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勇者を名乗る痛い子

月……か。

ソーニャの宇宙船の機能で調べた所、月の裏側に無数の宇宙船の反応があるらしい。

そこでオーガニック星人は人類の滅亡待ちをしている様だ。


「彼らは2年たつまでは地球には降りてこないでしょう」


つまり此方から月に行くしかない様だ。

しかし月の裏側で2年も生活できるのなら、そのままそこで永住すればいい物を。

本当に迷惑な話だ。


「頼む。この宇宙船で俺を月まで送ってくれ」


流石に勇者としての力があっても、単独で月に行くのは厳しい。

まあ大気圏突破ぐらいなら難しくないんだが、如何せん呼吸が出来ないのはきつい。

幾ら俺でも完全に息を止めて動けるのは数時間が限界だ。


万一何処かで息継ぎできなければ死ぬ事になる宇宙に、単独で向かう気には流石になれない。


「ごめんなさい。かなりの部分が壊れてしまっていて、この船はもう飛び上がれないんです」


無理か……

となると厄介だな。

まあ仕方ない。


「そっか……じゃあほかに何か他の手を考えないと駄目だな」


地球にだって宇宙に出る技術はある。

宇宙ロケットとを何とか奪って……ってむりかなぁ。

あんな物、到底一人では動かせない。


「ごめんなさい。力になれなくて……」


ソーニャは申し訳なさそうに顔を伏せる。

父親の故郷の宇宙人が引き起こしている事態だ。

直接彼女に関係はなくとも、責任を感じてしまっているのだろう。


「ああ、気にしなくていいさ。お兄さんこう見えてハチャメチャに強いから、自分で何とかして見せるさ」


親指を立てて最高の決め顔を見せる。

別に彼女を口説いている訳ではないが、ひょっとしたら惚れられてしまったかもしれないな。

我ながら罪深い男だ。


「そうなんですか?」


「ああ、俺はこう見えても勇者だからね」


「そ……そうなんですね……」


勇者と聞いた途端、彼女の視線が可哀そうな物を見る目に変わる。

まあ普通勇者だなんて名乗られたら、そういう反応になるのは分かる。


けど彼女だって宇宙人なわけで。

そっちも非現実的っぽい存在なのだから、勇者を否定しないで欲しいものだ。


「ひょっとして信じてない?」


「い、いえ。そんな事は……」


「じゃあお兄さんの力を見せてあげよう、ここだとあれだから上に戻ろうか」


そう言ってエレベーターに乗り込んだ。

俺に続いてソーニャが乗り込んでコンソールを弄る。

心なしかソーニャとの距離が遠い。


いや、心なしかではない。

確実に俺との距離を最初の時より多く通っている。

勇者発言は完全に彼女を引かせてしまったらしい。

最早彼女から見た俺は、頭の痛い変人としか映っていない様だ。


まあ見てろ。

その痛い子を見る目を、俺の超パワーでグルンと一回転させてやるぜ!

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