人』と言う記録書。
異世界転移でやって来た人々の記録だ。
この世界に自分の意思、他意はともかくやって来た人の記録。
そこに、なすかがいつも言っていた言葉が載っていた。
『忍者』。
なすかは異世界の旅人だった!
私は驚喜した。
異世界の旅人は、この世界にやって来たお客様。地位も王族と同じ扱いだ。
なすかを娶る事が出来る。
この記録書は、王位継承式典の3日前に発見した。
実はこっそりなすかの白いドレスを縫って貰っていて、半年前には出来上がっていた。
白い生地は女性にとって神聖なもので、婚約式や結婚式にしか使われない。
侍女長に化粧も用意させてある。
侍女や女中となすかは仲が良い。内緒の用意を皆が理解してくれた。
そして当日。
ナスカに私は告げた。
「今日、私の婚約者も国民にお披露目する」
そうしたら、なすかが急に泣き出したのだ。
「う、うぇ・・・・っ、殿下、いや・・アシュレイ陛下!おめでとうございます!」
大粒の涙が、今にも落ちそうだ。
「・・泣いているのか?」
「心の汗、いいえ!嬉し泣きです!!お幸せに!!」
くしゃくしゃの顔を、無理やり笑顔にしようとしている。
こいつ、勘違しているな?
「なすか」
「ゔいっ」
またそう言う声を出す・・笑ってしまいそうになる。
「顔不細工だぞ」
「殿下に比べたら、国民の殆どが不細工ですっ!!」
ははは、本当に面白いなあ、なすかは。
「・・・お前・・異世界の人間だろう」
「え」
おやおや、目が飛び出そうになっているぞ?
「ここ1年、お前に関して調べていた」
「え、と・・」
「異世界人の記録がいくつか残っていて、お前が言ってたニンジャの事もあった」
「えーーーー!!始祖じゃ無かったーーー!!」
そこか?突っ込むところは。
「女だと、クノイチだそうだな」
「どひーー!そこまでバレてたかーーー!!」
何を言っているんだか。でも顔がグシャグシャなのは確かだ。
まあいいタイミングとも言えるか。
「とにかく顔がグシャグシャだ。顔を直して着替えてこい」
「そっすね・・・失礼します・・」
王子に『そっすね』かよ。本当、面白い。
「なすか。もう少し上品にしろ。各国の貴賓も来ているのだ」
「うぃー・・はい」
おお。今度はちゃんと直したな。
更衣室には女中や侍女達を待たせている。
せいぜい綺麗になって来い。
ドレスは着るのに時間がかかる。ようやく着替えたのだろう、ドアが開く。
「着替えたか」
なすかがムゥ〜と拗ねている。
ドレスを用意していたから驚いただろうな。
「私が女って、いつ気が付きましたか」
「最初から」
「ゔぁ」
いやわかるだろう?騎士団の奴らは女耐性が無いのかボンクラなのか。
だから既婚者が少ないのか?
「何か意図があるのかと思って放置していた。女だから布団に招いた。男なんかにするか」
「ソウデスネー」
少し間があったぞ。お前まさか、私が男色家とでも思っていたのか?
「嬉々として料理もするし。どう見たってお前は女にしか見えなかったぞ」
なすかはまだ不満気だ。ドレスを指でちょっと摘んで文句を言う。
「このドレス、白ですよ?婚約式や、結婚式にしか着てはいけない色ですよ」
「それで合ってる」
どうやら分かったようだ。吃驚している。
「偽装婚約ですかね?!」
「馬鹿だろお前は」
おい。
本当にば可愛いな、なすかは。
私は腕を少し曲げて、くい、と手を入れろと催促すると、なすかは恐る恐る手をのせる。
もう少し自覚してもらおうか。
「王族は基本王族か高位貴族としか婚姻はしない」
「デスヨネー」
「特例で、異世界の旅人とは、出来る」
「ひょ!」
またそんな声を!
「・・・くっくっ。お前、その擬音やめろよ。式典最中に笑ってしまう」
なすかが急に、真剣な顔で私を見つめる。
「本気ですか?殿下」
「本気だから、お前のことを調べた。本気だから寝床に入れた」
「ソデスカ・・・」
「ふふ。照れているのか。耳も真っ赤だ」
顔は化粧しているので顔の色は分からないが、耳と胸元が薄紅色に染まっている。
ああ、可愛い。ついに彼女を手に入れる事が出来た。
「さあ、皆が待っている。行くぞ」
「へいっ」
「だからな・・・やれやれ」
ふふ。ば可愛い彼女と共に、式典会場に向かう。
こうして私は手に入れた。
ニンジャでコックで抱き枕も兼ねた、可愛い王妃を。
ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。
どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。
pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。
https://www.pixiv.net/users/476191