タイムリミット
「どうすれば雌ゾンビに変えられた人間は元に戻るんだ?」
俺の質問にソーニャは俯いて考え込む。
あれ?
ひょっとして元に戻す方法がないなって言わないよな?
「人間には……戻す手立てはあります。ですが、一度雌化した人を元の性別に戻すのは無理です」
「え!?」
性別を戻す事が無理って。
それってゾンビ化はとけても世界中女しかいない状態って事?
……マジかよ!?
対策しても親父は女のままって事か!?
「ですからゾンビ化を治療しても、遅かれ早かれ人類は滅亡する事に成ります。唯一人類を生存させる方法があるとすれば……」
「すれば?」
「たかしさんが最低千人くらい子供を残せば、辛うじて種を存続させる事が出来るかもしれせん」
「千人!? 」
いや、多い多い多い。
確かに世界にもし男が俺しか残って居ないなら、俺が子孫を残さないと人類が滅ぶというのは分かる。
後続がいなけりゃ続くわけがないのだから。
にしても千人は多くねぇか?
「千人は普通に必要です」
彼女が俺の心を読んだかの様に言葉を続ける。
まあ顔にもろに出てただろうし、手に取るようにわかるか。
「ある程度の数をばら撒かないと。種の多様性の喪失。それに今の文明を最低限維持する事も難しくなるはずです。出来れば1万人……いえ、可能ならば10万人は欲しい所です」
千でもどうかと思うのに、10万とか絶対無理だぞ。
チンコが擦り切れるわ。
そもそもそんな超ヤリチンみたいな生き方をする気は更々無い。
さらば人類!
って、そんな簡単には割り切れねぇよなぁ……
取り敢えずゾンビ化は解除して置こう。
見つかる度に対処しないと駄目なのも手間だし。
「どうやったら治せるか教えてくれないか?」
「この星へとやって来ているオーガニック星人の宇宙船に、ワクチンがあると思うんです。それを奪って来ていただければ、この船で増殖して地球中にばら撒きます」
奪って来る……か。
この船にワクチンがあれば手っ取り早かったのだろうが、やはり世の中そう甘くはない様だ。
しかし相手は宇宙人か。
きっととんでもない超技術の兵器を相手にする事に成るだろう。
俺が勇者だとはいえ、これは骨が折れそうだ。
しかし宇宙を渡れるだけの技術がありながら、なんで雌ゾンビウィルスなんて物を使ったんだろうか。
その気になればそんなまどろっこしい真似をしなくても人類を簡単に滅ぼせそうな気がするんだが。
「所で何でオーガニック星人はウィルス何かを?」
「オーガニック星人は殺戮を嫌うらしいそうです。だからウィルスで短命かつ子孫の残せない状態にして、相手が滅びるのを待ってからこの星に移り住む気何だと思います。それにウィルスはターゲットをコントロールできるように変化させられますから、不必要な自然を破壊を避ける意味もあるかと」
成程、自然破壊を避けて人類を滅ぼすというなら理にかなってるな。
まあでも短命にして死ぬのを待つって、殺したも同然な気がするんだが。
宇宙人的の判定がよく分からん。
ん?待てよ?
短命?
「あの……短命って?」
「雌ゾンビの寿命は約2年程度らしいです」
「2年!?」
え?ちょっと待って、2年しか持たないのか!?
いや、ゾンビだから腐ってるし2年持てば上等とも……いやいやいや、そもそも腐ってないし……
ああ、もう!落ち着け俺!
俺は気持ちを落ち着かせるように大きく深呼吸する。
とにかく今は落ち着いて。
そして確かめなければならない。
いつウィルスがばら撒かれたかを。
タイミング次第でもう殆ど時間が無いというのもあり得る。
「ウィルスって……いつばら撒かれたか分かりますか?」
「役1年と10か月前です」
あと2か月しか残ってねぇ!?
こりゃさっさと動かないと、その後の対処――子作りは兎も角――冗談抜きで人類が滅んでしまう。
俺は早速彼女にオーガニック星人の居場所を尋ねた。