宇宙船
「いきなり言われても信じられないと思います。ちょっとこっちへ来てもらえますか?」
彼女は席から立ち上がり、俺を家の奥へと案内する。
俺は黙ってそれについて行く。
「これは?」
キッチンの奥にそれはあった。
銀色の筒状のそれには扉が付いており。
彼女がボタンを押して扉を開けると、中は人間二人ぐらいなら簡単に入れるスペースになっていた。
「エレベーターです」
「エレベーター!?」
正直言葉の意味が理解できない。
いや、勿論エレベーターの事は知っている。
問題は平屋レンガ作りのこの家にエレベーターという、明らかに不要な物がある事実にだ。
それに乗って何階に上がるというのか?
やはり彼女の言葉は只の冗談だったのだろう。
ちょっとした乙女ジョークという奴に違いない。
だが彼女は真剣な顔でその筒に入り込み、俺に「乗ってください」と言って来る。
彼女はいつまで続けるつもりだろうか?
まあこの際最後まで付き合ってあげようと思い、俺も中に入り込む。
ふわりと甘い香りが俺の鼻腔を擽った。
やばい。
超善い匂いがする。
狭い空間に美少女と二人。
少し……いや、かなりムズムズソワソワする。
落ち着け、俺。
相手はまだ子供だぞ。
心を落ち着けようと頭の中で般若心境を唱えようとすると、彼女が内部のパネルを操作して扉を閉じる。そして突如体を包む浮遊感。俺は予期せぬ突然の事に軽くパニ来る。
「なんだなんだ!?」
「安心してください。危険はありませんから」
落ち着き払った彼女を見て、なんだか無性に恥ずかしくなってしまう。
俺は照れ隠しに小さく咳払いをして誤魔化す。
しかしこれは一体何なのだろうか?
冗談の為にしては大仕掛け過ぎる。
「着きました」
彼女がそう告げると扉が開き。
そこから飛び込んできた光景に俺は絶句する。
辺りには見た事も無い計器類やモニターが並び。
まるでここは……そう、まるで映画で見た宇宙船の様な光景が俺の眼前に広がっていた。
「信じてもらえましたか?」
「あ、ああ」
映画のセット。
此処が都会なら間違いなくそう断じていただろう。
精巧につくられた偽物に違いないと。
だがここは違う。
彼女一人が暮らす小さな小島。
その地下?にこんな映画のセットなどある筈がない。
つまりこれは――本物だという事だ。
「改めて自己紹介しますね。私はソーニャ・グレイ。宇宙人の父と地球人の母との間に生まれたハーフです」
彼女のステータスを覗いた時、種族がハーフと表示されていた。
それはこの事だったのかと、俺は思わず納得してしまった。




