雌ゾンビウィルス
「宇宙人の君は、今の日本の状態と関係があるのか?」
日本人の雌ゾンビ化。
それに目の前の宇宙人の少女。
これら2つの要因に関わりは無いのかもしれない。
しかしこの短い期間に異常な物を立て続けに見せられては、疑うなという方が無理な話。
「あると言えばありますし。無いと言えば無いと言えます」
どういう事だろうか?
まあ何らかの関係があるのは間違いない無いだろう。
本当に全く関係が無いのなら、はっきりとそう答えるはずだし。
「詳しく教えてれないか?」
「はい。私の父はオーガニックという星の出身でした。この地球に来たのは200年ほど前の話になります」
「200年!?」
彼女は14歳だ。
魔法で確認したから間違いない。
つまり少なく見積もっても彼女の父親は186年は生きている事に成る。
「私の体に半分流れるオーガニック星人の医療技術は優秀で、長い人なら延命処置で500年以上生きるらしいです」
「そ、そうなんだ」
……まあ宇宙人なら在り得るか。
一瞬驚いてしまったが、相手は人間ではなく宇宙人。
宇宙を渡って来るほどの技術力があるのだから、十分あり得る話だ。
「父から聞いた話だと、オーガニック星は200年前の時点で寿命が近かったそうです。それに気づいた父は先んじて単独で星を脱出し、この地球にやって来ました」
「単独で?」
俺は眉間に皺をよせ、思わず聞き返す。
普通宇宙を渡って新天地を求めるのに単独で飛び出すか?
それが引っ掛かったからだ。
「はい、単独です。父はボッチで友達がいなかったそうですから」
「あ、ああ。そうなんだ……」
ソーニャは気まずそうに顔を伏せる。
どうやら余計な事を聞いてしまった様だ。
まあボッチなら仕方ないだろう。
「それと、父が出した星が滅びるという警告を無視されたというのもあり。父は失意の中、単独でこの星へとやって来たそうです」
「そ、そうなんだ……」
友達はいないわ話は聞いて貰えないわで、踏んだり蹴ったりだな。
彼女のお父さんは。
「父は一人この地で骨を埋める積もりだったのですが。ある日この島に流れ着いた母と出会い、私が生まれたそうです……」
「成程」
父親と母親の事については触れない事にしておく。
こんな孤島に彼女が一人で暮らしている時点で何となく察せられる。
態々辛い事を話させる必要も無いだろう。
「兎に角。君が宇宙人である事と、今の日本の状況に繋がりがあると考えていいんだね?」
これで宇宙人である事が全く関係なかったら、何のために今の話したの?状態だ。
流石にそれは無いだろう。
「オーガニック星は寿命が近かったと言いましたよね。星が寿命で消滅したオーガニック星人は宇宙に飛び出しました。新天地を求めて。そして宇宙を彷徨い、ついに見つけたんです。父と同じように楽園を……そう……この地球という名の自然あふれる星を!!」
急に声がでかくなって思わずビックリ。
見ると何故かソーニャはドヤ顔で此方を見つめている。
いったい何の意図が?
ひょっとしていたずらか?
子供の……いや、宇宙人の考える事はよく分からん。
「えーっと、つまり。今の状態は宇宙人による攻撃だと思っていいのかな?」
「ええ、雌ゾンビウィルスが地球中にばら撒かれた結果です」
雌ゾンビウィルス。
そのまんまの名前だな。
まあ、これで原因ははっきりした。
毒を作る際は解毒薬も一緒に用意するのが常道。
きっと対処法もあるに違いない。
俺はその方法をソーニャに尋ねる。