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天使?いいえ宇宙人です

崖側に広がる森を抜け、開けた場所に出る。

生命反応はこの先だ。


少し先に柵が広範囲に建てられている。

生命反応迄はまだ少し距離はあったが、見晴らしが良かったので、念の為超速匍匐前進で音も無く近づき柵の内側の様子を伺った。


「畑か……」


柵の内側には畑が広がっており、植物が植えられている。

目を凝らしてみると、さらに奥には動物とそれを囲う柵の影が見えた。

恐らく牛だろう。


「自給自足しているみたいだな」


まあ女ゾンビで無いのなら、文明に接触していない訳だから。

間違いなくそうだろう。

もし外部と接触していれば、この島の住人も雌ゾンビになっている筈。


更に遠くまで見通すために、魔法を掛けて視界を伸ば(ズーム)した。

遠くにレンガ造りの家が見える。

子供の生命反応があるのはあの辺りだ。

つまり子供は家の中にいるという事になる。


俺は念の為辺りを見渡し、人影が無い事を確認して起き上がる。

柵を超え、その家へと音をたてない様素早く駆け寄った。

結構距離はあったが、今の俺のスピードなら一瞬だ。


レンガの壁に身を寄せ、聞き耳を立てると中から鼻歌が聞こえて来た。

歌は聞いた事の無いメロディーだが、声質から中の子供は女の子だと俺は断定する。

これが男の子だったら生存者で確定なのだろうが、女の子なのでまだ油断はできない。

俺は窓の淵からそーっと中を覗き込む。


中にいたのは妖精だった。

輝く様なプラチナブロンドに、透き通るような白い肌の少女が椅子に座っている。

目鼻立ちは愛らしく整っており、今まで見た人生の中でぶっちぎり第一位の美少女だ。

年齢は13-4位といった所だろう。


俺はそっと彼女に向かって手を翳し、ステータスチェックの魔法を発動させる。

名前はソーニャ・グレイ。

年齢は14歳で、種族は――ハーフ。


ハーフ?

日本と外国のハーフって事か?

でもそれって種族なのだろうか?


不思議に思い首を捻って考え込んでいると、鼻歌が急に止まり。

「そこに居るのは誰?」と、問う声が聞こえて来た。

どうやらバレてしまった様だ。

気配は完全に殺していた積もりなのだが、どうやら中の少女は相当勘が鋭いらしい。


俺は意を決し、直ぐ傍のドアをノックする。

種族ハーフと言うのがよく分からんが、兎に角雌ゾンビでは無いのだ。

接触して話を聞いておいても損は無いだろう。

決して超絶美少女とお話がしたいからという不埒な理由ではない事は、覚えておいてもらいたい。


「どうぞ」と返事が来たのでドアノブを捻って扉を開ける。

扉を開くと、少女――ソーニャ・グレイが椅子から立ち上がり微笑んでいた。

うん、超かわいい。


「初めまして、俺は高田勇人」


「あたしはソーニャ。ソーニャ・グレイです。勇人さん、ようこそわが家へ。どうぞお上がりください」


彼女は俺を見ても特に驚いた様子はなかった。

俺は言われる儘に彼女の家へと上がり。

勧められて椅子に座る。


「今紅茶を出しますから、ちょっと待っててくださいね」そう言うと彼女はキッチンからポットとティーカップを持ってきて。お茶を注いでくれる。

とても良い香りだ。

彼女は自分のカップにも注いだ後席に着き、どうぞと勧めてくる。


一瞬どうしようかとも躊躇ったが、口にしない訳にもいかないのでばれない様手早く魔法で検査してみた。

どうやら毒物の混入は無さそうだ。

身の安全の為とはいえ、少女を疑った自分が恥ずかしい。

善意で淹れてくれた彼女に心の中で謝りながら、俺は紅茶を一口頂いた。


「お、凄く美味しいね。これ」


悪食ではないけど、俺は紅茶とかそういった細やかな味は分からない方だ。

だが今口にした物は冗談抜きで美味かった。

香りが口の中を抜けるというかなんというか、とにかくすごく美味い。


「ありがとうございます」


彼女も紅茶に口を吐け、にっこりと笑う。

その姿は正に天使と言っていい。


それだけに余計疑念がむくむくと湧き上がって来る。

何故彼女はこんな場所に一人で暮らしているのかと?


見た所、室内は綺麗に整理されている。

頭上には蛍光灯が掛けられ。

キッチンには通常とは違って少し不思議な質感をしているが、レンジやガスコンロが設置してあるのが見える。

彼女の身に着けている物も、質の良さそうなシャツとブラウスだ。

彼女の生活周りやその井出達。

どう見ても文明から離れて生活している者の様子ではない。


電気やガスは何処からやって来ているのか?

身に着けている衣類はどうやって入手しているのか?


確かに畑や牛などがいる為最低限の自給自足は行われてはいるのだろう。

だが自給自足ではどうにもならない様な物が、ここには多すぎる。

どう考えても文明と接点が無ければこんな生活は成り立たない筈だ。

だが彼女は雌ゾンビ化していない。

一体なぜ?


「何故私がこんな所で生活しているのか、気になるみたいですね?」


優美にお茶を楽しんでいた彼女が口を開く。

こっそり視線を這わせ、辺りを観察しているのがばれてしまっていた様だ。

やはりこの子は勘が鋭い。


「ええ、まあ……」


「端的に申しますと……わたしは宇宙人だからです」


「へ!?」


宇宙人。

彼女は自分が地球外生命だと名乗ると、にっこり微笑んだ。

子供の特有の冗談か?

それとも――

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