発見
私は魚。
そう、この大海原を自由に飛び回る魚。
……
…………
………………あんまりおもしろくないな。
「お!」
暇だったので魚ごっこをしていたのだが、大して楽しくも無かったので魚ごっこを止め水面に顔を出す。
すると地平の彼方に小さな影が見えた。
早速望遠の魔法で確認すると、それは小さな島だった。
あれから3か月。
下水を伝って川に出て、そのまま海に辿り着き。
そこからこの三か月間ひたすら日本近海の離島を求めて泳ぎ回っていたのだが、未だ男の生き残りを見つける事は出来ていない。
どこもかしこも雌ゾンビだらけ。
やはり日本はもう駄目なのかもしれない。
そろそろ見切りを付けようと思っていたので、今目に付いた島を探索し。
それで駄目なら海外に向かおうと思う。
俺は息を大きく吸い込み、水中深く潜水する。
まあ水中でも呼吸できるように魔法を掛けているので、息を吸い込む必要などなかったのだが、気分的に何となくやってみた。
この方が泳いでる感があるし。
島は見る間に近づいて来る。
勇者アイは水中すらも容易く見通すため、位置関係の把握は容易だ。
島に着いた俺はあえて絶壁になっている部分に泳いで回り込み、そこを軽やかに登って上陸する。
浜から上陸すると、雌共が居た場合見つかって面倒な事に成ってしまうからだ。
辺りに人影が無いのを確認してから直ぐ傍の林に滑り込み。
茂みに姿を隠しつつ、魔法で島全体をチェックする。
探るのは生命反応と島の地形だ。
島のサイズは半径1キロ程度の円形に近い形の小島。
生命反応は大型が数頭と、無数の数えきれない数の小型の生命。
小型には用がないので、大型だけに絞って生命体の輪郭をチェックする。
身長130センチ。
人型……
「よっしゃ!!」
サイズ的に間違いなく子供だ。
思わず声に出してガッツポーズする。
俺はこの3か月間、只泳いで日本近海を周っていただけでは無い。
食料調達の為に上陸――コンビニなどからばれないようにかっぱらっていた――際に、探索系の魔法で情報を出来る限り収集していたのだ。
数十万単位で調べた結果、その中に男は元より、老人や子供はおらず。
全て20代前後の女性だった。
その事から、俺は雌ゾンビは全て若い女性だと判断している。
つまりこの孤島に居る子供は雌ゾンビではない可能性が高いという事だ。
ついに第一生存者発見だ。
これが喜ばずにいられようか。
まあ何で小さな子供がこんな所で一人っきりなのかは少し気になるが、考えても答えが出る訳で無し。
本人に会って直接聞いて見ればいいだろう。
俺は茂みから出て、第一生存者(仮)の元へと向かう。